<82>家族会議、12月
シャーロットはななしやから帰ってくると、そのままの格好で急いでミカエルの部屋に走った。カギを開けて部屋に入り、ソファアに座るとミカエルの帰りを待った。走ってきたのがバレないように、髪を整えて深呼吸をして、コートはソファアに丸めて置いた。
間もなく帰ってきたミカエルは、シャーロットの格好を見て、「さっき帰って来たばかりなんだね、お帰り、」と微笑んだ。
着替えながらミカエルはシャーロットから話を聞くと大笑いで、ソファアに凭れてひくひくと笑った。群青色のセーターに灰色のズボンを履いたミカエルは髪を括り損ねて大笑いしていたので、ミチルが男装しているように見た。
「面白いねえ、ローズって!」
「びっくりしたわよ。ミチルとの禁断の恋なんて、言われるとは思わなかったもの。」
「僕がミチルなんだけどね。」
ミカエルが思い出したようにくすくすと笑った。やっぱり、ミチルが男装しているように見えた。いかんいかん、私の目がおかしくなってきている気がする…。シャーロットは何度も瞬いた。
「ねえねえ、あのね、ミカエル、」
「ん? なあに?」
「ローズがこのまま物語から脱線してしまって、エルメと結婚する方向へ歩いていったら、私は悪役令嬢にならずに済むんじゃないのかな。それとも、やっぱりなるのかな。」
「さあ、どうなんだろう。今のところ、悪役令嬢になる要素はないけど、それなりに悪役令嬢になって婚約破棄な流れを経験してきてるよね。そう思わない?」
「サニーと恋の噂が立ってミカエルに逆らって悪役令嬢になって婚約破棄未遂だったり、リュート達が私を自由にするために悪役なミカエルから解放するための婚約破棄未遂だったりって、流れね。」
「シャーロットの家族はいまだに婚約破棄を願ってるみたいだし、安心できないのは変わらないよね。」
「ローズがいようといなかろうと、婚約破棄の話はついて回るのかな。」
シャーロットは首を傾げた。
「例えばだけどね、ミチルと禁断の恋に落ちて断罪されてしまうことってあるのかな。」
「面白いね、それ、ほんと面白い。ミチルは僕だって僕が知ってても、意味わかんないよって思っちゃう。」
「悪役令嬢が同性の恋人と手に手を取って駆け落ちとか、新しい展開だと思うけど、実際はミカエルだもんねえ。」
「王子様はいけない恋に落ちた婚約者の目を覚ますために、真実のキスで心を取り戻すのです、っていう感じなのかな? そうなると悪役ってミチルなの?」
「その王子様って、ミカエルだよね? ローズが言うみたいにサニーじゃないよね?」
「サニーもそんなことを考えてシャーロットとミチルの関係を見てるのかなあ? そうは思えないけど、どうなんだろう。」
「確かめようのない話になって来たよね。ミカエルはどう思うの?」
ようやく落ち着いて髪を括ったミカエルに、シャーロットはやっと安心して目を向けた。
「僕? シャーロットの傍にいられたら、ミチルでもミカエルでもどっちでもいいや。いっそのこと、シャーロット、頭いいんだし、飛び級して同じ学年になってくれたらいいのに。」
「え、今から? かなり無理じゃないかな。2年生にならないで3年生やるってことだよね?」
「そう。そしたら、いつも一緒にいられるのに。」
「それは…、さすがに無理だわ…。」
「ミチルで3年間一緒にいるつもりだった僕の計画だと、ずっと一緒にいられたんだけどなあ。」
「そうすると、ミカエルでは卒業できないわよ?」
「するつもりはなかったよ? 適当なタイミングで中退して、王族用のサナトリウムで療養しながら独学で勉強するっていう設定にするつもりだったから。」
「え、ナニソレ。」
シャーロットは言葉を失った。それじゃほんとに病弱な王子さまって印象になっちゃうんじゃないの?
