表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
95/98

第95話 違う道


 静かだった。


 


 


 ついさっきまで戦っていたとは思えないほど。


 


 


 


 広場には瓦礫(がれき)が散らばっている。


 


 


 


 壊れた家。


 


 


 


 砕けた石畳(いしだたみ)


 


 


 


 傷ついた村人達。


 


 


 


「そっち運べ!」


 


 


 


 ダビデが声を上げる。


 


 


 


「まだ怪我人がいるぞ!」


 


 


 


 ドロスも走り回っていた。


 


 


 


「こっちは終わった!」


 


 


 


 シャルルが瓦礫をどかしながら叫ぶ。


 


 


 


 ワイルドカード達も復旧を手伝っていた。


 


 


 


「こっちは大丈夫ッス!」


 


 


 


 マキが村人を支えながら声を上げる。


 


 


 


「怪我人はこっちネ!」


 


 


 


 ミカも走り回っていた。


 


 


 


 ユナは怪我人に回復魔法をかけている。


 


 


 


 ブエルは倒した。


 


 


 


 だが。


 


 


 


 失われたものは戻らない。


 


 


 


「……」


 


 


 


 ヒロは広場を見回した。


 


 


 


 その時。


 


 


 


「おい」


 


 


 


 ラナだった。


 


 


 


 ヒロが振り向く。


 


 


 


「何だ」


 


 


 


「一つ聞いていいか」


 


 


 


 ラナは少しだけ迷った。


 


 


 


 そして。


 


 


 


「お前ら」


 


 


 


「魔王様を倒しに行くのか?」


 


 


 


 周囲が静かになる。


 


 


 


 村人達も聞いていた。


 


 


 


 当然だ。


 


 


 


 彼らにとって。


 


 


 


 魔王は王。


 


 


 


 守るべき存在。


 


 


 


 ヒロは少し考えた。


 


 


 


 そして。


 


 


 


「……違う」


 


 


 


 ラナが目を瞬かせる。


 


 


 


「違う?」


 


 


 


「倒したいわけじゃない」


 


 


 


 静かな声だった。


 


 


 


「なら何故向かう」


 


 


 


 今度はジュリアスだった。


 


 


 


 腕を組み。


 


 


 


 真っ直ぐヒロを見る。


 


 


 


 ヒロは空を見る。


 


 


 


 黒い夜空。


 


 


 


 遠く。


 


 


 


 魔王城。


 


 


 


「分からない」


 


 


 


 正直な言葉。


 


 


 


「でも」


 


 


 


「このままは駄目だと思う」


 


 


 


 黒箱。


 


 


 


 消えた村人達。


 


 


 


 ブエル。


 


 


 


 メフィスト。


 


 


 


 全部がおかしい。


 


 


 


「だから行く」


 


 


 


 短い言葉。


 


 


 


 だが。


 


 


 


 迷いはなかった。


 


 


 


 ラナは少し黙った。


 


 


 


 やがて。


 


 


 


「変な奴だな」


 


 


 


 小さく笑う。


 


 


 


「でも」


 


 


 


「倒さないってんなら少し安心した」


 


 


 


 その言葉に。


 


 


 


 周囲の空気が少しだけ緩んだ。


 


 


 


 


 夜。


 


 


 


 


 村の広場。


 


 


 


 


 焚き火。


 


 


 


 


 ヒロ達は火を囲んでいた。


 


 


 


「今日は疲れたネ……」


 


 


 


 ミカが珍しく肩を落とす。


 


 


 


「さすがに疲れたッス……」


 


 


 


 マキも地面へ寝転んだ。


 


 


 


「最近の敵、おかしくないッスか?」


 


 


 


 ぽつり。


 


 


 


「ブエルもそうッスけど」


 


 


 


「メフィストとか」


 


 


 


「なんか別方向に怖いんスよ」


 


 


 


 誰も否定しなかった。


 


 


 


「魔王城に近づくほど異常は増えてる」


 


 


 


 ユナが静かに言う。


 


 


 


 そして。


 


 


 


 少しだけ視線を落とした。


 


 


 


「本当に行くの?」


 


 


 


 ヒロが見る。


 


 


 


「他に方法があるかもしれない」


 


 


 


「無理に危険な方へ行かなくても」


 


 


 


 心配しているのは分かった。


 


 


 


 ユナらしい。


 


 


 


「……かもな」


 


 


 


 ヒロが苦笑する。


 


 


 


「でも最近」


 


 


 


「何か思い出しそうなんだ」


 


 


 


「思い出す?」


 


 


 


 ユナが首を(かし)げる。


 


 


 


「何なのかは分からねぇ」


 


 


 


「でも」


 


 


 


「魔王と話せば」


 


 


 


「何か分かる気がする」


 


 


 


「だから行く」


 


 


 


 ユナはしばらく黙っていた。


 


 


 


 やがて。


 


 


 


 小さく息を吐く。


 


 


 


「そう言うと思った」


 


 


 


「アンタ無茶するネ」


 


 


 


 ミカが呆れたように言った。


 


 


 


「勝手に死んだら許さないネ」


 


 


 


「それマジでそうッス」


 


 


 


 マキも頷く。


 


 


 


「最近見てて怖いッスからね」


 


 


 


「お前らなぁ……」


 


 


 


 ヒロが苦笑した。


 


 


 


 だが。


 


 


 


 少しだけ。


 


 


 


 気持ちは軽くなった。


 


 


 


 


 深夜。


 


 


 


 


 皆が眠った後。


 


 


 


 


 ヒロは一人。


 


 


 


 


 広場の端に座っていた。


 


 


 


 


 隣にはエバ。


 


 


 


 


 風が吹く。


 


 


 


 


 遠く。


 


 


 


 


 魔王城が見える。


 


 


 


 


「……近い」


 


 


 


 


 エバが呟いた。


 


 


 


 


「何がだ?」


 


 


 


 


 ヒロが聞く。


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 エバは答えなかった。


 


 


 


 


 ただ。


 


 


 


 


 じっと。


 


 


 


 


 魔王城を見続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