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第8話 少しの成長


 森の中は、いつも通り静かだった。


 


 けれど。


 


 ヒロの足取りは、どこか軽かった。


 


「……なんか、調子いいな」


 


 軽く手を握ったり開いたりする。


 


 体の動きが、妙にしっくりくる。


 


 


(悪くないな)


 


 


「ヒロ」


 


「ん?」


 


「今日は、無理しないでね」


 


 ユナの声は、いつもより少しだけ強かった。


 


「してないって」


 


 ヒロは笑う。


 


「むしろ、余裕あるくらいだし」


 


「……そう」


 


 ユナは小さく頷く。


 


 けれど、その視線はヒロから離れなかった。


 


 


 草むらが揺れる。


 


「来るな」


 


 ヒロは自然に前へ出た。


 


 ユナを庇う位置。


 


 それが当たり前のように。


 


 


 現れたのは、中型の魔物。


 


 昨日ほどではないが、それなりに強そうだ。


 


 


「これくらいなら、ちょうどいいな」


 


 


「ヒロ、気をつけて」


 


「ああ」


 


 


 魔物が飛びかかってくる。


 


 ヒロは横に動く。


 


 ——その瞬間。


 


 体が、少しだけ()()動いた。


 


 


「……っ」


 


 


(今の……)


 


 


 距離が、一気に詰まる。


 


 


 そのまま、剣を振るう。


 


 


 魔物が大きくよろめく。


 


 


「……今の」


 


 


 ヒロは一瞬だけ眉をひそめた。


 


 


 さっきの動き。


 


 


 ()()()というより——


 


 


 そうなった感覚。


 


 


(まあ、当たったしいいか)


 


 


「ヒロ!」


 


 


 ユナの声。


 


 


 次の瞬間、別の魔物が横から飛び出してきた。


 


 


「っと」


 


 


 反射的に体をひねる。


 


 


 その動きも、どこか自然すぎた。


 


 


 ——いや。


 


 


 どこかで見たような動きだった。


 


 


(……なんだ、これ)


 


 


 考えるより先に、体が動く。


 


 


 さっき受けた攻撃。


 


 


 その軌道を、なぞるように——


 


 


 剣が振り抜かれる。


 


 


 同じ角度。


 


 同じ速さ。


 


 


 魔物の体が、大きく弾けた。


 


 


「……え?」


 


 


 ヒロは思わず声を漏らした。


 


 


 今のは、自分の動きじゃない。


 


 


 ——いや。


 


 


 自分でやったのは間違いない。


 


 


 けれど。


 


 


(……まあ、倒せてるしな)


 


 


「ヒロ!!」


 


 


 ユナが駆け寄ってくる。


 


 


「大丈夫!?」


 


 


「いや……大丈夫だけど」


 


 


 ヒロは首をかしげる。


 


 


「今の、ちょっと変だったな」


 


 


「……変?」


 


 


 ユナの目が、一瞬だけ鋭くなる。


 


 


「なんていうか……」


 


 


 言葉を探す。


 


 


「うまく言えないけど」


 


 


 少し考えて、肩をすくめた。


 


 


「まあいいか」


 


 


「……」


 


 


 ユナは何も言わなかった。


 


 


 ただ。


 


 


 ヒロのことを、じっと見ていた。


 


 


 


 戦闘が終わる。


 


 


 魔物はすべて倒れていた。


 


 


「……なんか、普通にいけたな」


 


 


 ヒロは軽く息を吐く。


 


 


「昨日より、明らかに楽だ」


 


 


(やっぱり、調子いいな)


 


 


「……うん」


 


 


 ユナは小さく頷く。


 


 


 その手が、ヒロの袖を軽く掴んでいた。


 


 


「ヒロ」


 


 


「ん?」


 


 


「本当に、大丈夫?」


 


 


 その声は、少しだけ低かった。


 


 


「大丈夫だって」


 


 


 ヒロは笑う。


 


 


「なんか、いい感じだしな」


 


 


「……そう」


 


 


 ユナはゆっくりと頷く。


 


 


 けれど。


 


 


 その指先には、わずかに力が入っていた。


 


 


 


 ヒロは気づいていなかった。


 


 


 自分の動きが——


 


 


 ——どこか、引っかかる感覚だけが残っていた。

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