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朝食は尋問で


いつの間にか寝ていたらしく、ドアがノックされる音で目が覚めた。


「クレア様、おはようございます。そろそろ朝食のお時間ですので、お支度の手伝いに参りました」


気付けば結構いい時間だ。

恐縮する私に、お世話係のマリアはたおやかに微笑んだ。


「さぞお疲れでいらしたんでしょう。お着替えを用意しておりますので、着替えられたら朝食へご案内いたします。マークス様がお待ちです」


朝からマークス様。尋問されながらの食事だなんて喉が詰まりそうだ。


マリアに促されるまま、用意されたドレスに着替えて髪を整え、場所を移動した。

マークス様がお住まいの棟の、中庭に面したガラス張りのテラスへ案内された。

建設予定の苺ハウスを思わせるサンルームだ。

そこのテーブルセットに腰かけて、優雅にティーをお飲みになっているのは、マークス様だ。


昨夜の髭面ではない。もっさりとしたカツラでもない。


トレードマークのピンキッシュなブロンドをさらりと片頬に流し、片側は耳にかけている。フリルタイ留めのブローチと袖元のカフスボタンは多分ルビーだ。深い赤が白いブラウスに映えている。

組んだ足のすらりとした長さや、ティーカップを持つ指先の美しさなど、何もかもが完璧な調度品のようだ。


マリアの声かけで、涼やかなブルートパーズ色の瞳がこちらを向いた。


「おはようございます」とマリアに続けて挨拶をしたが、それには応えて下さらず、「朝食の用意を」とマリアへ命じられた。


冷めた表情に超絶愛想のなさ。感じが悪い、いつものマークス様だ。

そういえば、昨夜のマークス様はちょっと違っていた。昨日は昨日で感じが悪かったけれど、何ていうか、もっとぐいぐいでしたよね? 距離感。一晩でぐんと遠くなった。

ていうか昨日が近すぎたんだ。こっちがデフォだ。


「突っ立ってないで座れ」


「あっはい、失礼します!」


思わず運動部の後輩のようなノリで返事をして、すたっと着席した。


「よく寝れたようだな」


「はい、お陰さまで……」


「スティーヴン・コンラッド・ウェストンの処遇についてだが……食事が来てから話そう」


マリアが朝食を運んで来て、また去って行った。

目の前に配膳された食事はどう見ても1人前だ。


「私は食事済だ」


なるほど。食後のティータイムでしたか。


「時間がないんでな。食べながら聞け。あいつを問い詰めたら、こう供述した。盗品オークションのアジトを突き止めて、個人の手柄にしたかったんだと」


えっと驚く私に構わず、マークス様は淡々と言葉を続けた。


「1警ら隊員が、業務の域を越えて勝手な真似をしたこと、決して看過できるものではない。よって処分する。良くて減給と停職、最悪懲戒免職だ。その辺の裁量は警ら隊長に任せるから、私は知らんが。異論が無いなら子爵にも報告して、あいつが二度とお前に接触しないよう、措置を取ってもらう。あいつ曰く、お前を上手く騙してあのパーティーへ連れ出したそうだからな。お前は世間知らずの箱入り娘で、いいように騙されて利用されただけだ。それで良いか?」


良いわけない!


「違います、私は騙されてません。スティーブンは悪くありません。悪いのは私です」


マークス様は鼻白んだ顔をした。


「奴の目的を知っていて協力したと? どちらにしろ主導したのが奴なら同じこと。それとも何だ、お前が計画したのか?」


冷え冷えとした瞳に見据えられて、気持ちが怯んだ。

その通りだ。私が計画して、スティーブンに頼んだことだ。スティーブンを巻き込んでしまった。そのせいでスティーブンが処罰されるなんて、あってはならないことだ。


「はい。私が計画して、主導しました。スティーブンが職域以上の手柄を立てれば、出世すると思ったからです。出世すれば、私の両親にも認められるのではないかと、馬鹿なことを考えてしまいました」


大きな嘘をつくときには、小さな真実を織り込むのがミソだと聞いたことがある。


「ほう。なら、どういう経緯であのパーティーの存在を知り、何を根拠に盗品オークションとの関わりを察知したのか、そしてどうやって招待状を入手したのか、詳しく聞かせてもらおうか」


ぐぬぬ。

答えに詰まる私をマークス様はしらっとした瞳で眺めた。


「話は以上だ。お前が私に本当のことを話すつもりがない以上、話していても時間の無駄だからな。良いではないか、全てあいつ一人のせいにして、切り捨てれば。親戚といっても殆ど他人なんだろう。お前たちの大事な子爵家を守るには、仕方ないことだ」


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