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世の中に、名探偵は数あれど、これほど無能な名探偵は、そうはいないだろう、一時には、噂では、その男の行くところ行くところ、出事件が勃発したため、危険人物として、警察直々に、その男を隔離したとかしないとか、どちらにしても駄目な人間であることは確かであった
其れはそんなとき、即ちは、この男の助手をしていたころの話である
いや秘書と言うべきか、どちらにしても働いていたことは確かである
その男のビルは、東京よりも埼玉よりの寂れた商店街や、誰もいないような、はいビルがひしめき合っているそのうちの一つに
窓に、なかば見えても見えなくても良いように「十街探偵事務所」とかかれた紙なのか、それともそれようのワッペンみたいなものかはしらないが
その類の物が張られているが、其れを見て果たして、どれほど客が訊ねてきたか、私は知らない、そのほとんどが手紙や電話による依頼がほとんどであるからにして、あまりないのだろう、しかしながら、どうしてその他の情報が世界各国にとどろかんばかりに流布しているかが、最大のなぞでもある、探偵の容姿について、事細かく言うと、気分を害しかねないので
あまり大まかすぎず、かつ繊細さもなく言うと
まず、サラリーマンを髭面にすればその人になる
後、帽子は、潰れたシルクハットのような物を付けており
いつ何時も、いかなる場合でも其れを着用
以前、新幹線に乗るとき、どういう仕組みなのかは、しらないが、その帽子の頭を乗っける、穴に顔を突っ込んで、なかばアイマスクとかしていた
が、素材が気になるところだ、一見して、分からない
とまあ、そう言う人物であり、年齢不詳、もしかすると、整形に失敗した女と言うことも捨てきれないが、温泉旅行では、風呂に入っていないことから、判断しかねる、しかし、銭湯にはよく行くらしく、愛用の潰れた灰色のシルクハットを、頭に、よれよれのスーツで、お風呂セットをたらいに入れて、向かう姿を目撃するが、どこの銭湯にはいっているのか
今のところ分からない、半径十キロ地点に、そのような施設がないことは
確かであり、いつも尾行にきずかれているかはしらないが、いつの間にか巻かれるように、消えているのが常である、そこら辺はさすが探偵と言うべきなのか、そんな男に、たまに電話が来る、どうやら今日は無駄話ではなく、依頼らしく
「では、行こうか」などと気取って言っているような風もなく
言うのであった
新幹線を乗り継ぎ、地元電車を乗り継ぎ
ようやく目的地の小さな駅の前に到着すると、そこには出迎えらしく、巨大ななが細いリムジンが横付けされていたが、誰も文句を言うお客はなかった、其れが寂れているからなのか、それとも・・・
「ようこそいらっしゃりました」
そこに現れたのは、運転席から出てきたのであるが、執事と言えば
と言う感じの、老人であり、綺麗に剃られた顔、束ねられた白髪、どこか英国を思わせる、アンティーク調の服と言うべきか
その老人の首もとの蝶ネクタイが実に赤く鮮やかで印象的であり、自分が庶民的なせいなのか、其れが羊の首もとにつけられている金色の鈴に見えてしまった
「・・言っておくが、あれは、羊ではなく執事だからな」
横から私にそんな小言を言う十街探偵
しかし、本名は違うらしいく、別の事務所だったが
そのまま彼が引き継いだとか
「そんなこと分かってます」
そう言った矢先
彼は人の話など聞かず、そのまま執事の方へと、その足を進めた
彼らは2、3話し合いをして、私を見て、挨拶をした
「初めまして、私、闇城屋敷の執事寒露とも押します、何かご用があれば、私にお申し付けください」
彼はそう言って、私に軽く礼をした
私もあわてて
「・・・どうも、私は、軽爽 きりことも押します、よろしくお願いします」
「はい、お願いいたします」
彼はもう一度ひ礼をすると
今度は、車の扉を開けて、その中へと促した
その横で私は寒露さんを呼び止め
「うちの探偵、女には敵ですから気をつけてください」
小声で注意を促す
「そうですか、では気をつけたいと思います」
彼は、元々よく分からない、お面のような顔であったが
その一瞬、その顔に険が走り眼光が鋭くなった気がした
「どうしたんだい」
もう、先に乗っている探偵がそんなことを言う
