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ジェラシー

パーシーが来るまでに、エノーラと少しでも仲良くなっておかなければと考えた。

そうでなければ、2人を引き合わせるきっかけを作れない。


コンテストまでの2週間、エノーラはスザンナと共に領主様のお城に滞在している。

街の安宿に連泊するつもりだったが、それを知ったトリスタン様が、「それならうちに泊まるといい」と気前よく招待なさったからだ。



「あら、出かけるの?」


出かけ際、お母様につかまった。


「はい。領主様のところへ。イチゴ大使のコンテストが近づいておりますので、その打ち合わせで」


「ああ、例のアレね。あなたがそれだけ力を尽くしているのに、どうして他の女を選ぶコンテストなんて開くのかしらね。あなた、トリスタン様に直訴して、そのなんたら大使に任命してもらえば良かったのに」


「お母様、前にも申し上げたように、わたくし今はあまり目立ちたくありませんの。お父様の一件で、世間の目はまだ厳しいですから。世間を敵に回しては、せっかくの縁談も潰されてしまうかもしれません。ここは慎重に」


「ああ、そうね。大事なお見合いが控えてるいる身だものね。こんなときにどうでもいい事に駆り出されて、あなたも大変ね。本当にウェストブルック家の人たちは傲慢なんだから。手伝いなんて程々にして、ワイズさんとのお見合いに備えなさいね」


お母様には何度か説明をしたが、端から理解する気がなく、多くを誤解している。

苺増産プロジェクトを私が起案したことも、計画に主だって参加していることも、その大切さも言ったはずなんだけどなあ。

「女は簡単な手伝い」という感覚が根強いのだろう。根っからここの世界の人だし。


「女の幸せは金持ちと結婚すること」だとも信じている。

それはまあ、前世の世界でも信仰されていた説だし、ある意味正しいのだろう。


だけどパーシーは、エノーラに譲る!



領主様のお城へ出向いた私は、まずはトリスタン様へのご挨拶を願ったがご不在だった。

代わりに応じてくれたトリスタン様の側近に、スザンナとエノーラへ会うことは可能か尋ねると、2人も出かけているという。

The・無駄足!


「街を散策して来ると言って出て、もうじき5時間になりますから、そろそろ戻るかとは思いますが」


「そう。では、少し待たせてもらって良いかしら」


40分ほどして2人が戻ってきた。

楽しそうにきゃっきゃっしている様子が、たまたま覗いていた窓から見えた。


観光案内人兼の護衛を伴っての散策だったようだ。伯爵家の客人として、お優しいトリスタン様に優遇されているのだろう。


良いご身分ね、と思わず嫌味をこぼしそうになる。

仲良くなるために自分から会いに来たくせに、いざエノーラの姿を目にした途端、苦い気持ちを覚えるのは何故だろう。


ああ、分かった。

エノーラに、というよりあの2人に嫉妬しているのだ。

親友だと胸を張って言える関係。お互いに信頼しあって、好きあって、はちきれんばかりの笑顔を寄せ合っている。

モデルになりたいという夢、デザイナーになりたいという夢があり、身一つで田舎を飛び出てきた無鉄砲さと勇気、行動力。

彼女たちを突き動かしているのは、将来への希望だ。


ああ眩しい。直視するとダメージを受ける明るさだ。

若いっていいな(実はエノーラたちの方が一つ年上だけど)!

私はなぜか心身共に老け込んでいるし。


親友っていいな。

私には親友はおろか、友達と呼べる人っていたっけ?

グローリアは仕事で側にいるだけだし……と、読書に没頭しているお付きのメイドをちらりと見た。


『クレアのことは、妹のように大事に思ってるし、気心の知れた友人だとも思ってる』


不意にスティーブンの言葉が胸によみがえった。妹、友人。嬉しいはずの、苦しい呪い。


「失礼します。スザンナさんとエノーラさんが戻ってきたので、こちらへ呼んでも宜しいですか?」


トリスタン様の側近がやって来て、ハッと我に返った。

グジグジと感傷に浸っている場合じゃない。


「お願いします」


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