Sideルシエラ 始まる交差
「とりあえず頼んどいたぞ、さっきの電話の受信地点の解析。乗り掛かった舟だからな」
「ありがとうございます。お礼に今度うなぎパイあげますよ」
釣り合っているのかわからない報酬を提示しつつ、過去取り寄せた資料を運ぶ女神様。わたくしも任されていた分を纏め…………あら、早速資料が届きましたわね。
「なんで今時FAXなんだ?」
「紙派なんですよ私。それではこちらはシャルさんにお任せしますね。私はちょっと根回しを…………あ、もしもし弟子一号?」
わたくし達の策は、ナギサの伝によって開けた1つの抜け穴を利用させていただくこと。女神様達にとっては危ない橋を渡ることになるようですが……事は一刻を争います。
「そっちでマークしていた子の中に、テオドール・オフェイレーテスという少年がいますね?下界に降りてその子に伝えて欲しいことがあるのです。どうか協力していただけませんかねぇ?」
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「この宿題、最初は適当なこと言ってはぐらかそうとしてただけなんだけどな。ヴィルジニーの事情が絡んできてそうも言ってられなくなった」
そう言って机に散らばった紙を漁り始めるアンジュさん。探すのを手伝おうとする私達を遮り数分後、ようやく見つけたらしい資料を手に再び語り始めました。
「セビの字に解析を頼まれてたっていうのがこのメモでな。何かの魔法絡みの内容が書かれているようだが、大部分が抜け落ちているし述者の主観しかないしでもうそれはそれは大変だった。セビの字にボーナス出してもらわなけりゃ気が済まないぐらいにな」
「ボーナスは諦めた方がいいと思いますよ師匠。それで?」
「既存の魔法理論とも比べてみてなんとか内容把握に努めたんだが、これがどうにも変態みたいな代物らしい」
「は、はぁ…………?」
変態みたいな代物。意図としては難解であるとかそういう類いであると考えられますが。
「わかった部分だけかいつまんで教えてやろう。ここには自身の意思を同調させた魔力を対象に吸わせ、定着させることで発動する魔法について書かれている」
「そうするとどうなるのですか……?」
「書いてない。さっき言った通り部分部分しかメモが残ってないからな。犯人が持ち帰り損ねたんだろうって話だ」
肝心なところが不明とは残念です。しかし聞いたことのない魔力の利用法ですね。私は別に魔法学に長けているわけではありませんので、なんとも言えないのですが。
「ですが師匠、この話をするってことは、関連性は掴んでいるのでしょう?」
「といっても推測が大半だから期待するなよナルシスト弟子。おそらくこの魔法の使い道は………………ちょっと待った。坊や、さっきから何してるんだ?」
気になるところで急に話を止めたかと思えば、テオドールが何かあるのでしょうか?私には彼を目視することは出来ませんから、何ひとつわからないのですが…………
「そういえばしばらく黙っていたね。どうかしたのかな?」
「えっ?あっ、ちょっといろいろあってさ。そうだ、僕用事あるからここで失礼するね。あとは3人でお願い。じゃあねー!」
「!?ちょっと、テオドール!?」
話しかけられた途端逃げるように去ろうとするテオドール。タイミングも態度もあまりに不審です。
そもそも彼は彼で仲間ながら隠し事の多い子でした。また何か、よからぬことが起きているような……………………




