緊張感があるんだかないんだか
「蜂須賀さんがー!電話に出ませんー!」
「まさに電話に出んわっつってな」
「ふざけている場合ですか!ナギサに危機が迫っていますのに!」
「連絡がつかない以上、もはや事がもう起きてしまっていると仮定して、対策が間に合っているのを祈るしかありませんか。ああ神様仏様ホルアクティ様!」
「天国の女神たるあなたがそれを言いますか……」
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「んーっ!んーっ!」
マトモな発声も出来ない中、懲りずに叫ぼうとする。だが猿轡をされている状況で何ができるわけでもなく、周囲から何の反応も返ってこない。
そもそもここは一体どこなのだろうか。
採寸がどうのこうので少数の護衛と共に街へ出掛けた時に急に睡魔が襲ってきたと思ったら、気がつけばここにいた、というところまでは思い出せた。今思うと、どこかで一服盛られていたのではと思うのだが……後の祭りか。
床が冷たい……というか、部屋自体に肌寒い空気が漂っている。悪霊やってた頃は常日頃からこんな感覚だったものだが、これは…………地下?
なんとなく前にレオンとの捕り物に参戦した時の気配に似ている気がする。
なんとか視界ぐらい確保したいところだけど……。確かシャルさんだったら炎が出せた筈。目隠しを燃やすぐらいならできるかも…………?
無理か。中身が違うせいかシャルさんが得意としていた方の魔法は私はからっきしだし、なにより火傷する。
なら小さな防御壁をこれでもかってほど研ぎ澄まして、刃物にするとか?
「んー……んー…………?」
ひとまず試しに出してみたものを手の拘束に当ててみるが、びくともしない。結構脳ミソフル回転させないと切れ味でないのかな?なんかもう既に嫌になってきた。帰りたい。帰れるならこんなことになってないのか。畜生め。
それでもなんとか刃先を研ぎ澄まし…………
「…………!ひへは!!」
縄さえなければあとはこちらの物。猿轡と目隠しをほどいて、凝り固まった手足を回す。
これだけでもうかなり疲れた。魔法で刃物を作り出すのは燃費が悪そうだ。お陰で頭がとてつもなく重い。例えるなら熱暴走したコンピューター?
生身の人間の脆さを直に感じさせられる。シャルさんも生前の私よりよっぽど健康優良児なのだが、悪霊時代の私の基準で動いては駄目そうだ。
「さて…………ここは一体どこなんすかね?」
小声で呟きながら辺りを見回す。さっき声を挙げても何の反応もなかったことから想像はついていたが、周りには誰もいないようだ。
目隠しされていたときよりましだが、相当暗く狭い。ただ扉らしき場所から光が漏れている。
やっぱり見当もつかない。プラシドさん達に見つけ出してもらえるような場所だといいのだけど。




