怒涛の新事実
翌日、形骸化されたコンテストが開催され、結果発表の時間。
10名の審査員が箱に票を投じ、それを1枚ずつ取り出して読み上げる役はクリストファー様の奥様、パトリシア様だ。
その途中で急速に違和感を覚えた。
「……以上、ジェニファー嬢5票、クレア嬢2票、フィリス嬢2票、スザンナ嬢1票……、優勝者はジェニファー嬢です!!」
なんと私に2票入っていたのだ。フィリスと同票で2位だ。
え!?
なんで!?!?
観衆の拍手喝采を受けたジェニファー嬢が前に進み出て、記念の像と『リズ姫の初恋大使』の刺繍が入ったタスキ(サッシュ)を受け取っている姿を眺めながら、混乱した。
ジェニファー嬢に入るはずだった1票と、フィリスに入るはずだった1票が、私に入ったということだ。
一体誰がそんな……まあ、トリスタン様だろうな。
トリスタン様とマークス様とパトリシア様以外の審査員は、ウェストブルック家の人間じゃないから、勝手に票を動かせる力はない。
トリスタン様……あんなに念押ししたのに、やっぱりお優しい御方だ。
大勢の前で私が恥をかくのを忍びなく思って、投票を調整してくださったのだろう。
予想外の結果に驚き、少し複雑な気持ちもしたが、正直ほっともした。
スティーブンの見ている目の前で、恥をかかなくて済んだのだ。
優しいスティーブンお兄ちゃまの胸を痛めさせることにならずに済んで良かった。
コンテストが終わり、まだバタバタしていたが隙を見てトリスタン様を呼び止めた。
「あのっ、トリスタン様っ――」
「申し訳ない」
私を見るなりトリスタン様は謝罪の言葉を口にされた。
「私の1票を動かすくらいなら、差し障りはないだろうと判断した。兄も同じことを思ったようで、結果2票になったが、私はあれで良かったと思ってる。勝手な事をしてすまないね」
「い、いいえっ、とんでもございません! ご配慮ありがとうございました」
トリスタン様に頭を下げながら、新たに判明した事実に動揺した。
マークス様もご自身の判断で私に投票されたと?
え、何で??
マークス様はフィリスに出場を願ったのだから、そこは絶対にフィリスへ投票すべきじゃないの?
「あの、マークス様は……」
「向こうで帰り支度をしているよ。今ならまだいると思うよ」
トリスタン様が教えて下さった所へ急ぎ、マークス様を発見した。
「マークス様、あのっ、どうして私に」
しらっとしたクールな視線をこちらへ向けて、マークス様が仰った。
「さすがに0票は不憫だと思ってな。お前にも面子はあるだろう。特に今日は。見合い相手が見に来ているんだから、少しは花を持たせてやろうという気にもなるさ」
え?
その「見合い相手」って……
「パーシー!?……が来ているんですか?」
思わず素で愛称を呼んでしまったくらい、驚いた。
「何だお前、知らんかったのか? コンテストが始まる前に来て、挨拶されたぞ。貿易商の2世だそうだな。良い金づるになりそうじゃないか。がっちり掴まえろよ」
マークス様の言葉を適当に受け流して、グローリアを待たせている控え室に戻る途中で、パーシーとばったり出くわした。
パーシーだけでなく、エノーラとスザンナも一緒だった。
何やら楽しそうに話し込んでいる3人にすぐに話しかけられずにいると、こちらに真っ先に気付いたのはスザンナだった。
「あっクレア様っ、お疲れさまでしたっ! あの、ほんっとうに楽しかったです! 私、こんな大きな舞台に立てるなんて、実際に今日立ってみるまで実感なくてっ、すっごく興奮しました! それもこれも、クレア様がコンテストを企画してくださったからだって思うと、なんと言ってお礼を申し上げたらいいか! こんな素晴らしい機会を与えてくださって、ほんっとうにありがとうございます!」
興奮しているスザンナがテンパってマシンガンのように喋った。
瞳をキラキラさせて頬を紅潮させて、スッキリとしたクールな印象の顔立ちとのギャップがある。
そのスザンナの隣で、私を見た瞬間にエノーラがぎくっとした顔を見せた。何か悪いことを見られたときのような、ばつの悪い表情だ。
あ、そういうことかと瞬時に察した。
パーシーが今日のコンテストを見に来ることを私は全く知らなかった。
だけどきっとエノーラは知っていたのだ。エノーラが誘ったのかもしれない。
つまり2人は順調に仲良くなっている。
そのことでエノーラが私に対して罪悪感を感じているのなら、それはパーシーに気持ちが惹かれている証拠だ。
うむうむ、順調に進展している。観測より早くてちょっと驚いたが、なんてったって2人は運命の恋人だものね。




