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人の書〜エルドラド建国記〜  作者: 水井竜也(仮)
第8章・女騎士アルテミスと統合世界の公爵様

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『統合世界』第9話・怨霊と魔王

「地獄の王『サタン』よ!盟約を果たしなさい!

 我の肉体を強化し、暴力に抗う力を与えよ!」


 『サタン』の権能。私の名前『サティーナ』に、込められた力の一つ。


「 う ぁ ぁ ぁ ぁ っ !! 」


 魔王の威圧が空気を歪ませる。頭から角が生える痛み。

 魔王の力が、身体を作り替えていく!


 漆黒の大鎌を召喚して、平将門を睨みつける。


「私だって、伊達に魔王(ラスボス)をやってないわ」


 しかし、怨霊の鎧……平将門が、高らかに嗤う。


『ふはははっ!我は、屈しなかった!魔王が、いかほどのものか!?』


 将門は、瘴気を纏った刀を振り上げる。


「させない!」


 叛逆の大鎌を力の限り、振り抜く!


 ブォン!ガキィンッ!!


『ぬう!?』


 大鎌が、将門の体勢を崩す。そうだ。大鎌は間合いの武器。寄せ付けなければいい。


 何合かの打ち合い。将門は、新たな武器を取り出す。


『……小癪な!ならば、これを喰らえ!!』


 それは、投槍!?瘴気を纏った槍が、一直線に向かってくる!!


「『サタン』の大鎌よ!魔力を纏え!我を害する呪槍を打ち祓え!」


 叛逆の大鎌は、刃に魔力のオーラを纏う。


 ブォォォン!ゴンッ!


 魔力が、瘴気の投槍を打ち落とす。しかし……


『少しは、やるようだが……槍が一本とは、言っていない!』


 将門の両腕。そして、背後の空間にも槍が浮遊する。


『貴様のような、将の成り損ないは、粛正される運命なのだ!』


 その投槍が、放たれる。いかに、大鎌と言えども……


「くっ、数が多すぎる」


 その内の一つが、私を捕らえる!怨念の圧力に吹き飛び、背中を壁に殴打する!

 肺から空気が強制的に吐き出され、視界が白む。


『ふはははっ!この程度か?朝廷の犬どもめ!』


 怨霊は高笑いしながら、私に近づく。


「サティーナ!」


 葛葉様の声が響く。


「……よくも!妾の大事なサティーナを!」


 妖狐の権能を纏い、葛葉様が駆け出そうとする。

 それは怒り。そして、強敵を討ち滅ぼそうという、獣の衝動だった。


「葛葉様、いけません!」


 しかし、アルテミスが止める。


「今、サティーナ様は、冷静に対応しています。私たちが回復する時間を、作っているのです!」


 葛葉様の足が止まる。そして……


 ドゴッ!!


 自らの頬を、拳で打った。


『もう一人の葛葉よ、冷静になるのでござります。葛葉たちは、戦に酔う側ではない。皆と戦わねば』


 深く息を吸い、妖艶な笑みを浮かべる。


「……取り乱した。すまぬ」


 アルテミスは、葛葉様を見て微笑む。


「ええ……サティーナ様を信じましょう」


 その間にも、ペルセポネとルシファーの回復魔法が広がる。温かな光が、みんなを包む。


 私は立ち上がる。膝が笑う。だが、倒れるわけにはいかない。

 今は、みんなが回復するまでの時間を稼ぐ……それが、私の役目だ。


『温い!我は八つ裂きにされ、なお滅びなかった!朝廷に復讐を果たすまで、我は屈せぬ!』


 ふと、平将門の発言に、違和感を覚える。


「私たちは、朝廷ではない。確かに、あなたを目覚めさせたけど、戦う相手を間違っている!」


 私の言葉を無視して、瘴気の刀が迫る!


『問答無用!我が、怒り、恨み、屈辱……貴様らに、味あわせてくれる!!』


 ブォン!ガキィン!