「いえ、探偵は行儀が悪いので、物を取られないようにと」
「私はそんなことはしない」
無精ひげの泥棒顔が、そんなことをえばり腐って言う
果たして、こんな男が、どうしてあれほど事件を解決したか、其れも実に深いなぞであるワープロ殺人事件、渡り廊下殺人事件、枇杷と石榴殺人事件・・・有名な物だけでも、それ以上ある
私はなぞについて、深い疑問を思いながら、座るごとに、思想がとろけてしまいそうな、沈む座席に座って、外の景色を眺めて言いるうちに、そんな考えもどこかへ言ってしまっていた
「おいついたぞ」
そんな声で目を覚ますと、いつの間にか車は止まっており、息が酒臭い探偵が、私を揺すりながら、そんなことを言った
「はい」
私は少し恥ずかしさを覚えながら、起きあがろうとしたが
その非反発てきな、座席と悪戦苦闘を強いられ、ようやく起きあがると
もう探偵は、車の側には置らず、門を越えた玄関まであるいて行っていた
そこで私は、私のせの二倍はあろうかという鉄製の門、そしてその奥にそびえ立つ、真っ黒な城を目撃することになった
・・・・ここは遊園地か何か・・それとも気が付かないうちに海外に
そんな馬鹿な思想は
「何をしているんだ」
と言う、玄関前で、無粋にも叫ぶ男のせいで、いや、妄想だろうと
勝手に自分で捨ててしまった
「大丈夫ですか」
扉の外に立っていた、執事の寒露さんが、そう言って私を外からうかがっている
「ええ・・すいません、あまりにも椅子が気持ちよかったもので」
「そうですか、これは奥様の特注品の品でして、実に、お選び抜かれたしなものです」
「そうなんですか」
「はい」
「まだかー」
そんなとき、どこまでも無粋な声が、また響きわたる
「今行きます」
私は其れを揺るがすばかりの声を張り上げて
行ってから、ようやくこの気持ちのいい、黒光りする細長いゴキブリのような車から、降りることになってしまった、よくよく考えれば
ここで引き返していたら、少しは何か変わっていたのだろうか
いや、私のような一市民には、そんな戯れたこと、まず無謀なのかも知れない、そう思うことこそ、おこがましい
「おいはやくしろ」
まるで、子供のように呼ぶ、十街探偵にせかされ
私たちは、その扉を、開けてしまった
「其れで問題の物とは、これのことですか」
この人の所有物で、唯一白いであろう、手袋をして、そのビニール袋にはいっている、手紙を、見て探偵は言う
「はい、そうでございます」
執事の寒露さんが、うやくやしく言う横で、3人の娘さんと、顔に髭がある、威厳ある人物が其れを見ていた
先ほど、恐るべき豪華な室内を歩いて、我々がおおせつ室に通されると
そこにはもう、さん人の娘さんがおり
それぞれが、ここの娘で
右から「らんこ」「ようこ」「せいこ」のさん人
しかし、どれもが鏡を並べたような美しくまた同じ顔であり
唯一違うのは、その体にまとったワンピースが、青赤黄色の一色で、其れ其れ違うシンプルな物だったという事だけだ
髪型も皆、おかっぱであり、名前を紹介されても、きっとすぐに分からなくなるだろう
しかし、等の探偵は、そんなことおくびにも出さず
すぐに、彼らと打ち解け、そして、その名前を間違えることなく言い当てる、本当にある意味凄いが、言葉を換えれば、女ったらしとも言えなくもない、しばらくすると、この家の亭主桑薙家頭首、桑凪 叩次郎が、現れ、今回の一件を話し始める、どうやら、娘さんたちが、彼のことを知っていたようで、其れで今回の運びとなったそうだ
「では、本題に」
探偵が促し、今回の依頼の元となった物を、促した
そして出てきた物は、執事の寒露さんが、奥に引っ込み、持ってきた、ビニール袋に入れられた、あの手紙だというわけだ
其れは、茶封筒にはいっており、其れを取り出して出てきた、灰色がかった不気味な感じの紙に
「3人の娘を、我、殺す」
とだけ書かれていた
「ふむ・・・心当たりは」
探偵はそう言った
皆一同、辺りを見て、顔色をそれぞれうかがうようだが、皆首を横に振るばかりで、誰も縦にふるものは居ない
「あの・・・これほど大きな建物と言うことは、何かしら大きな事業をしているという事ですよね、其れで何かあるんじゃ」
私は差し出がましく言うと
亭主 桑凪 叩次郎さんが、口を開いた
「はい、其れは昔のことなんですが、ここら一体は、蚕を、大々的にやっていたんですが、そのときに祖父が、これを建てたんです」
