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第73話 適応


 ——ゴォッ!!


 


 風がぶつかる。


 


 


 霧が吹き飛ぶ。


 


 


 視界が開ける。


 


 


 


 そして。


 


 


 


 初めて。


 


 


 


 フォカロールの姿が完全に見えた。


 


 


 


 


「……見えた」


 


 


 


 ヒロが静かに呟く。


 


 


 


 


 ローブ。


 


 


 


 細い身体。


 


 


 


 だが。


 


 


 


 周囲の空気そのものが歪んでいる。


 


 


 


 


「ようやくネ」


 


 


 


 ミカが微笑(ほほえ)む。


 


 


 


 


「なら行けるヨ!」


 


 


 


 


 フォカロールの周囲。


 


 


 


 


 風が(うな)る。


 


 


 


 


 次の瞬間。


 


 


 


 


 ——ヒュンッ!!


 


 


 


 


 連続。


 


 


 


 


 無数の風刃(ふうじん)


 


 


 


 


「っ……!」


 


 


 


 


 ヒロが前へ出る。


 


 


 


 


 考えない。


 


 


 


 


 ただ感じる。


 


 


 


 


 流れ。


 


 


 


 


 殺意。


 


 


 


 


 来る場所。


 


 


 


 


 手を払う。


 


 


 


 


 ——ヒュォッ!!


 


 


 


 


 風。


 


 


 


 


 相殺(そうさい)


 


 


 


 


 さらに。


 


 


 


 


 避ける。


 


 


 


 


 裂く。


 


 


 


 


 逸らす。


 


 


 


 


「マジっスか……」


 


 


 


 


 マキが息を呑む。


 


 


 


 


「対応してるッス……!」


 


 


 


 


「……何故だ」


 


 


 


 


 あらためて。


 


 


 


 


 フォカロールが声を漏らした。


 


 


 


 


「何故、適応する」


 


 


 


 


「そんなこと、俺にも分からねえよ!」


 


 


 


 


 ヒロが叫び返す。


 


 


 


 


「俺自身、何でかなんて分かってねえ!」


 


 


 


 


「でも——!」


 


 


 


 


 踏み込む。


 


 


 


 


「お前の風は、もう見えてる!」


 


 


 


 


 その瞬間。


 


 


 


 


 フォカロールの空気が変わる。


 


 


 


 


 巨大な風圧。


 


 


 


 


 周囲の木々が裂ける。


 


 


 


 


「来るヨ!」


 


 


 


 


 ミカが叫ぶ。


 


 


 


 


 今までで最大。


 


 


 


 


 明確な殺意。


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 ヒロは止まらない。


 


 


 


 


 風を払う。


 


 


 


 


 裂く。


 


 


 


 


 押し返す。


 


 


 


 


 そして。


 


 


 


 


 一瞬。


 


 


 


 


 フォカロールの動きが止まった。


 


 


 


 


「今ネ!」


 


 


 


 


 ミカが踏み込む。


 


 


 


 


 爪。


 


 


 


 


 回転。


 


 


 


 


 さらに加速。


 


 


 


 


 血が舞う。


 


 


 


 


 腕が(きし)む。


 


 


 


 


 それでも止めない。


 


 


 


 


「スパイラルドライブ!!」


 


 


 


 


 一直線。


 


 


 


 


 フォカロールへ。


 


 


 


 


 風刃が走る。


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 ヒロの風が裂く。


 


 


 


 


 一瞬だけ道が開く。


 


 


 


 


 そこへ。


 


 


 


 


 螺旋(らせん)が突き刺さる。


 


 


 


 


「ガァァァァァッ!!」


 


 


 


 


 初めて。










 フォカロールが絶叫した。


 


 


 


 


 だが——倒れない。









 胸部。


 


 


 


 


 深く(えぐ)れる。


 


 


 


 


 空気が乱れる。


 


 


 


 


 風が暴走する。


 


 


 


 


「終わりネ!」


 


 


 


 


 ミカがさらに回転を上げる。


 


 


 


 


 ヒビ。


 


 


 


 


 爪が軋む。


 


 


 


 


 それでも。


 


 


 


 


 押し込む。


 


 


 


 


「あり得ん……!」


 


 


 


 


 フォカロールが叫ぶ。


 


 


 


 


「何故、貴様は——」


 


 


 


 


「そんなこと、知るか!」


 


 


 


 


 ヒロが叫び返す。


 


 


 


 


「でも——」


 


 


 


 


「仲間が危ないなら!」









「身体くらい勝手に動くだろ!」


 


 


 


 


 その瞬間。


 


 


 


 


 風が裂けた。


 


 


 


 


 螺旋が貫く。


 


 


 


 


 フォカロールの身体が崩れる。


 


 


 


 


 霧散(むさん)


 


 


 


 


 静寂。


 


 


 


 


「……勝った?」


 


 


 


 


 マキが呆然と呟く。


 


 


 


 


「……みたいネ」


 


 


 


 


 ミカが息を吐く。


 


 


 


 


 その瞬間だった。


 


 


 


 


 ——ズシン。


 


 


 


 


 地面が揺れる。


 


 


 


 


「……っ」


 


 


 


 


 ヒロの表情が変わる。


 


 


 


 


 この圧。


 


 


 


 


 忘れるはずがない。


 


 


 


 


「ははっ」


 


 


 


 


 笑い声。


 


 


 


 


 霧の奥。


 


 


 


 


 巨大な影。


 


 


 


 


 鎧。


 


 


 


 


 二本の剣。


 


 


 


 


 そして。


 


 


 


 


 楽しそうに歪む口元。


 


 


 


 


「よォ」


 


 


 


 


 モラクスが笑う。


 


 


 


 


「強くなってるじゃねェか」


 


 


 


 


 一歩。


 


 


 


 


 踏み出す。


 


 


 


 


 その瞬間。


 


 


 


 


 全員の身体が重くなる。


 


 


 


 


「っ……!」


 


 


 


 


 マキが息を呑む。


 


 


 


 


 ユナのフィールドが軋む。


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 モラクスは楽しそうだった。


 


 


 


 


「いいねェ」


 


 


 


 


「さっきの魔法」


 


 


 


 


「アレ、お前だろ?」


 


 


 


 


 ヒロを見る。


 


 


 


 


 まるで玩具(おもちゃ)を見つけた子供みたいに。


 


 


 


 


「……何しに来た」


 


 


 


 


 ヒロが(にら)む。


 


 


 


 


「決まってんだろ」


 


 


 


 


 モラクスが笑う。


 


 


 


 


「遊びに来た」

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