後日談
「はいはい、結局くっついたわけだな」
数日後、スティーブンと2人で挨拶に訪れると、マークス様が投げやりな口調で仰った。
「だから最初から言っただろうが。婿にはスティーブンが良いだろうと。変に遠回りしやがって、面倒くせえ」
「はい、すみません。なので、あの、マークス様からのお話はお受けできず、本当に申し訳…」
はあっ!?と大きな声に、私のか細い声がかき消された。
「本気で言ってないに決まってるだろうが。お前らがあまりにウダウダだらだらと遠回りしているのを見かねて、俺が一肌脱いでやったんだろうが。分かってなかったのかよ。鈍すぎかよ。ふざけんなよ」
今日は特にご機嫌斜めなのか、毒舌ぶりに拍車がかかっている。
絶句する私に代わって、スティーブンが頭を下げた。
「マークス様、この度は本当にありがとうございました。マークス様のご配慮のお陰で、勇気を出して思いを遂げることができました。未熟者ですが、これからもご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いいたします。夫婦共々、リズノールの領民と領主様のため、尽くしていく所存でございます」
さすがスティーブンだ。思わず聞き惚れてしまうほどかっこいい。
慌てて私も頭を下げた。マークス様のいらつきも少し収まったようだ。
帰り際、お城の建物を出たところでトリスタン様と出くわした。
私とスティーブンに気づき、ぱあっと嬉しそうな笑顔をお見せになった。
「久しぶりだね。昨夜父から聞いたよ、お二人さん婚約おめでとう」
ありがとうございます、とスティーブンと声を揃えた。
爵位の引き継ぎに期限があるため、私達の結婚は急ぐ必要があり、トリスタン様とジェニファー嬢との結婚よりも先になる予定だ。
今日はこのあとドレスデザイナーと会って、ウエディングドレスの打ち合わせをする。
スティーブンは今日は休みだが明日からはまた当分休みがなく、いち警ら隊員として領民の平和を守るため汗を流す。
私は……私もそうだなぁ、子爵夫人になってもそれだけに収まらず、なにかにチャレンジし続けたい。
ジェニファー嬢と共に苗を植えた『リズ姫の初恋』が先日初めて実を結んだ。
グーチさんが我が子のように毎日愛情をかけて世話をし、赤く色づいた苺は宝石のように美しかった。
あの苺を使って、美味しいスイーツを生み出して、リズノールの銘菓として売り出す。
それが次の目標だ。
思い返せば、苺の増産計画を思いついて動き始めたあのときから、今というこの未来へ走り出していたのだろう。
今もきっと走り続けている。明るい未来へ向かって、スティーブンと共に。
たくさんの人との出会い、そしてこれまでの歩みに支えられて。
そう、無駄なものなど1つもなかったんだ。
回り道や失敗、黒歴史さえも糧にして、私はまい進していく。