と、言う
「ほう・・では今はやっていないと」
私は先を促す
「まあ、ほとんどプラスチック繊維の加工をしていますが
わずかですが、意地のように蚕もやってはいます」
「そうですか・・・・そのとき、減らした蚕農家の恨みとか」
「・・まあ、其れはあるかも知れませんが、しかしうちもぎりぎりまで追いつめましたし、それに、その方がたには、斡旋して、今の会社にはいって貰っています、しかも、大々的な事業転換は、もう、五十年も前です
今更と言うことは、中々」
「そうですか・・・そう言えば、奥様は」
私は、探偵に変わって、何かしらきいている気はしたが、この朴念仁は、ほとんど喋ることがない、だから私が喋っているようにしてはいるが、あまり意味はないような気もしなくはない
「ああ、妻の毬恵は、もう、十年ほど前に、亡くなっています」
「・・ちなみに、死因は」
そこで初めて、探偵が口を開いた
意味があるのか無いのか
「ええ・・元々からだが悪い人でしたから
其れで、ある時熱をこじらせまして、そのまま」
「不審な点はなかったと」
「ええ」
「そうですか」
探偵はひとしきり聞いた後、また沈黙した
「何かあったんですか」
私は気になり聞いた
「ああ、美人みたいだから」
「え」
探偵の目線の先に、ガラスのアンティークせいの戸棚のような物があり
その中に見える写真に、美しい女性が写っていた
その下には、四人の同じ顔の少女、そして全員の後ろに、頭首が立ってい
た
「・・・・・・」
私はとりあえず、探偵の腕をつねって、話に集中するように促す、これだから
「そうですか・・もう会えないんですね」
「え」
何をいったか聞き返す、亭主に、別の話を私はあわてて振った
「其れでは、心当たりはないと」
「はい、私の考える所は・・あまり」
「・・・あまり・・つまり、少しはあると」
すると、私の指摘に、怒ることなく、多少はなを掻いてから
「ははは、まあ、そう言われると、言いにくいが」
「どんなことでも良いのです」
私は言う
何となくせっぱ詰まった刑事のような感じがして良い
ただ、勝算など皆無だ、どうせ、何もしなくても、勝手に、この場所が飽きた頃には、解決しているのだ、何かそれらしいことをしても、恥はかくまい
「実は、娘達の結婚を認めていないのですよ」
「其れはどうして」
「いや、どうも考えが古くていけませんが、私はお見合いのほうが、良いともっているのです、妻とのときもそうでしたし」
「では、彼女たちは、恋人が」
「ええ・・さん人がさん人そろって」
「其れはまた」
まあ、驚くほどでもない、それくらい美しい、しかし何だろう、どこか、人を上から見るというか、もてあそぶというか、どこか悪戯っけがあるように思えた
「それに、許嫁もいるのです」
「・・またまた、古風ですね」
「いえ、案外大きな会社だと、血の繋がりのために、そう言うことをするのですよ、私の妻も母方の親戚です」
「へえ、何か凄いものです」
「・・・ですから、私もそのほうが良いというのですが」
「しかし其れとこの手紙、どのような関連が」
「ええ、馬鹿な話ですが、相手方の彼氏が、思うように行かないのであれば、殺そうと、もしくは、駆け落ちしようと、そう思ってこんな事を」
「裏は取れているんですか」
「ええ、ですから、いま、娘達を安全のために、この屋敷に、いさせ
それと、相手さんを見張っているところです」
「中々旺盛ですな」
戸棚を見ていた探偵が言う
「ええ、娘達のことですから」
「いえらいいえらい」
「はい」
「いえ、なんでも」
探偵は、そう言うと、そのまま部屋を出て行ってしまった
「・・どう言うことですか」
「いえすいません、屋敷の見回りにでもいったのでしょう」
「そうですか、執事の寒露を付けましょうか」
「ええ、お願いします、何をしでかすか分かりません」
かくして、寒露さんと、探偵は、部屋を出て行く
本当は、暇になると勝手に、終わったことにして出て行く習性があるのだが、失礼になるので、そこはあまり話さない
「そう言えば、あの写真には、四人写っていますが、あの方は今日はいないのですか」
「ああ」
亭主は其れを見ると
うなずき
「あれは、次女のさなぎこです、妻が死ぬ前に、交通事故で」
「そうですか・・・」
そのあと、いろいろと聞くも、大した情報というよりかは
世間話にも似たものとなり
崩すように、その問いは、形をなくし
