第45話 準備
夕方。
拠点に戻る。
「……はぁ」
ミカがベッドに倒れ込む。
「疲れたネ」
「まだ何も終わってねえぞ」
ヒロは椅子に腰掛ける。
静かに息を吐く。
(……整理するか)
「まず、あの森」
ヒロが口を開く。
「視界が効かない」
「距離も狂う」
「罠は即死系」
「しかも固定じゃない」
「うん」
ユナが頷く。
「あと……重くなる」
「動き、鈍る感じ」
「デバフだな」
ヒロが軽く肩を回す。
「俺には効かないけど」
「ずるいネ」
ミカが笑う。
「ほんとそれ」
ユナが小さく同意する。
「でも助かってる」
「前に出るのはヒロでいい」
「……だな」
ヒロは頷く。
(タンク役、か)
自然に納得する。
「問題は——」
一拍置く。
「ケルベロスだ」
「硬い、速い、数は一体」
「でも——」
「トラップとセットで来る」
「……うん」
ユナが少しだけ顔を曇らせる。
「単体なら……なんとかなる」
「でもあれ……同時はきつい」
「だろうな」
ヒロも同意する。
「なら対策はシンプルだ」
「分ける」
「分けるネ?」
「トラップと魔物」
「同時に相手しない」
「……どうやって?」
ユナが聞く。
「誘導する」
ヒロは即答した。
「俺が前に出る」
「ミカは距離取って火力」
「ユナは位置と防御」
「トラップの範囲外に引っ張る」
「……できるかな」
「やるしかない」
ヒロは軽く笑う。
「どうせ避け続けるより楽だ」
「前向きネ」
ミカが楽しそうに言う。
そのとき。
「——あの」
扉の方から声。
振り向く。
そこにいたのは——マキだった。
「……何してんだお前」
「いやぁ、その……」
マキが頭をかく。
「置いてかれたッス」
「……は?」
「先輩たち、どっか行っちゃって」
「で、気づいたらヒロさん達のとこかなーって」
「軽いな」
「軽くないッスよ!?」
少しだけ慌てる。
そして——
ちらっとユナを見る。
すっと近づく。
小声で。
「……大丈夫ッス」
「邪魔しないッスから」
「むしろ応援するッスよ」
「……え?」
ユナが一瞬固まる。
「……な、何の話?」
「分かってるッス」
にやっと笑う。
「分かってないなら言わないッス」
「……」
ユナの顔が少し赤くなる。
「……何言ってんだこいつ」
ヒロが呟く。
「面白いネ」
ミカが楽しそうに笑う。
「で」
ヒロがマキを見る。
「何しに来た」
「一緒に行くッス」
即答だった。
「……は?」
「さっきの森ッスよね?」
「危ないのは分かってるッス」
「でも——」
一歩、前に出る。
「役に立つッス」
「……」
ヒロは少しだけ考える。
戦力。
リスク。
バランス。
「……ユナ」
「どう思う」
「……」
ユナは少しだけ考えて。
「……悪くない」
「後ろのサポート、増える」
「……ミカ」
「面白そうネ」
「……だろうな」
ヒロは立ち上がる。
「いいぞ」
「ただし——」
「勝手な動きはするな」
「了解ッス!」
マキが元気よく答える。
そのとき。
ヒロはふと窓の外を見る。
暗くなり始めた空。
その端。
一瞬だけ。
影が動いた気がした。
「……」
目を細める。
だが——
何もいない。
「……気のせいか」
小さく呟く。
(……見られてる感じがするな)
理由は分からない。
けれど——
確実に、何かがいる。
「明日、行く」
ヒロが言う。
「準備して寝よう」
「了解ネ」
「うん」
「了解ッス!」
それぞれが動き出す。
次は——
突破するために。