「君と結婚するまでは、何をしてたって『王子様のすること』だから、それぐらい融通利くと思うんだよね。」
世の中、そんなに甘くない気がするんだけどな~。シャーロットは首を傾げる。
「で、でも、今、頑張って二人分やってるじゃない。」
「そうなんだよね。やればできてるっていうのが正しいのかも。だから、僕がミカエルとして留年して一緒の学年になったら、今まで努力してきたことが無駄になるしなあ…。」
「この一年頑張って二人分の勉強やってきたものね、すごいよね、ミカエル。さすがだわ!」
シャーロットはミカエルがおかしな考えを抱かないように煽てた。
「ご褒美あげたくなるでしょ?」
機嫌を良くしたミカエルが、唇をちょんちょんと指差した。
「ミチルに?」
シャーロットが首を傾げる。
「ミカエルに。」
チュッと音を立てて頬にキスをすると、ミカエルはぶーたれた。
「ほっぺにご褒美のチューって、嬉しいけど嬉しくない。」
「ナニソレ。」
シャーロットはくすくすと笑った。
「私、明日帰るの。次会えるのはクリスマスよね?」
「そうだね、僕はお城にずっといるから、いつ来てもいると思う。お泊り道具だけ持って来てね。」
「プレゼント交換するんだっけ?」
「君が来てくれるだけでプレゼントだよ。」
「ふふ、嬉しい。」
シャーロットがミカエルに抱き着くと、ミカエルも微笑んだ。
「24日、楽しみだわ。」
「ラファエルとガブリエルの婚約者も来るって話だから、みんなで話ができるといいね。」
敢えて二人の名前を言わないのね、とシャーロットは思った。ラファエルの婚約者の北方の王子様はシュタインと言った。ガブリエルの婚約者はサニーの兄のレインだった。シャーロットが思っているよりも、ミカエルと二人の王子様は仲が良くないのかもしれない。
学校へ登校していくミカエルを見送って、シャーロットは帰る準備を始めた。トランクに荷物を詰め込んで、部屋の中を点検する。次に帰ってくるのは、早くても13日だろう。うまく抽選に当たるといいなと思いながら戸締りをした。
家に帰るために、今日はピンク色のニット仕立ての膝下丈の品の良いワンピースを着ていた。上に白いコートを羽織って、迎えに来た公爵家の馬車に乗った。
家に帰ると、エリックが出迎えてくれた。
「どうしたの? 何かあったの?」
シャーロットの顔を見て不気味にニヤニヤ笑う弟に違和感を覚えて、シャーロットは尋ねた。
「何もないよ、お姉さま。まあ、何かあるかもしれないけれど。」
変なエリック、と思うけれど黙っておく。シャーロットは荷物を執事達に預けると、コートを脱いだ。
「お母さまは?」
コートを侍女が預かってくれて、シャーロットは身軽になる。
「執務室でお待ちです。」
「ありがとう、」と答えると父の執務室に向かった。
部屋をノックすると、母の声で、どうぞと聞こえた。部屋に入ると、シャーロットは「ただいま戻りました、」と挨拶をした。
「まあ座りなさい、シャーロット。」
父は執務机の前で立って書類を眺めていた。母はソファアに優雅に座っている。
「あのね、まずはご報告があります。」
シャーロットはソファアに座る前に、立ったまま言った。
「1月2日はチーム・フラッグスの応援に新年の祝賀行事に行くつもりでいます。1月の3日から12日まで寄宿学校である、理事長推薦の遊学の旅に行けたらと思っています。人数多数の場合は抽選とありましたから、まだ確定はしていません。でも、行ってみたいのです。決まったら、領地に一緒に行ってお父さまやお母さまと新年を過ごす事はできなくなります。ごめんなさい。」
畏まって話しぺこりと頭を下げたシャーロットに、母はあっけなく、「いいわよ?」と言った。
「え?」
シャーロットが驚いて目をぱちくりと瞬いていると、父も言った。
「お前の好きにしなさい。新年のお城への挨拶に出かけた後、私達は領地へ戻る予定だ。こっちは寒いからね。領地で暖かく過ごす予定だよ、シャーロット。」