次第次第に、お開きになった
なお、さん人の娘さんに聞いたが
「さあ」「さあ」「さあ」と、皆同じようなことを繰り返すだけで
其れこそ要領がつかめない
私は、切りの良いところで、さん人に聞いた、ボーイフレンドのもとへ向かうことにした
結果として、要領がつかめず、それどころか、さん人のボーイフレンドの恋は、みな終わっているという事が分かった、其れでは、ますますこの犯行声明のような物は、何なのだろう、ちなみに、日付印などは、一切無く
実際に、この屋敷まできたのだろう、そして、其れが見つかったのは、三日前の朝刊と一緒であり、昨日の夕刊以降に、入れられたという事になる
しかし、内容がないようだけにいつ何が起こるか、検討が付けにくい状況だと言うことに代わりはない
そして、探偵とは、いつも、人が死んでようやく動き出すもので
死ぬ前に、動き出した物を見たことがない
うちの探偵も、例外ではないのだ
強いてあげれば、達磨殺人事件が、あるが、あの場合、探偵が、謎解き中に必ず殺される恐るべき怪事件であった
と、そんなことを考えながら、割り当てられたへやでうろうろしていると
「やあ」
などと暇な声で、探偵がようやく帰ってきた
時間は六時丁度であった
妙なことであるが、この探偵が帰るときは、比較的、時間がぴったりなことが多かった、其れについて聞いたことがあるが
「さあ、分からん」というのみで、後の会話もなく
わからんのである
そんな奴が帰ってくると、そのまま、二つあるうちの一つのベッドに
ダイブすると、そのまま動かなくなる、死んだのでなければ、眠っているのであろう
「・・はぁあ・・・私はいったい何をやっていよう」
どうせ、やはり私など意にも介さず、この人は勝手にいつの間にか
事件を解決してしまうのだ、その間私は、そんなことが私の二つある悩みのうちの一つ、そしてもう一つは、事件がこのあと起こるのに、私はどうせなにもできないと言う、一種のタイムトラベルを繰り返してきたような
人間のあきらめにも似た感情が、私を警告する
「はあ」
その音を私は幾度と無く、救おうとした
しかし、結果的には、まるできまったことのように、探偵は事件が起こった後解決して、その地を去るのみなのである
私は其れを、ただ見ているしかない
あがいても、変わらない、おぼれても、息はできない、助かることはない
・・・そのときふと、近所の愛魚、欄中のカマボコのことを思い出した
その金魚には珍しいピンク色のその欄虫は、怪しげな骨董やの、奥に
まるで置物のような、水槽に、封じ込められたように泳いでいる
果たして、どうしてそんなことを思ったかはしらないが
私は、そのビジョンとも取れる物を、なんとなしに頭に思い描いていると
いつの間にか部屋を取びだして、何人にも見張られているであろう
あの三つ子の部屋に走っていた
彼女たちは、三階建てのこの屋敷の、それぞれ一番はじの部屋にいた
今私がいるのは、客室が十室ある二階である
「・・・どうする・・とりあえず、二階のようこさんの所に」
なお、一階は、らんこさん、三階は、せいこさんだった
私はそのまま、赤い絨毯が引かれた廊下を歩く
まだ夕方でひも明るいというのに
その廊下は、一日中、ひどく暗く重厚である
彼女のいる部屋は、L字の一番最後であり
さらには、その前にはボディーガードマンがおり、すぐに見分けがつく
私がその前に立つと、その方は私に前を譲る
そのまま扉を三回ノックした
「はい」
そのとき、部屋の中で物音がした
彼女が立ったのだろうか
「っあ」
また声がしたが
その声は、先ほどの落ち着いた声ではなく
ヒドく、驚いたような声である
「だっだれ」
誰かいるようだ
私は急いで、ドアノブを握る、酷く金属室の其れは冷たい
しかし、左右に回しても、開かない
「あの、鍵は」
しかし、その間に、部屋の中で物音が激しさをます
何か倒して、さらには壊れる音がした
「早く」
そのボディーガードは、首をひねると
そのドアを前に押した
「・・・あ」
扉が開かれ
そこで目にした物は
赤い絨毯に、真っ赤な血を吐く三女ようこさんの姿であった
「つまり、誰も出て行っていないと」
私は其れを見ると、すぐに扉を、ボディーガードさんに見張りを頼み
部屋を捜索した
しかし、息絶えた彼女以外に、人はなく
かくして、窓には、鉄板が埋め込まれているのか
風のはいる隙間さえなかった
