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シアトリカル―素人(?)劇団  作者: 琅來
シンデレラ~時と宇宙を越えてver.~
4/13

~魔法使いとの出会い~

「え~っと? ああ、私も舞踏会に行きたいわ……しくしくしく」


ユリア「見事なまでの棒読みね……。え~、マレイ達に置き去りにされた由梨亜は、ずっと泣いていました」


由梨亜「ああ、今からでも行こうかしら? あっ! 大事なことを忘れていたわ。私、舞踏会に行けるようなドレスも靴も、馬車も従者も、何一つ持っていないわ。持っているのは、ただの木靴と、つぎはぎだらけでぼろぼろの服だけ……」


ユリア「……今度は、見事なまでの情熱の入れようだわ……」


由梨亜「……だったらどうしろっていうのよ……。もう、この先に進みたくない……」


ユリア「ま、まあ……。その点は、同情しますけど……。進めないと、後ろからの殺気が凄いんですよね」


由梨亜「チッ……。いいわ、進めて」


ユリア「はい、先王陛下。――由梨亜は、屋根裏にある自分の部屋で、ずっと泣きじゃくっていました。その時です。知らない声が聞こえました」


「もし……。そこの方? 何故、御泣きになられておられるのです?」


由梨亜「え……誰?」


麻箕華「わたくしの名は、麻箕華。魔法使いですわ」


由梨亜「まあ、魔法使いなの? 私、魔法使いって、男の人かお婆ちゃんかと思っていたわ。それが、私よりもずっと若い女の子なんて!」


麻箕華「え、ええ……。いくらあと少しで十七歳になると言いましても、国で重要な役職に――大臣職に就いていると言いましても、わたくしはまだ十六歳ですし……。わたくしも、少し配役が可笑しいとは思ったのですが、籤ですから仕方のないことなのではないでしょうか? 御異母姉様おねえさま


由梨亜「麻箕華もと同じか……。富実樹御異母姉様じゃなくって、由梨亜って名前で呼ばなきゃ変でしょう?」


麻箕華「あっ……。そうでしたわね。これはお芝居でしたもの。わたくしとしたことが……。おうだいじん失格ですわ」


由梨亜「……それとこれとは関係ないと思うけど……。でも、麻箕華は芝居っ気あるのね」


麻箕華「勿論、富実樹御異母姉様――ではなく、由梨亜さんと長く話せるのであれば、これくらいのことならばいくらでもやりますわ。本当に……何年振りでしょうね。こうして直接御目に掛かれるのは。作者さんに感謝致しますわ……」


由梨亜「……そう言えば、この流れの中で作者に心から感謝したのって、麻箕華だけじゃないかしら? 早理恵が前の後書き欄で、若干それっぽいことも言ってたけど……」


ユリア「……とにかく、話を続けませんか? 脱線が激し過ぎて、ちょっと……」


由梨亜「ああ、そうだったわね。……ん? 次、誰から?」


ユリア「……鴬大臣殿下からです」


麻箕華「ええ。分かりましたわ。――ほら、そんなに御泣きにならないで下さいな。由梨亜。折角の可愛らしい御顔が台無しですわ。ほら、これで涙を御拭き下さいな」


由梨亜「(……何だろう……。まもるとかさとるがこんな台詞を言ったり作ったりするとムカつくのに、麻箕華がにっこり笑って言うと、凄い安心するって言うか、落ち着くって言うか……。何、この差? 人徳の差かしら?)……まあ、魔法使いさん、ありがとうございます……。グス」


麻箕華「いいえ。これぐらいのことは、何でもありませんわ。それより、貴女はどうして泣いておられたのですか?」


由梨亜「あ、あの……舞踏会に、行きたかったんです」


麻箕華「舞踏会? 今日、御城でやっている?」


由梨亜「はい。でも、私……舞踏会に着て行けるようなドレスなんて、持っていないんです。靴も、今履いている木靴しかありませんし、足となる馬車も何も……。それに、招待状がなければ、お城には入れないでしょう? 招待状はお義母様かあさま達が持って行ってしまったから、それもなくて、お城には入れないんです」


麻箕華「まあ、それは大変でしたわね。それならば、わたくしも協力できそうですわ」


由梨亜「本当ですか?!」


麻箕華「ええ。そうですわね……。かぼちゃはありますか?」


由梨亜「か、かぼちゃ? はい、お台所に……」


麻箕華「あとは、そうですね……。鼠か何かを、二匹ほど知りませんか?」


由梨亜「えっと……飼ってる(?)鼠が、二匹います」


麻箕華「そうなのですか? では、その二匹の鼠を連れて、台所まで御越し下さいませんか?」


由梨亜「はい。分かりました」


ユリア「そうして、由梨亜はあいを連れて、屋根裏部屋から台所まで降りました。……あたしの出番がここまでないって、珍しいかも……」


藍南 「『珍しいかも』じゃなくって、本当に珍しいと思いますけど……。ここまでトントン拍子に話が進むのも」


由梨亜「あら、藍南。鼠語は?」


藍南 「~~~~~っっ! ヂュウっ!!」


由梨亜「良くできました。ふふふ……」


ユリア「な、何か不気味……」


麻箕華「ユリアさん? いくらこれが劇で、富実樹御異母姉様の今の御身分がただの一貴族であろうとも、この方はわたくしの異母姉あねにして、第百五十三代()おうこく国王――つまり、花鴬国の先王陛下にあらせられるのですわよ? 無礼を我慢できるのも、限度と言う物が御座いますでしょう? ねえ? 魔族の力を受け継ぎ、我がうんきょう家に絶対の忠誠と服従を誓う貴女ならば、御理解できるのではないですか?」


