踊るシャルロット救出戦線
「婦長!手当たり次第に探しましたがー、どこにもいらっしゃいませんー!」
「恐れていたことが……大至急に公爵様に報告を!憲兵にもです!急ぎなさい!」
いつにもまして慌ただしい屋敷の中。毅然とした態度で指揮を執る婦長の顔にも焦りが見えます。
昼食にお嬢様が現れず、不審に思い失礼を承知で私室を見たところ不在であり、お嬢様の失踪が発覚。今日は外出されるご予定はなかった筈ですのにこの状況、お忍びでだとしても必ず私には事前に話を通している筈です。
お嬢様がこっそり街へ出ると言い出した時にはそれはもう驚いたものです。記憶喪失後に感じられる危機感のなさであればご自身の意思で消えたとしても違和感自体はありませんが、それでも立場と状況はしっかり把握しておられました。お嬢様が本気を出せば誰にも気取られず出ていくことは可能であるからこそ、私はお嬢様の悪だくみに乗っかったのです。
とはいえ誘拐の危険性はとっくに把握し、屋敷の警備も強化されていたのです。それがどうして忽然と姿を消すことが…………
「マリー!この非常時に何をボーッとしていますか!」
「はいっ!すみませんー…………あら?」
婦長に怒られ驚いた拍子に目を向けた窓。その向こうに、こちらの様子を伺う覚えのある顔が…………確か、お嬢様の知人?
「すみませんー、1つ確かめなければならないことが出来ましたのでー!」
───────────────────────
「…………プラシドさん、でいらっしゃいますよねー?」
塀の周辺に生い茂る木々。門番の視界の死角となる場所に立つ男性、プラシドさんに声をかける。
お嬢様の学園での警護をきっかけに知り合ったという彼がこの状況でここにいるのには、何かの繋がりを感じざるを得ない。
「あなたは確かマリーさん。シャルロット嬢と一緒にいらした……」
「その通りですー。それより、一体こんなときにここで何をやっていらっしゃるのでー?」
「こんなとき……?まさか、やはりもうシャルロット嬢は!?実は騒ぎが起きている気配は感じていたので、こちらから訪ねようかと考えていたところだったんです!」
そう声を張るプラシドさん。騒ぎが起きることを事前に知って、待機していたということでしょうかー?
「え?ええそうなのですがー……」
「既に事が起きてしまったとなれば、こちらに長居は無用ですね。…………よし、マリーさん。情報提供ありがとうございました!」
去ろうとするプラシドさんを、何がなんだかわからない私は引き留める。
「いや自分急いでいるんですが…………」
「私もお嬢様の安否を把握する義務がありますのでー、非戦闘員といえどここでおとなしく待つわけにもいかないのですよー」
この方が何か掴んでいるというのなら、私も助力し一刻も早いお嬢様の安全確保に努めなければなりません。そうでなければ、なんのために高い給金で公爵家に雇われているのか。というか屋敷での事件となると私たちの首が危ない。
「セビーチェンさんってこんな感情だったのか…………はぁ。事態は刻一刻を争います、付いてくると言うなら事情は向かいながら話しますので、ひとまず行きますよ!」