「いいんですか? お母さまは、楽しみにしておられたのではないのですか?」
「新年の挨拶まではここにいてくれるんでしょう? 私達も3日から帰るつもりだから構わないわ。それに…、シャーロット、その旅行のことなんだけど、あなたは行き先がどこなのか知ってて申し込んだのよね?」
「えっと…、掲示板に貼ってあった資料には何もなかったわ、お母さま。申し込みの控えも貰ったけど、何も書いてなかったと思うの。ただ、おじいさまが、生徒を集めて海外研修に連れて行って下さるのだと思ってるけど…?」
「エリックも申し込んだらしいわね。ブルーノ様も行くつもりなんですって。」
「エリックが? 何も言ってなかったわ?」
「あなた達は、仲がいいのか悪いのか時々、判らなくなるわね。研修先はブルーノ様の故郷の、ペンタトニーク公の国よ?」
「はい? ペンタトニーク?」
何も決めていない行き当たりばったりの船の旅じゃなかったの? おじいさまのする事だから、まともな旅行を期待していなかったのに。随分な評価を祖父に持っていたシャーロットは驚いた。
「その旅行は理事長の私費によるって書いてあったでしょ? あなたとエリックはお父さまの孫だから、申し込みをした時点で無条件で参加になるわ。費用は公爵家持ちでね。ブルーノ様もペンタトニーク公の国に帰るだけのことだから、申し込みをすれば無条件に参加でしょうね。だからあなた達以外の、7人の申し込んだ生徒は抽選なしで確定でしょう。」
「な、なんでお母さま、そんなに詳しくご存知なのですか?」
「そりゃあ、お父さまが毎日うちに帰ってきてはその話をしているもの。だいたいその話が決まったのは、あなたの為に皆さまが本を持ち寄ってくださった日だもの。あなた達の目の前でその話をしていたのに、気がつかなかったのね?」
もしかして、シャーロットがブルーノの両親と宰相とうちの両親と祖父とで何の話で盛り上がれるんだろうと不思議に思って眺めていた、あの光景のことだろうか。
「目の前と言っても、話声が聞こえる距離ではなかったから…。気がつかなかったの…。」
「お父さまがね、あの時も、シャーロットは好奇心に負けて絶対申し込むだろうって笑ってたけど、本当、その読みの通りね。」
ナニその読み…。シャーロットは祖父の大笑いを想像して内心イラっとした。
「今日で申し込みの締め切りらしいけれど、もう冬休みに入っているし、まあ、増えないでしょうね。お父さまもそう仰っていたわ。」
今から申し込みを取り消したい…。シャーロットは心の底からそう思った。
「そうそう、シャーロット、申し込みの取り消しはできないわよ? 申込書にそう書いてあったでしょ?」
確か、取り消さないことを条件に申し込みしてほしいと、注意書きがあったと思った。行きたくないな…。知っていれば申し込まなかっただろう。
「申込書まで、お母さまは御存知なんですか?」
「ええ、シャーロットが何を書いたのかも見たわよ? お父さまが持って来て見せてくれたもの。あなたの字って綺麗なのね。もっとひどい字を想像していたから、私は嬉しく思ったわ。」
字を誉められると嬉しいものね、とシャーロットは頬を染めながら思った。
「シャーロットがそんなに学校のお友達と旅行に行きたいなら、今回は諦めるわ。新年を一緒に祝えるだけでも、私達は嬉しいと思うことにするわ。」
「お母さま、ありがとう。お父さま、ありがとう。」
シャーロットはぺこりと頭を下げた。手招きされて母の隣に座る。
「宰相の家での、昼食会の話は聞いているわ。正式に招待状を頂いているのよ。これよ?」
母はテーブルの上にあった白い封筒をシャーロットに手渡した。封蝋をしていない封筒だった。
「中を見てもいいって、宰相の家の使いから言われたから、先に見せて貰ったわ。」