ユリア「(こ、怖っ……!)は、はいっ! 勿論です、麻箕華鴬大臣殿下!」


麻箕華「分かったのならば、それで宜しいのですよ、ユリアさん? 第一、富実樹御異母姉様の偽名、マリミアン様の王籍名、更には曾御祖母様の御名とまで同じ音を持つなんて、験担ぎとしては宜しいかも知れませんが、第百五十二代花鴬国国王花雲恭(ほう)きょうの第六王女と致しましては、少々気分が宜しくないのも事実なのですわ」


由梨亜「ああ、もう、麻箕華……。落ち着きなさいよ? 名前が被るなんて、よくあることじゃないの」


麻箕華「ですが、富実樹御異母姉様。『ユリア』という名前が被るのですわよ? 花鴬国史上最上の賢王と呼び名の高い、更には史上初の、魔族の力を全て揃え持っていた、あの曾御祖母様の御名なのですわよ?! 曾孫と致しましては、そう易々と容認致します訳には参りませんのですわ」


由梨亜「だから、ちょっと落ち着きなさいって。文句なら後でいくらでも聞くから、話を続けましょうよ。(……でも、麻箕華、由梨亜って呼べって言ったのに、絶対忘れてるわよね……。まあ、今の麻箕華に突っ込むほど、私も命知らずじゃないし、別にいいか……)」


麻箕華「……分かりましたわ。富実樹御異母姉様がそう仰るのであれば……。さあ、ユリアさん、御続けなさいな」


ユリア「は、はい……(何、花雲恭家もほんじょう家も、何かと濃ゆ~いキャラが揃ってる訳……?)え~、台所に降りて来た麻箕華は、おもむろにかぼちゃを持ち上げ、外に出ました」


麻箕華「ほら、富実樹御異母姉様。藍南と瑠璃を連れて、早くこちらへいらっしゃって下さいな」


由梨亜「はいはい……。って言うか麻箕華、素に戻ってるわよ?」


麻箕華「もう、どうでも宜しいですわ」


由梨亜「うん、そっか……。あ、魔法使いさん、こっちが藍南、こっちが瑠璃です」


麻箕華「まあ、大変可愛らしいですわね。それでは、まずかぼちゃから致しましょう。えい!」


由梨亜「わぁ! かぼちゃが馬車に!」


麻箕華「ふふ。喜んで頂けて光栄ですわ。それでは、鼠さんをこちらへ」


由梨亜「はい、どうぞ」


麻箕華「えい!」


藍南 「きゃっ!」


瑠璃 「ヒヒーン!」


ユリア「…………これ、説明した方がいいですか?」


由梨亜「是非とも」


ユリア「……えー、鴬大臣殿下が掛けた魔法によって、藍南は人間の()に、瑠璃は……馬になりました」


瑠璃 「ふふ。ヒヒーン! ヒヒーン!」


藍南 「……あたしは、人間になれたことを喜ぶべきかな?」


ユリア「……喜ぶべきじゃないでしょうか? これで鼠語は話さずに済みますよ」


藍南 「……この、普段のあたしとは似ても似つかない、野太い男の声と厳つい姿でも?」


ユリア「…………(プイ)」


藍南 「うわ……見捨てられた。酷い、唯一の同士だと思ってたのに……」


由梨亜「藍南、その話し方止めて。中身は藍南だって分かってるけど、姿も声も、男なんだもの。それで話し方が女の子って、オカマに見えるわ」


藍南 「オ、オカ……由梨亜、酷い! あたし達友達でしょっ?! 裏切るなんてっ……!」


由梨亜「だから、ほんと止めて……。気色悪くて吐きそう。さすがは魔族の魔法ね。完璧過ぎだわ……。作者も、こんな所だけに花鴬国の設定持って来なくっていいのに……」


ユリア「え~……。す、進めませんか?」


麻箕華「そうですわね。次は、富実樹御異母姉様のドレスですわ。えい!」


由梨亜「うう、気持ち悪っ……って、あれ? ぐ、今度は、別の意味で気持ち悪い……」


麻箕華「ふ、富実樹御異母姉様? 一体いかがなさったのです?」


ユリア「あ、作者からの伝言です。中世ヨーロッパでは、女性はコルセットで胴体を締め付けたりするのが普通で、とある夢の国の映画では、やけにスカートを広げる、クリノリンって言う鳥籠型の下着を着けていたらしいので、それに倣いました。……だそうです」