「・・・どう言うことでしょう」
電話で屋敷の者、そして警察が呼ばれた
かく言う、探偵はというと、ポリポリと頬を掻きながら
なにやら首をひねって、最後には合掌している
しばらくして、警官が来ると
色々と事情聴取を受けたが、その刑事の名前は
鳩柱とか言った、年は五十はいっているだろう、酷く白く
そして縦に長い電信柱のような男で、体も白い服であった
一見すると、医者にも見えなくはない
「其れで、毒物でしたか」
探偵がそう刑事に聞いた
「あなたは」
「私はこう言うもんです」
そう言って、しわくちゃの名刺を刑事に渡すと
「あっ・・あなたですか」
と、知っているのか、そんな声を出すが、名刺を出させることから
直接の知り合いではないだろう、よっぽどきおくりょくが無いというのであれば別であるが
「いや、これは失礼、私、鳩柱と言うものです」
そう言って、警察手帳を出すと、仕舞う
「いえ、あなたのことは新聞雑誌、後変わった娘の良く言っている人物でして、かねがね存じておりました」
あの鳩頭とかいうけいじの言っている娘とは
自分の娘のことだろうか、だとしたらみずから変わっているというのだから、よっぽどの偏屈者なのか
「其れは其れは、で、」
「でと言いますと、事件ですか、あなたとは娘を会わせたいものです」
「其れは是非、結婚を前提に顔を見て決めたい者です」
「ははは、顔は良くても性格は破綻者です」
「ははは、私も同じですよ」
無いやら自虐的会話を繰り広げる
田舎の刑事と馬鹿な探偵だったが、ようやく本題に入った
「其れで何ですが、薬物摂取ですねこりゃ」
「薬物とは」
「はい、あなた方の話で、幻覚症状のあるもんかとも思ったりしたりしたんですが、どうもただの青アーモンドですわ」
「・・・青酸カリですか」
「ええ、わしらは青ですけ」
「・・・しかし、でしたら、彼女は其れをどうやって飲んだのでしょう
見たところ、コップなど・・または食べ物類はありませんが」
「さあ・・しかし、口内からそのような物は検出されず、また、外傷もないので、何か・・そう、注射器のようなもんで、体内にブチューと入れたというのでなければ、カプセルでも飲んだのでしょう」
「注射器の可能性は」
「其れはこれから調べます・・・しかしおかしいですね」
「なにがです」
「青酸カリに、幻覚症状はない
では、いったい誰が飲ませたのでしょう」
「・・・さあ」
探偵は、大して問題もなさそうにそう言った
「・・・・どうだと思います」
「何がだ」
一通り質問をされて皆へやに帰る途中
私は探偵に質問した
「どうして、彼女はその薬物を体内に入れたと思います」
「カプセルと言っただろう・・あれなら、口の中に薬物反応が無くても
良い」
「でも、だったら、どうして、血を吐いたんですか
そのとき口内に、血とともに薬物反応が」
「おまえは目が悪いか、其れか馬鹿だ」
「どう言うことですか」
私は部屋の鍵を開けながら、そう言う
「あれは、手を切ったのだ」
「・・手を」
「ああ、彼女の手は、酷く傷ついていた、まるで何者かにきられたかのように、そのときの血が、辺りに飛び散ったのだろう」
「・・でも、誰もいませんでしたよ」
「ああ・・おまえでもさすがに飛び出す人間は見逃すまい・・・立って夢でも見ていない限りな」
「それじゃあ」
「さあ、犯人などいない、幻覚だったのか、それとも、もっと巨大な
現実に進入した悪夢なのか」
探偵は良くどんな悲惨な事件でも、意味ありげに茶化すことがあるが、大体全く関係ないことが多い、と言うか、すべてない気がする、全くないと思う
「まあ、暇だし、君も寝たらどうだ」
そう言って、いつのまにか顔をしたにして、寝ている探偵
靴くらい脱げと言いたいが、どうやらそんなとこまでここは西洋風のようだ、執事の寒露さんもそのことを言っていた
「うちは、すべてが西洋風なので、ベッドでも靴をお脱ぎにならなくてもよろしいです」と、まあ、落ち着かないので、一応は、靴下のみはいて
いつでも外にでられるだけの準備はしている
しかし、今から探偵のように、まるで、まいにちくるゴミ捨ての収集車
のごとく、事件を事件とも思わない神経ではない
だから、無駄だと分かっていても、私は、ノートを取り出すと、そこに今日あったことを書き始めた・・・主に其れは、アリバイの話になった
しかし、悲しいことに、そこに書かれた物は、完璧なまでのアリバイだ
