第14話
次に目が覚めると、そこは真っ白な病室だった。
隣を向くと、寝ながらスマホを弄っていた大志が「お! 起きたか」と起き上がる。
どうやら同じ病室になったらしい。
「ぅ、ふぅ、どれくらい、寝てた? 皆は?」
「さぁな。俺も少し前に起きたし、まぁ三十分くらいじゃね? 俺とお前がたまたま同室になっただけで、もうあいつらと会う機会もないと思うぞ?」
「……そっか。大志さんは帰らないの?」
「バカ野郎。テメェに礼言うために待ってたんだろ」
「あ、そういう」
苦笑しながら起き上がる病衣の九十九に向かって、大志が親指でサイドテーブルを差す。
「起きたらそれに着替えろってよ。鴉が家まで送ってくれるらしいぜ」
「鴉って、もしかしてさっきの白仮面に黒スーツの人達?」
「あ? ああ。ゲームの説明された時会ってんだろ?」
九十九は担架を持ってきた奇怪な集団を思い出し、「う、うん」と頷いておく。
大志はスマホの電源を切り、ベッドの上であぐらをかく。
「……あんなこと言ったんだし、テメェは続けるんだよな?」
「続けるって、ゲームを?」
「ああ」
九十九は少し考え、頷いた。
「うん。続けようと思う」
「ハハッ、それが良いぜ。テメェには才能がある。それもとびっきりのがな」
「その言い方だと、大志さんは辞めるの? てか辞められるの?」
「は? おま、鴉から言われたこと全部忘れちまったのか? 辞めたくなったらいつでも辞めれるぜ? ただ、脳弄られてプレイヤーだった頃の記憶全部なくなるし、異能も消えるけどな」
「……そうなんだ」
案外良心的、なのか?
九十九は病衣を脱ぎ、いそいそと着替え始める。
「だから記憶消える前に、最後に恩人の顔見とこうと思ってな。残ってたわけ」
「恩人なんて」
「うるせぇ、恩人なんだよ。全員そう思ってる。まぁ辞めるのもテメェのせいだけどな」
「え?」
「俺は今回のゲームが協力ゲーだったから生き残れただけだ。もしこれが対人の殺し合いだったら、ぜってぇ死んでた。テメェらを見て確信したぜ」
大志は自身の震える手を笑い、拳を握りしめる。
「ここはパンピーがいていい場所じゃねぇ。俺みたいなチキンは、お天道様の下で平々凡々と生きているのがお似合いだわ。聞いた感じ、テメェら以外は同じ意見だったぜ?」
え、そうなんだ。じゃあもう本当に会えないのか。
「何かごめん」
「謝んなウゼェから! 良いんだよ生き残れた上に金もアホほど稼げたんだから! 俺はこの金で、夢だったケーキ屋さんを開いてやんだよ! 九十九もぜってぇ来いよ!」
「ハハっ、ならまずはその強面をどうにかしないとね?」
「んだとテメェ⁉︎ 俺の笑顔は超絶プリティーだろうが‼︎」
子供が泣きそうな笑顔に笑いながら、九十九は着替え終わり、ベッドから下りる。せっかく仲良くなったのに、もう会えないと思うと少し寂しいな。
「……それじゃあね、大志さん。本当に楽しかった」
「楽しかった、か。やっぱりイカれてるぜテメェ」
固く握手を交わし、
「ありがとな、九十九。テメェのことは一生忘れねぇよ」
「ハハ、僕もできる限り覚えておくよ」
「テメェは覚えておけよ!」
顔を隠すように大志に背を向け、九十九は後ろ手を振り部屋から出る。ドアを閉め、目に浮かんだ涙を拭った。




