後編
それからなんやかんやで旅をつづけ、他国の精鋭と出会って一緒にあちらこちらに散っているリーダー格のモンスターを潰して回り、統率を持った魔物の軍隊を無秩序な魔物の群れにしていったり、順調に旅を進ましたわ。
そして成長してたどりついたのは魔王城という名の天然要塞。少数精鋭の利を生かし、囮をあちこちに仕掛け、手薄のところを見計らい、隠密魔法をかけて一気に突撃、あちらこちらに魔物が配置されているが、人間みたいに知恵が回らないので、問題なし。魔物や罠をかいくぐり、魔王の間に消耗最低限で到着。
それで、ついに魔王戦。結論から言うとあっさり倒せました。
馬鹿正直に一から戦う必要もないので、魔王の間に入る直前俺とヘレナちゃんの補助魔法バカスカかけて、扉を開けた瞬間、なんかでかい豚のようなカバのような不細工な顔と体型した王冠つけた二足歩行の摩訶不思議な生き物、つまり魔王発見。何か行動しようとうるする前に問答無用で勇者ビームことブレイブレーザーを打ち込みクリーンヒット。
「がはぁ」とひるんだすきに賢者君の予め唱えた威力極大・範囲極小の大魔法をどーん
「ぎゃぁ」と悶絶している間にヘレナちゃんの超浄化魔法を照射
「ぐふぅ」とさらにひるんだすきにクレアーヌさんが急所に渾身の必殺奥義
「げはぁ」とずたぼろなところをさらに急所に究極奥義勇者スラッシュでどん、
「ごふぅ」と倒れこんだところに、でかい口にヒドラの毒の塊をねじりこみ、伝説の剣を急所にさくっと挿入してブレイブレーザーの術を、剣を通してひたすらに流し込む。そして体勢を立て直したクレアーヌさんも奥義をさらに追加、ヘレナちゃんはバフ・デバフの連続詠唱、賢者君は回復アイテムを僕らに連続投与。
不意打ちフルボッコこと名称勇者ジェットストリームアタック作戦がまぁ、すべてクリティカルヒットという大成功。卑怯?何を言います。立派な作戦です。
最強の魔王さんはその力を少しも見せることなく「おぉぉぉおおっぉぉぉ!」という断末魔と共に昇天。ふっ、しょせんは畜生の親玉。人間様の知恵に適うべくもありませんわ。つーか、なんだよこいつ。外見すら間抜けジャン。どうせ腕ぶんぶん振り回して、火を吐くくらいしか能がないに違いないですわ。がっはははは!「ふぇぇ、この魔王、強力な即死や猛毒、疾病を操る魔法使えたみたいですよ!?」「魔王の武器、これは武器一振りで鋼ですら断ち切る斬撃を飛ばす最高級の魔剣だぞ!?」「この魔王の書・・・まさかモンスターがこれほどの戦略を!?」・・・背後で何か聞こえるが、いや、本当に無事に勝てて良かったわぁ。
とにかく魔王がやられたせいか魔物もわたわたと急に落ち着きが無くなり、無事に脱出することができました。
で、1年程に及ぶ旅を終えて、王都に、城に帰還して王様以下重鎮一同勢揃いの中、報告。どうやら魔王を倒したことで魔物の凶暴、大量発生は抑えられ、当面の危機は治まったようだが、近くの村や小さな国は被害も大きく、今後はその対応に大わらわらしい。俺が魔王倒さなかったら、もっと被害大きくなっていたのか、そう考えると俺の行動が人の役に立ったってことなのか。ちょっと感動。
そういえばと、魔王を倒したときに出てきて、こっそり持ち帰った拳大のキラキラ虹色に光る石をお土産で渡したら、全員が目を真ん丸くして驚きました。なんでもこれは魔力が超圧縮された魔宝石という激レアアイテムで魔物からしかでない石なんだって。だが、滅多に出ない上、出ても指先ほどの大きさが精々でこれほどの大きさになるともう前代未聞。国宝級で価値すらつけられないそう。世界最高の宝石としての価値もすごいが、内包された魔力も凄まじく、仕組みはよくわからんが、うまく使えば数十年は国が繁栄する動力源にもなるそうです。おおはしゃぎの王様以下みんな大喜びで大宴会ですよ。
騒いで終わった後の夜、大広間から離れたバルコニーで涼んでいると、フェリシア様がやってきました。
うっとりした顔で「ああ!タケオ様!ようやく二人きりですね!あぁぁん!」となんか感極まった感じで抱き着いてきました。うぉう。なんか胸が大きくなっとる!?