未婚の女性への招待状は、親に見られても良いように封はしていない事の方が多かった。正々堂々と申し込みをしているという意思の表れでもあった。
「では、金曜のお昼に、一人で伺ってもいいですか?」
「ええ、宰相の家から送り迎えの馬車を寄越してくれるとのお話だし、私はいいと思うわ。」
「父様はあまり行ってほしくはないけれど、本のお礼なんだろう? 行ってきなさい、シャーロット。」
父は微妙に顔を顰めていた。
「そうそう、あのね、お母さま。この前、ブルーノに、ダシェス・リジーに連れて行ってもらいました。お母さまの御口添えがあったと聞きました。ありがとうございます。」
母は一瞬ぽかんと口を開けた。すぐに気を取り直して頷いた。
「ブルーノ様とね、はいはい、話は聞いてるわよ。みんないい子達だったでしょう。」
「ええ、皆さん、よくしてくださいました。」
シャーロットはマリーと鉄板焼き屋で見たマリーの妹の顔を思い浮かべた。
「サニー王子と出かけた時は、馬車も出してくださって、ありがとうございます。」
母と父は視線を一度合わせて、頷いてから答えた。
「そんなこと気にしなくていいわ、シャーロット。本のお礼だったんでしょう。あと残っているのは、リュートと、ミカエル様かしら。」
「ええ、ミカエル王太子殿下とは、お城のクリスマスを一緒に過ごす約束をしたと、伝えたと思います。あれからお話が変わらないので、24日に泊りに行かせてもらう予定です。」
「確か、ミサに参加するんだったかしら。隣国のレイン様や北方の国のシュタイン様もいらっしゃるのよね?」
「そう聞いています。王妃様が客室を用意してくださっていると聞いているので、安心して来てくださいと言われました。」
「そうね、王妃がそう言うならそうなんでしょう。」
母は微笑んで言った。
「明日は予定が無いんでしょう? 新年に合わせてドレスを作る予定だから、仕立て屋が来る予定なの。あなたの採寸合わせをしましょう。今日はゆっくり休みなさいね。」
「お母さま、ありがとう。」
シャーロットがソファアを立ち上がると、父が言った。
「昼食までまだ時間がある、風呂にでもゆっくり浸かって着替えてきなさい、シャーロット。」
「ありがとう、お父さま、そうさせてもらうわ。」
シャーロットが機嫌よく執務室から出て行くと、しばらく様子を伺ってから、夫人と公爵はソファアに向き合って座った。
「ブルーノ様の評判が酷過ぎて、本心を言えば、今からでも研修旅行を辞退させたいくらいだわ。」
「そういう訳にはいかないだろう。私も、まさかそんなに評判がよくないとは思っていなかったよ。まったくの初対面のダシェス・リジーの従業員にすら、低評価なんだからな。彼は思ったよりも粗野なのかもしれないなあ。」
「あの子達は貴族ばかり相手にしてきて働いているから、目が確かだものね。」
「このマリーって娘は誤魔化すこともできただろうに、きちんと報告書をまとめ上げていて、きちんとした仕事をしているね。立派なものだ。」
「ええ、今度二人でクリスマス前にご褒美をあげに行きましょうか。あの子達を労いに。」
「そうだね、ちょうど金曜はエリックもいるから留守番させて出かけようか。シャーロットは宰相の家に行くし、いない間に済ませてこよう。」
公爵は夫人の手を握りしめて言った。「どうせなら土産の菓子も沢山も持って行ってやろう。」
夫人は微笑むと公爵の顔を見て、少し考えると悩まし気に困った顔をした。
「ブルーノ様は…、お酒に弱い自覚がないのかしら。あれだけ美しい人なのだから、どこかしらおかしなところがあっても不思議ではないのでしょうけれど…。手掴みで食事をするのは、一度ならそんなこともあると笑えても、二度ともなると、どう考えても素の性格よね。」
公爵は夫人の言葉に深く頷いた。
「サニー様の評価があれほど良いのにもびっくりするわ。シャーロットを丁寧に扱ってくれるのも、立ち居振る舞いが紳士的なのも、今のところ、申し分ないんだもの。」
