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第12話 中古城物件、不動産アプリで検索します!?

建国資金を手にしたユータ。

最初に必要なのはやっぱり「城」――でも、セリアが持ち出したのはまさかの“不動産アプリ”!?

カイの乙女趣味まで炸裂して、波乱の城探しが始まります。

冥帝からの使いが去り、重々しい空気の残る円卓の間。

だが新たに「国を築け」と告げられたユータは、頭を抱えていた。

魔王になった――とはいえ。


 さらに先ほど、冥帝からの追加連絡があった。

 「建国資金として、3百万ディナールを下賜する」――と。


(さんびゃくまんディナール……って、多いの? 少ないの? 円換算するといくらくらい?)

 具体的な金銭感覚がわからず、ユータの脳内はますますフリーズしていく。


(……国づくりって、どこから始めればいいの? 道路? 学校? 病院? いや、まずは城? でもその前に役所的なやつ?)


 頭を抱えてぐるぐる悩んでいると、隣のカイが低い声で口を開いた。

「基盤を整えるのが先だ。水源、交通、治安……」


「わ、分かってるけど! でもさ、やっぱり“城”がないと国っぽくならないじゃん!?」

「……お前はやっぱり、そう言うと思った」


 隣のカイは腕を組み、黙って頷く。

 ユータは机に突っ伏した。


 建築士として図面を引くのは慣れているが、“国全体”となるとスケールが違いすぎる。

「城を作るにもどこから手をつけたらいいんだろう。土地? それとも設計図?」

「城を一から建てるのは膨大な労力だな」カイが低く答える。


 そこへ、セリアが静かに手を上げた。

「ユータ。築城には莫大な費用と時間がかかります。初代魔王としての財政基盤が安定するまで――中古の空き城を利用するのが得策かと」


「……中古の城?」


「はい」

 セリアは懐から黒い水晶板を取り出した。魔族式の情報端末らしい。

透明な魔法陣が宙に浮かび、そこに城の一覧が次々と映し出される。


「なにこれ……完全に不動産アプリだ!」

首をかしげるカイをよそに、ユータは画面に釘付けになった。

「わぁ……ほんとに物件検索みたい……」

「ささ、見て見て!」

 エクレオが乗り出してくる。


候補①:断崖絶壁スカイキャッスル(価格:2,500,000ディナール)

 切り立った崖に張り付くように建つ要塞。

「防衛は完璧です。攻め込まれる心配はまずない」セリアが冷静に推す。

「でも買い物行くだけで命がけだよ!? 宅配サービスとか無いんだからね!?」ユータが全力却下。

「……まあ確かに、帰宅途中で転落死は嫌だな」カイが淡々と同意した。


候補②:プリンセス・ローズキャッスル(価格:6,000,000ディナール)

 外壁はピンク色、塔にはハートのステンドグラス。噴水からは常に花びらが舞い、家具は全部リボンとフリル。まさに「姫の夢」が凝縮された城だった。


「……これは、乙女趣味全開ですね」セリアが冷ややかに言う。

「うわぁ! 目がチカチカする! ここに住んだら脳がフリルに支配されるよ!」ユータが即却下。


 だが――横でカイの瞳が妙に輝いていた。


「……見ろ。あのカーテンの薔薇の刺繍、一輪ごとに糸色が違う。職人のこだわりだ」

「刺繍!? そっち!?」ユータは両手で顔を覆った。


「椅子も素晴らしい。背もたれに詩が刻まれている。“愛は月下の雫に似て”……」

カイは小声で読み上げ、うっとりと目を細めた。


「はい出た、ポエム鑑賞モード! 知ってるよ僕、カイん家の本棚に詩集ずらーっと並んでたもん!」

ユータが全力で突っ込むと、セリアは呆れたように眼鏡を押し上げる。


「美しいものは……心を潤す」カイが真顔で言うと、

「……予算オーバーも甚だしいので却下です」セリアはぴしゃり。

「だが、視察ぐらいなら――」カイがぼそりと呟いた瞬間、セリアの声が食い気味に飛ぶ。

「却下です!」


ユータは苦笑しつつ、カイの横顔をちらりと見た。

「……ごめん、カイ。さすがに6百万ディナールは無理だよ。でも……」


言葉を濁しながらも、心の奥では強く誓っていた。

(絶対にカイの好きな“可愛いもの”も、僕の城に取り入れてみせる。薔薇の刺繍でも、詩の彫刻でも……どんな形でだって)


ユータはそっと拳を握りしめた。


候補③:迷宮キャッスル(価格:1,200,000ディナール)

 内部が複雑すぎて、住人が迷子になる設計。

「防犯性抜群。侵入者は確実に迷います」セリアは真顔で推す。

「いや、俺らも毎日が脱出ゲームじゃん!」ユータが両手で頭を抱えた。

「それに、住人が行方不明になるたびに捜索隊出すのもコストだぞ」カイの冷静すぎる補足に、ユータはさらにぐったりした。


候補④:王都近郊モデルキャッスル(価格:3,200,000ディナール)

 前魔王が滅びた後の空き家。築浅、立地最高。

「これなら即入居可能だな」カイが頷く。

「予算は少しオーバーですが、ルシアス様には私から援助の話しを通せます。」セリアも推奨。

「……でも、なんか無難すぎない?」ユータは浮かない顔。

「普通は無難を選ぶもんだ」カイが低く返すが、ユータの胸はどうにもざわついていた。


 次々と物件を見せられる中で、ユータの視線がふと止まった。


 それは、地図の片隅にぽつんと表示された、候補X:苔むした古代城。(価格:1,800,000ディナール)


「……なにこの城」


 石造りの壁は崩れ、天井には大きな亀裂。

 普通に考えれば「完全に廃墟」でしかない。

 だが、図面を見るユータの目は、逆に輝いていた。


「基礎構造が面白い……換気と排水のラインが今の設計より効率的だし、再利用できる部分が多い」

「いや、普通そういう見方しないからな?」カイが呆れ顔。

「しかも安いからって飛びつく物件じゃないだろ」


 それでもユータはきっぱりと言った。

「ここ、選びたい」


 即答するユータに、セリアが眼鏡を押し上げた。

「……予算的には問題ありませんが、不便な立地です。なぜそこを?」


「うまく言えないけど……惹かれるんだ。再設計すれば、絶対すごい城になる」


 カイは一瞬だけユータを見つめ、ふっと目を細めた。

「……本当にお前は変わってる」


「変わってるって……まあ、建築士だからさ」ユータは照れくさそうに笑った。


 するとエクレオがぱんと手を叩く。

「よし決まり! じゃあもう今から行っちゃいましょうよ! 現地見学は基本ッス!」


「は? そんな軽いノリで……」セリアが呆れたように眉をひそめる。

だが、ユータの胸はすでに高鳴っていた。


「……行こう。実際に見てみたい」


 ユータがそう言うと、カイも短く頷いた。

「お前が決めたなら、俺はついていく」


 胸の奥に熱いものを抱えながら、ユータは立ち上がる。

(……ここから始めるんだ。僕たちの国を)


 ユータとカイの視線が合い、ふたりは小さく笑い合った。

そして席を立つユータの背中を、セリアもエクレオもそれぞれ違う表情で見送る。


──次なる舞台は、苔むした古代城へ。


──つづく。

ユータが選んだのは、地図の片隅にあった廃墟の古代城。

果たしてここが、新たな魔王国の始まりとなるのか――。

次回はいよいよ現地視察! 苔むした古代城で何が待つのか、ご期待ください。

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