「あふぅ、久しぶりですぅ。あぁ♪タケオ様、前よりずっと素敵になってますぅ」
と恍惚な顔で高速スリスリしてくるフェリシア様。そう、今の俺の体は長旅でマッチョな体形になっています。体型的な問題なのか、体は固太りで、顔もほとんど変わらず、総じてちょっと硬めな不細工オークの様な容姿なのだが、フェリシア様からすれば身悶えするほどの格好よさみたい。そんなフェリシア様に俺は関係を持った仲間2人のことを勇気だして伝えました。
そうしたら
「・・・・・・」
はい、やばい。さっきまでの幸せそうな顔から一転、陰鬱な顔で沈黙です。さすがに王族の人と付き合いながら浮気はまずいかったんや!と思いましたが、勢いついでに「だから3人同時に結婚したいなー」と我ながらクズなことを言っちゃいました。
すると
「本当に私と結婚を!?私のことがお嫌いになったのではないのですね!」
ときゃっほーいと言わんばかりの満面の笑顔でずれた回答。
一応「え?3人同時に結婚いいの?」と聞いたら「もちろんです!」とのこと。どうやら、2人がいるから自分が捨てられたと思って不安になっていたらしい。うーん、ネガティブ。まぁ、今までの経験からすれば仕方ないのかな。
ちなみに翌日顔合わせした3名は実の姉妹のようにあっという間に和気藹藹と仲良くしていました。修羅場になって、大惨事になるかと思ったけどよかったよかった。
数日たって疲れが完全に抜けた後、王様に3人と結婚するよと言いにいったら、その前に魔法使いのおじいさんから「元の世界に帰る方法準備しましたぞー・・・さすがに10年かかる術式をこの短期間で仕上げるのは老骨に響きましたわい」とちょっとやつれたけど笑顔で報告が。あっそういや、そんなお願いしていましたね。
見るとさっきまで期待と喜びいっぱいの顔の3人が一転絶望と恐怖の表情をしてカタカタ震え、真っ青な顔で俺を見ています。
「これは夢よ。タケオ様と私はこれから添い遂げてずっと幸せな暮らしを始めるの」
「やはり、私のようなものが幸せを望んではだめなのか。もう生きている理由もないな」
「嘘嘘嘘・・・彼がいない世界なんてもう意味も理由も必要も無いじゃない」
眼のハイライトが消え、ぶつぶつ言い始めた3人。ん?なんかやばくない?
そのうち、誰かが「あっ、魔法長なんとかすればいいんじゃ・・・」とか言い出した。3人にうっすらと殺意が宿る。まずい、おじいちゃんが大ピンチ。
あわてて俺はこの世界に残って、王様にこの3人と結婚して静かに暮らしたいと伝えました。少し未練があったから黙ってたけど、元からそのつもりだったし。もちろん3人は一転して涙を浮かべて大歓喜。
「え?本当にあの娘達でいいの?その顔で勇者ならより取り見取りなのに?本当に?」
王様びっくりしたけど、二つ返事でOK!娘のことなのに軽い!と思ったが、
「よかったわね!フェリシア!こんな素敵な殿方と!」
「ついに妹に引き取り手が!?しかもこんなハンサムな勇者なんて最高じゃない!」
「うっうっ、あのフェリシアがお嫁に来る日が来るなんて母は感動です!」
王様だけじゃなく同席していた王妃様やお姉さんたちも一切の反対なく一族揃って大賛成。もはや障害なし。ただ・・・。
「あれから寝る間も惜しんで、魔力必死につぎ込んで帰還の魔法復活させたんじゃがの・・・」
魔法長のおじいさんだけがげっそりした顔でものすごくしょんぼりしてる。ごめんね。でも命助けたから許してください。
それからもらった大金で町はずれに家を建て、フェリシア、クレアーヌさん、ヘレナちゃんの美人(俺基準)3人と末永く仲良く暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
といけばよかったのだが、厄介ごとは終わらない。
魔王倒したよーと一応聖王国に挨拶に行ったら、聖王国のお偉いさんたちが「全ての勇者は神に選ばれし聖王国の存在である。故に勇者の手柄と魔宝石は聖王国のもの」とかジャイ○ンのような馬鹿なこと言い、「故にこれから聖王国の人間となって国に尽くし働くように」とか異次元の会話をするので、我慢の限界。会話を切って帰ろうとすると、いきなり国一番の美姫とかいう、ゴブリンとオークのハーフみたいな女性が現れて、「ほほほ、この美しい妾がこれから可愛がってあげるわ。光栄に思いなさぁい」と偉そうな言動するので「やなこった」と刹那に振って、帰ってもめにもめたり・・・
醜いという理由でひどい扱いされていた衰弱した美少女奴隷ちゃんを思わず衝動買いして、世話をしたら懐かれたり・・・
夫の策略で家と財産を奪われ無実の罪で追放された、親友の賢者ヨハン君の嫁の妹である爆乳美人貴族さんに出会い、冤罪晴らして解決して、惚れられたり・・・
王家の依頼で禁断の魔法の代償で超絶不細工(俺視点で超絶美女)となった賞金首の森の魔女と出会い、懐かれ。さらに家族がふえるのだが、まぁ、それは別の話である。