二人は顔を見合わせて溜め息をついた。
海運王ペンタトニークとの今後の付き合いを考えれば、ブルーノの酒癖を理由に距離を置くのは妙案とは言えない。シャーロットとの婚約の話は急いで進めなくて正解だったと、今では二人は思っていた。
「あの国の婚礼衣装を着たブルーノ様とシャーロットの姿は、とても美しい新婚夫婦のようだったわね。」
「実際そうなってしまうと、シャーロットは苦労しそうだなあ。」
公爵は遠い目をした。
「シャーロットもお酒が弱いものね。どちらかがましならいいんでしょうけれど、二人とも弱くてはねえ…。」
「シャーロットがお酒に弱いのは、私に似たんだろうなあ。」
「私はお父さまに似てお酒は平気だもの。あなたの代わりに飲めるわ。」
夫人は得意そうに言った。
「サニー様がお酒を飲んでどう変わるかの様子を誰も知らないから、まだなんとも言えないけれど、このままだと、ブルーノ様は結婚に不向きかもしれないわね。」
「ああいう酒癖の若者なのだと知っていて嫁がせれる程、私達も寛容ではないからね。」
「浴びるほど飲んで痴態を晒すのならともかく、食前酒でそれだけ効果があるのだから、困ったわね。」
「ペンタトニークも夫人も酒を飲んでも乱れないからなあ…。想定外だったなあ…。」
夫人は公爵の言葉に何度も頷く。
躊躇うように、部屋のドアを控えめにノックする音が聞こえた。
「どうぞ、入って構わないよ。」
公爵が答えると、エリックが入ってきた。ずんずんと歩いて、公爵と夫人の間に割り込んで座った。
「お父さま、お母さま、今ちょっとよろしいですか?」
「なんだい、エリック、」公爵はくすりと笑って尋ねる。
エリックは、書類を持っていた。公爵に黙って渡す。
「ああ、お前から以前から聞いている、学校でお前に良くしてくれている者達の一覧だね?」
「はい、俺の代わりに情報を集めて、お姉さまのことをよく観察してくれている者達です。今回、お姉さまの懇意にしているチーム・フラッグスと婚約してくれた者が、何名か出来ました。」
「ますます情報が密になっていくな。素晴らしいことだ。こういった使える者達は大事にしなさい。私の方からも、彼らに出来る褒美は与えていこう。」
公爵はエリックの頭を撫でた。少しだけ口の端を上げて、嬉しそうにエリックは目を輝かせる。
「お前はシャーロットを思いやってくれるいい弟だ。今回もわざわざ研修旅行に同行しようなんて、なかなか出来ることじゃない。シャーロットが危なっかしいのをお前が助けてやってくれると、父様もお母さまも嬉しいよ。」
「シャーロットはぼんやり頭です。昔から変わりません。俺がしっかり見てやらないと、すぐに道を間違えます。」
エリックはシャーロットの事をそう思って見ていた。だから、煩くシャーロットに口を出す。
「ブルーノは見かけはいい男ですが、頭は単純な子供です。あの二人はお似合いだと思います。でも、このままだと発展はしないと思います。」
「それは、様子を見てくれ。状況が変わってきた。もう少し慎重に頼む、エリック。」
公爵の言葉に、エリックは考えながら尋ねた。
「慎重に、ですか?」
「ああ、シャーロットとは一旦距離を取ってくれても構わん。」
「研修旅行は、なるべく二人きりにしないように警戒していきます。そういう事ですね?」
「ああ、そうだ、そうしてやってくれ。」
「私はあなたが楽しめるのが一番だと思うから、研修旅行はシャーロットのことは気にしないでと言いたいわ。」
夫人はそう言って微笑んだ。
「ブルーノとお姉さまと一緒にいて楽しみます。」
エリックはにやりと笑った。「お姉さまに変な男は近付けさせません。」
話を黙って聞いていた夫人は、やっぱりこの姉弟は仲がいいんだか悪いんだかよく判らないわね、と思った。
ありがとうございました。