何しろ、事件が起こるという物が前提にあるので、皆ボディーガードが、部屋の前に居た、と言うことは、アリバイがすべてにある、そして、抜け出すことは不可能で、あの鉄板も、昨日、大事を取って近くの大工に作らせた物らしく、内側からも外側からも開けることはおろか、壊すことも大いに大事だそうだ、そして今回、誰の部屋からも、その鉄板はおろか、壁すべてに、何らいじょうはなかった
つまりは、あの殺人現場のみが、独立して、事件が起こったという事になるだろう
「・・・・分からない」
私は心の中で声を出して、悩んでいた
当のあの無駄な名探偵はと言えば、夢の中を迷走でもしているらしく
実にいびきがうるさい、とんだ迷探偵だ、そのまま黄泉の国まで
窒息死して、逝って仕舞えばいい、私は、枕にその髭面を押しつけている探偵をみて、そんなことを思った
しばらく、其れを、死ね死ね死ね、の一歩手前の殺意にもにた悪戯心でみなくもない感じで、みていたが、飽きが来たので、ノートをみる
しかし、皆これと言って、特徴的なことをしているわけではない
では、本当に、何者かに殺されたのか
しかし、どこへ消えたというのか
昔読んだ、推理小説の中の探偵が
こんな事を言っていた
「もし本当にだれも出て行かなかったのだとしたら、最初から誰もいないか、もしくは、そのままか、そのどちらかか」と
そうなると、彼女は、実は、不幸中不幸で、誤って毒物を、あの部屋で何らかの拍子に飲んだか、もしくは、あの部屋に、犯人は潜んでおり
皆が入ったときに、何食わぬ顔で、進入を果たしたのか
・・・そう考えると、ますます、混乱してくる
どれも否定さえできないのだ
この世に悪魔がいるか
其れは実に難しい質問だ
居ると思えばいるし
居ないと思えばしないし
有名な話に、肩こりを知らない国では
肩こりなど無い
と言う
では、癌だとどうなのだろうと、私は思う
虫に病気はあるのか
魚に痛みはあるのか
果たして、人は賢いのだろうか
私は、そんなことを考えているうちに、徐々に眠くなってきた
少し寝ていようか
そんなことが頭をよぎった次の瞬間には
別途の羽毛に、その思考を根こそぎ連れ去られていた
無粋な音が響く
最初、其れが何か分からず、ただ辺りから響いていることが分かったが
目を覚まし、扉の方をうかがった頃、ようやくノック音だと分かるが
酷く乱暴で、良ければ、壊しかねない強さがある
私は急いで探偵を起こすと、そのまま扉に向かわせた
「はい、何ですか」
機嫌の斜めの声で、事なにげに、探偵は言う
「急いでください、せいこ、が亡くなりました」
其れを聞いても、探偵は、カラスの駆除がうるさい位の騒動にしか思えていないらしく
「はいはい、今開けます」
などと、のんきに上着を、着ながらようやく扉を開ける始末だ
私はと言うと、もう準備はできており、探偵のあとから、そつなく、後に続いた、ちなみに声の主は、亭主であり、寒露さんは、警察とともに、現場にいるという
「では、状況の説明を、お願いします」
探偵は、三階の自室で、バスルーム一杯を真っ赤に染めて死んでいる
せいこさんを、横目に、皆をみる気もなく見渡すと、そう言い放つ
わたしは、なんて横暴な態度と、思うが、いつものことなので、軽く背中をこつくに留まる
「はい、私が」
話し始めたのは、執事の寒露さんだった
七時頃、私は、三階の厨房で、夜のお食事を用意していました
其れは丁度、プディングを、冷蔵庫に入れたときです
厨房に設置してあります、内線がなったので、とりますと、せいこさま、のお部屋で鳴っている、私は何かあったのかと、急いで受話器を持ちました、すると、ただ何かが焼けるようなおとが、響くのみで、わずかに
くぐもった悲鳴のような声もしました、私は急いで、厨房から出ると
そのまま、せいこ様のお部屋の前に行きました、そこで目撃したのは
ボディーガードが、異変に気が付き、中を調べているところでして
それで、発見しましたのが、あのバスルームで、変わり果てたせいこ様でした」
「ありがとうございます・・・それで、鳩頭刑事、死因は何ですか」
「鳩柱ですが・・はい、其れなんですが、薬品による、大量出血だと」
「薬品」
「ええ・・血行を良くする類の物で、其れを大量に服用して、そのまま、バスタブに、お湯を張り、全身に切り傷がみられます事から、其れによる大量出血かと」
