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ヒロイン登場

二次選考へ進むメンバーを決定し、会議を終えようとしたとき、ノックをして入ってきた事務官が、トリスタン様に何やら耳打ちした。


トリスタン様は少し驚いた顔をしてから、皆に向き直って仰った。


「いま、遅れてイチゴ大使の選考会を受けに来た者がいるそうだ。遠い他領からはるばる来たため、移動の都合で遅くなったそうだ。皆どうだろう、ここに呼んで追加のオーディションをするというのは」


「ええ、良いと思います」

「そうですね、遠くからわざわざ来たと言うのなら」

「さすがトリスタン様、寛大でいらっしゃる。お優しい配慮です」


トリスタン様の側近が口々に賛同した。

ちらりとトリスタン様がこちらを見られたので、「勿論良いと思います」と追随した。


間もなくして事務官に連れられて入室したのは、2人の少女だった。

年の頃は私と同じくらいか、1つ2つ下かもしれない。

まあガタイが良くて老け顔の私は圧倒的に年上に見えるだろうけど。

とにかく初々しい感じの2人組みだ。


緊張しているのか、1人が上ずった声で挨拶をした。


「こっこんにちはっ、トレガス地方のニニンという町から来ました、スザンナ・バートンと言います。遅れてっ、大変申し訳ありません」


貴族でないことは一目瞭然だった。


他領の領主家を相手に噛み噛みの挨拶をして、息を弾ませ、頬をピンク色に染めている。その可愛らしさにフィリスのようなあざとさは感じられず、ちょっと不格好なくらい一生懸命だ。

でも決してダサくはないし、清潔感がある。肩までの黒髪はサラサラで、スッキリとした顔立ちはシャープな印象だ。


着ている洋服は上等な絹ではなく、木綿のワンピースだが、柄の切り替えやステッチのラインがきいている、なかなか凝ったお洒落なデザインだ。


「いえ、はるばる遠くから来てもらえてとても嬉しいよ。道中大変だったでしょう、お疲れさま」


とトリスタン様が微笑まれた。


「スザンナさんと、そちらは……2人とも応募者かな?」とトリスタン様ににこやかに問われ、スザンナが慌てて答えた。


「あ、いえ、こちらはっ、この子は私の親友のエノーラです。エノーラ・ウィットフォード。ドレスデザイナーを目指してて、私がいま着てるお洋服もエノーラが作ってくれました。とっても素敵だと思いませんか!」


スザンナの勢いに圧倒された面々が、大きく頷いた。

すごく素敵だねとトリスタン様がお答えになっているそばで、私は目を見開いて固まっていた。


え、今なんて……?

エノーラ・ウィットフォード、デザイナーを目指している――……って間違いなく、あのエノーラだ。


この世界のヒロインで――後の私のライバル。

頭が真っ白になる。


「じゃあエノーラさんは付き添いかな?」


「はいっ、一人じゃ心細いから、付いてきてもらいました。エノーラは器用で、こんなに素敵なお洋服も作れる上に、友達思いで優しくって、それにとっても努力家なんですよ。このコンテストで、エノーラの作ったお洋服を沢山の人に見てもらえたらいいなあって……あっ、なんか私一人で勝手に喋っててすみませんっ」


「ううん、良いお友達がいて羨ましい。では、あなた自身についても聞かせてもらいたいな。いくつか質問していいかな。先に選考した他の応募者にも、同じ質問をしたからね。まずはこのイチゴ大使に応募するにあたって……」


とトリスタン様が定形の質問に入られたのを聞きながら、私はじっとエノーラを観察した。


ああ、前世で愛読していた小説のヒロインを、実物として間近で見られるなんて。

とても感慨深い。

ただ今の私はただの読者ではなく、登場人物という現役バリバリの当事者なのだ。

エノーラとの関わり方が、私の人生を大きく左右する。


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