由梨亜「う、うぐっ……。こ、これ、息苦しいんですけど! 一体、ウエスト何センチにしてんのっ?!」


ユリア「……ご、五十四、だそうです」


由梨亜「……私、ウエスト六十なんだけど……?」


ユリア「え、え~、補足です。当時のヨーロッパ貴族は、もっと細い、五十センチ未満のコルセットを着けるのが普通だったから、これでも手加減してます……?」


由梨亜「こ、これで手加減っ?! 嘘でしょっ?! くっ……息が……。そ、それに何これ?! この――クリノリン? って奴! 歩けないわよ! 第一こんな大きかったら、扉も通れないじゃない!」


ユリア「え~っと、それについても補足が。……そのクリノリンも、大分手加減しているそうです。最盛期だと、裾の周囲が五、六メートルもあったらしい、と。ちなみに、このクリノリンのせいで起きた事故――主に火災により、何千人も死んだそうです」


由梨亜「さ、最後の情報は、聞きたくなかった……」


藍南 「由梨亜……死なないでね。はい、ガラスの靴」


由梨亜「ありがと、藍南……。う、ハイヒールには慣れてるけど、このガラス、靴ずれしちゃいそう……」


ユリア「……要するに、お姫様は楽じゃないってことですかね?」


由梨亜「待って、ユリアさん。私も王女様だったし、女王だったけど……こんな苦労はしなかったわ」


ユリア「それでは、中世ヨーロッパの貴族は……で?」


由梨亜「ええ。それが適当じゃないかしら? ……って、ん? こんな所にメモが。ふむふむ……は? 何ですって?(グシャ)」


麻箕華「富実樹御異母姉様? 今握り潰された紙には、一体何が?」


由梨亜「……作者からで、『本当は、クリノリンほど裾が大きくならないパニエとか、もっとずっと楽なバッスルとか、更にはクリノリンは取り除いちゃって、その下のペティコートだけでも良かったけど、面白そうだからクリノリンにしちゃった。ごめんね』……って書いてあるわ」


瑠璃 「ヒヒーン! ヒヒーン!」


藍南 「え~っと、由梨亜のお母さん、何て言ってるの?」


由梨亜「……『いいじゃない! 面白いんだから!』……お母様、それで迷惑をこうむるのは、私なんだけど?」


瑠璃 「ブルル……ヒン?」


藍南 「……何と?」


由梨亜「……『確かにそうだけど……そろそろ長さやばいんじゃないかしら?』」


藍南 「由梨亜……頑張って」


由梨亜「うん……。麻箕華。招待状頂戴」


麻箕華「は、はい……どうぞ」


由梨亜「ありがと……。お母様、藍南、行きましょ……。ぐ、これは、こうして、えっと……こう、かしら?」


藍南 「……どうしたの?」


由梨亜「この、クリノリンとコルセットって……座りにくいのよ! やけに場所も取るし! 藍南、お母様馬車に繋いだ?」


藍南 「うん、繋いだけど……これ、普通の会話で聞いたら、相当シュールだよね……母親繋ぐとか。DV?」


由梨亜「もう、どうでもいいからさっさと行くわよ! そしてさっさと終わらせる!」


麻箕華「あ、富実樹御異母姉様。うっかり台詞を忘れておりましたわ。十二時までには、帰って来て下さいな。十二時には、魔法が解けてしまうので」


由梨亜「ええ。分かったわ、魔法使いさん」


麻箕華「それでは、いってらっしゃいませ」


ユリア「そうして、由梨亜は舞踏会に出掛けて行きました。以上、終了。次回はまんまで『舞踏会・前編』だそうです。次回をお楽しみに~……。もう、疲れた」


由梨亜「……私とユリアさんは、絶対に最後まで出番があるから、それまで頑張りましょうね……」


ユリア「……はい、先王陛下……」

これ以降の出番がない人達による座談会



早理恵「……いらっしゃい、麻箕華」


麻箕華「早理恵御異母姉様……わ、わたくし、折角富実樹御異母姉様と御会いできましたのに、も、もう出番がないなんてっ……! 酷過ぎますわ!」


早理恵「ええ、そうね。でも、こう考えたらどうかしら? わたくし達兄弟の中でこの劇に参加できるのは、わたくし達以外には、御異母姉様と御兄様とだけですわ。後の八人は、富実樹御異母姉様と会えないのです。れいなどの例外はおりますが、わたくし達は恵まれているのですわ」


麻箕華「そ、そうですわよね……。わたくし、そう思うことに致しますわ、早理恵御異母姉様!」


 護 「(……何だろう、この姉妹の会話。入れない……)」


早理恵「それでは、存在感の薄い護のことなどは放って置きましょう! わたくし達は、ここで頑張るのです、麻箕華!」


麻箕華「はい、早理恵御異母姉様! ……と言うよりも、こんな方がおられたのですね。わたくし、知りませんでしたわ」


 護 「(ひ、酷い……。って言うか、今回、一言も喋ってないんじゃないか……?)」

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