「まだ……終わってないわよ!」


 大鎌を振って払いのける。


『……しぶとい女よ』


 さらに将門が、踏み込む。


 その瞬間、横合いから大斧が叩きつけられた。


「待たせたな、サティーナ!」


 スカジだ。私を抱えて『雪山の女神』の権能で氷の上を滑る。


『ならば、これならどうだ!?』


 投槍の一斉射!……しかし、スカジは、かわしていく。


「スカジ、氷は私が維持しますわ!」


 ペルセポネが氷結魔法で、投槍で穿たれた氷面を整える。


「おう、ペルセポネ!」


 スカジは私をみんなの前に降ろし、再び滑走していく。


「援護射撃!撃てーっ!」


 アルテミスの月光の矢、ルシファーの光と闇の矢、ニョルズの水流が交差する。


『小賢しい!ただ速くなっただけではないか!?』


 将門は、怨念の籠った刀を叩きつける。


 しかしスカジは、ぼやけて、霧のように消えてしまう。


「……くっくっく、鬼火による幻じゃ」


 それは、妖狐の権能。将門は、虚像を切ったのだ。


 本物のスカジは、高く飛び上がり、天井を蹴る!


「ゆけ、スカジ!!」


 バトルアックスの遠心力を使って、回転を加える!


「これが、オレの……オレたちの一撃だ!!」


 轟音。


 その衝撃に、領主館の応接間の壁には亀裂が入り、天井は崩落する。


 平将門の姿は消え、霧散したかに見えた。


 静寂。


「やりましたか?」


 アルテミスが、ポツリと呟く。


 その時、瘴気が辺りから満ちて、形を作る。


『ふはははっ!今のは効いたぞ。だが、我は“恨み”こそが本体!朝廷への復讐を果たすまで、滅びぬ!』


 霧が再び、鎧の形を取る。肉体ではない。概念。


 三百年分の恐れと呪いが、層となって重なっているかのようだ。


「これでは……」


 絶望する私に、葛葉様が話しかけてくる。


「お前、交代だ。ちっこいのに考えがあるようだ」


「はい。葛葉様、封印」


 私は、妖狐の本性の葛葉様を封印する。


「主殿。将門公は、現在では皇都を護る、心優しい守護神でござりまする」


 封印された姿の葛葉様が、静かに告げる。


「しかし、どうやら朝廷を気にしている様子。葛葉たちを『朝廷の兵士』だと思い込んでいるのでござりましょう」


 今度は、アルテミスたちが時間を稼ぐ。


「あの怨霊は、過去に囚われている、ということでしょうか?」


「左様でござります」


 葛葉様は頷く。先ほどの違和感の正体は、これだったのね!


「ならば、現在の将門公に降臨願い、鎧の暴走を鎮めるのはいかがでございましょう?」


 過去の怨霊を、現代の守護神が鎮める。

 一か八かだけど、やってみる価値はあるわ!


「分かりました!私たちは、怨霊の鎧を止めます。葛葉様とペルセポネは降霊の準備を!」


 葛葉様とペルセポネは頷き、準備に取り掛かる。

 東洋の術式をペルセポネの『冥界の女王』の権能に接続する……困難が予想される。


 時間を稼がなきゃ。


 私が『サタン』の大鎌で牽制して寄せ付けず、スカジが防御する。アルテミスとルシファーとニョルズが攻撃し、将門の怨霊の体勢を崩す。


『温い、温すぎるぞ!そのような攻撃では、我は倒せん!体力が尽きれば、お前たちに勝ち目はない!』


 瘴気を纏い、暴れ回る平将門。

 しかし、目的を共有した私たちは、落ち着いて対処できた。


「勝てなくてもいい。今は時間を稼ぐのよ!」


「「「「 お う ! 」」」」


 力強い応答が、返ってくる!


 背後では、葛葉様の鬼火が陣を描く。ペルセポネの権能が、それを満たす。

 北斗七星の配置と呼応し、空間が震える。


 異変を察した将門の動きが、一瞬だけ鈍る。


『……何を、している?』


「あなたを、今のあなたに返すだけよ!」


 ニヤリと笑う私に、葛葉様から声がかかる。


「主殿、降霊の準備が整いもうした!」


 葛葉様の陰陽術とペルセポネの権能が同調する。

 現代の将門公の神霊に交信する準備ができたのだ。


 私は歯を食いしばり、怨霊の刃を受け止める。


「……さあ、将門公。どうか、お越しください!」

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