「では、寒露さんが聞いた、物が焼ける音は」
「其れなんですが、酸を、全身にかけられてます」
「酸・・・その、大量出血だけでは、死ななかったというのですか」
「其れが分からないんです、もし、検出された、薬の量で、風呂の中で出血し続ければ、確実に死んだでしょう、しかしもしかすると」
「何です」
私も突っ込んでみる
しかし、大して気にもとめず鳩柱刑事は言う
「・・・もしかすると、焦ったのかもしれません、何らかの弾みで、急ぐようができ、それで、酸で、殺そうとしたのかも」
「たとえば」
追いつめてみた
「・・・電話、そうです、電話をかけたとか」
「・・・そうですか・・・でもおかしくありませんか、電話というのは
風呂場に連れて行かれる前に、持っていたのでしょうか、連れて行かれてから、持ったのでしょうか」
「・・・犯人に連れて行かれそうになり、持ち、さらには、薬を飲まされ、または飲まされており、さらには、切られ、風呂につけさせられた
其れで命の危機を感じ、電話をしたところ、犯人は焦り、予定を変更して
酸をせいこさんにかけたと」
「・・そうですか」
「反論はないようですね」
「反論も正論も今の時点ではどうも」
探偵は、そう言うと、また、何かしらぶつぶつとつぶやきながら
部屋を出ていった
「すいません、変わった人で」
「いえ、うちにもにたような奴が居ます」
「其れは其れは」
私は鳩頭に、何か親近感を覚えながら
さらに詳しい事情聴取を聞いた
その時間、やはり同じように、皆にアリバイがあった
料理をしていた寒露さんも、一応つけられていたボディーガードさんが目撃しており、残りも同じだ
では、果たして誰が、犯行をしたというのか
それとも、実は、まだ犯人がこの屋敷に
そんなことを考えていたとき
私は、風呂の下に、何か紙のような物が出ているのに気が付いた
それで、あまり使う機会のない、ゴム製の手袋を手にして、其れを破れないように引っ張った
「どうしたんです」
刑事も興味深そうに、そんなことを言った
「いえ、何かあるみたいで」
私が其れを引っ張り出すと
そこには、とんでもないことが書かれていた
「みんな生きていてずるい、私の方へ来てよ、真実の一階より
さなぎこ」
其れは滲んだ字で、そう書かれていた
「これどういう事ですか」
刑事が聞く
「さあ」
私にもさっぱり分からない
たしか、さなぎこという、次女が居たはずだが、しかし、交通事故で死んだといきいている、其れは嘘だったのか
しかも、真実の一階とはいったい
わたしは、その紙を持って、急いで、探偵を捜した
部屋にいるかと思ったが、ほかに心当たりがあり、厨房に行くと
ゴキブリのごとく、肉をあさっている物を発見し
その紙を突きつける
「・・・面白いな・・・この屋敷には、色々とありそうだが、真実の一階
しかし、みた感じ、三階しかない、では、真実の一階とは・・・君は4と言う言葉に何を感じる」
「・・・死ですか」
「そうだな、4は、不幸を意味する
だから四という言葉を使わず寿としたり、その数字のみをとばすという場合もあるが四月十四日の誕生日である僕は、そんなことを言われるまで
大して気にもとめず、それどころか、何か四という数字が
特別な物に感じていた、まあ、そんなことは良い・・これは単純に
地下があると言っていいかも知れない、デパ地下だと一階とは別に
また、一から始まることがある・・と言うか始まる、僕は玩具売場しか行かないからあまり関係はないが」
「・・・一階、本当にあるか聞いてきます」
「まあ、気をつけなさい、死んだ君を僕はみたくないよ」
そこで始めてお面のような平然とした顔を脱いで、ニチャーとする
笑いを浮かべる
私は気持ち悪さに、そのゴキブリ男から離れ
そのまま、検視に立ち会っていた、主人にあいに、私は走る
その結果、そんな物は無いという
確かに、昔作られそうになったが、たいしんじょうのつごうから、そこはコンクリートで固められたそうだ、そして、確かに、さなぎこは、死んだと言った、そしてその顔に、嘘偽りはないように感じたが、本当だろうか
結局、二人分余った夕食を平らげた後、あまり食欲のない私たちの文まで平らげ、さも普通道理、と言う感じでお茶を飲んで
「では」
なんて言って、話し始めた
「残りは、後一人です、どういうお気持ちですか
満足しましたか」
そんなことを言った
其れは、果たして挑発か、それとも、ただの意地悪か
誰に言うともなく、もしかしたら独り言ともとれる声で、そんなことを言う
「君、常識がないんじゃないか」
「ほう、地下に、さなぎをいつまでも閉じこめている方が
よくじょうしきを認識されますね」
「なっ・・なに」
「馬鹿という物は、馬鹿だという認識はない
凡人は、馬鹿だという認識はあるが、馬鹿だとは認めない
天才は、馬鹿でもあるし天才だとも認めるのです
あなた、狂気を、はらんでいるにもかかわらず
ただ、平然となさっている・・奥さんはどこです」
「・・・・・・」
「あなた、奥さんを殺したでしょう、娘を連れ出そうとしたから」
「そんなことは」
「わたし、寒いのがどうも苦手でしてね、暖炉を拝見させていただきましたが・・・あれ、どうして、一階よりもしたに煙突がつながっているんです、私焼き芋をしようとして、危うく地下に落としてしまいそうでした
・・・あれ、どこに繋がっているんです」
「何のことだ」
「まだ・・・白を切るおつもりで・・・二人もあなたのせいで死んだというのに・・・いや、さん人ですか」
「どう言うことだ」
どうもくもいきがおかしい
あれほど落ちこんっで居た、普通としか言いようのない人間が
その中から別の物が、徐々にぬめりを帯びて
出てきている感じがする
わずかに、灯されているろうそくの灯りが揺れ、あたりをいっそう、くらやみやみを引き立たせた
「まだお気づきにならない」
そう言うと、探偵は、さもことなさげに
立ち上がると
口を開いた
「では、始めましょう」
それが合図のように
探偵は、気取る風もなく気取り
ただ言葉を並べだした
「あなたがどういう感性で、自分の娘に卵 幼虫 蛹 成虫それに子という次を付けて、名前にしたかはしりませんが、しかし、あなたは、その中で、蛹つまりは、さなぎこさんのみを、地下に幽閉した
そしてそれを止めようとした、妻を殺した
そして、数年後、おおくきなった娘たちは、次女のさなぎこの行方を知ることになる、そして、あなたにお願いするも、より一層、その警備は厳重となった、しかし、四人は、皆で一人、一人は皆で四人、彼女たちは
出れない、四つ後の体の一つとして、そのみを犠牲にして、一生自由になれない、蛹を、外に出そうとした
なぜなら、自分を外に出せないことはおかしいから、悲しいことは、なくさなければいけないと思ったから、そのためなら、自分など無くても良かったと思ったのでしょう
しかし、あなたは、それを拒んだ、これは推測ですが
あなた、実は、あの最初の脅迫状は、二枚だったのではありませんか
さなぎこを自由にしなければ
みたいな感じの
まあ、どちらにしても、もう二人・・・いや人」
そのとき、いきなり、主人は立ち上がった
その手には、果物ナイフが握られていた
「お・・おまえに、お前に」
それはそう続けると
いきなり、そのナイフをいきなり、自分に突き刺した
「お前なんかに、お前なんかに」
それは怒っているようだったが、声は、非常に冷静さを感じさせた
「お前なんかに、お前なんかに」
私は、ただそれをぼうぜんとみていた
「旦那様」
執事の甘露さんが、血塗れの主人を見る
しかし、その行動は止まらない
不意に、その旦那の体に、甘露さんが飛びついた
しかし、その刃を刺すことをやめなかったために
今度は、甘露さんの背中に、そのナイフが刺さる
「あ・・やっ・・やめて」
私はそう言うと、二人に飛びつこうとしたが
それを、探偵は制した、そして、向かいの席に座っていた、らんこさんの
様子がおかしいことを指で指してつたえる
その長い机、そして白いテーブルカバー
そこに顔を突っ伏して倒れている
おかっぱ頭
「あ・・何で」
「・・・もう帰ろう」
「でも、まだ・・・」
その時、後ろで倒れる音がした
甘露さんの手には、血塗られたナイフ
そして、もう片方の腕で、旦那を支えていた
「我々にできることはもう無いよ」
「そんな・・何しにここに」
「我々は、何もできない、いや、しちゃいけない、無益なピエロにも似た道化なのだよ」
「・・・・馬鹿」
「ははは・・」
かくして、後は、すべてを任せて
その屋敷を後にした
後にわかったことだが
口もしゃべれず
耳も聞こえず
足も腕もなく
肝臓もあまり動かない少女が地下で発見されたという
それが、天性のものか、後に誰かが施したのかは
分からないと言う




