表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/40

第8話 双耀の道を行く者

最終試練――勝った者こそがカイの伴侶として認められる。

黄金の道は、愛する者と共に生きる未来。

蒼の道は、力を得て国を救う未来。

ミラは即断で一つを選び、ユータは迷い抜いた末に、誰も知らない“第三の道”を切り拓く――。

 クラヴィスの低く響く声が、大広間を満たした。

「第二の試練はここまでだ……次は、最終試練」


 その言葉を合図に、天井の燭火が揺らぎ、魂の灯珠が強く脈動する。

 床の中央に浮かび上がるのは、これまでとは異なる、光の糸を複雑に編んだ転移陣。近づくほどに胸の奥を握られるような圧迫感が増していく。


 その時――大広間全体に、性別も年齢も感じさせない澄んだ声が響き渡った。

『これまでの試練は、力や才覚を見るにすぎぬ。

 しかし、最終試練で勝った者こそが、カイの伴侶として認められる』


 観覧席がざわめき、ユータは小さく息を呑む。

(……つまり、この一戦で全てが決まるってことか)


「“魂誓”の儀の核心だ」

 クラヴィスの言葉に、隣でミラが意味ありげに笑む。

「最後は、飾りや言葉じゃ通らない。本当に何を守るか……魂に突きつけられるの」

 右のセーラが「ドキドキするわね〜♡」、左のグランマは「泣き言を言う暇もなく終わる」と笑う。


 クラヴィスの合図で、ユータとミラはそれぞれ転移陣の上に立った。

 瞬きする間もなく光が視界を覆い、足元の感覚が消える。

 身体がどこまでも落ちていくような感覚――。


 やがて、ふっと足が地を踏む。

 そこは、空も地も境界がなく、白一色の無限空間だった。


『汝はただ一度きり選べ』

 精霊の声が澄んだ響きで告げる。

『愛する者と共に行くか、己の望みを叶えるか』


 ミラの前に二つの道が現れた。

 左の道は、凍てつくような蒼の輝きに満ち、城門と玉座が遠くにそびえる。

 国を守る地位と力を得るが、カイを永遠に失う道。


 右の道は、春の陽だまりのような金色の光に包まれ、そこではカイと肩を並べて笑い合う自分がいた。

 だが、その未来には貴族としての栄光も、国を導く地位もない。


「……ミラ、本気で迷うまでもないだろ」

 左のグランマが低く呟く。

「栄光と力を捨ててどうする。国を守る責務を忘れたか」


「そうそう、絶対こっち(左)よ!」

 右のセーラが身を乗り出す。

「だって玉座よ? 輝く未来よ? そっちを捨てて男一人に賭けるなんて――」


 ミラは両隣の言葉を聞きながら、ほんの一瞬だけ視線を左右に揺らした。

 玉座の先に広がる国の未来。

 カイと笑い合う穏やかな日々。


「……」


 沈黙の後、ミラはふっと口角を上げる。

「そんなの、決まってるじゃない」


 両脇が一斉に「え?」と声を揃える中、彼女は迷わず右の道へ歩を進めた。

「私は――カイと共に行く」


 その声には、彼女がこれまで隠し通してきた想いが、鮮やかな色を帯びて滲んでいた。


 同じ白の世界の別次元――ユータもまた、二つの道の前に立っていた。


 右の道は金色に輝き、遠くに笑顔のカイが立っている。穏やかな暮らしと引き換えに、建築士としての力はすべて失う。

 左の道は蒼い光に包まれ、国を救う壮大な都市計画が完成した景色が広がる。力は限界を超えて覚醒するが、そこにカイはいない。

 金色のカイが、真っ直ぐにこちらを見つめて告げる。

「……俺はいい。左へ行け。

 お前の力で、国を救ってくれ。それが……俺の本当の願いだ」


 その低く穏やかな声には、揺るぎない説得力と優しさが宿っていた。

 胸の奥が熱く締め付けられ、ユータは思わず視線を落とす。

(……そうだ、これがカイさんらしい。俺ひとりじゃなく、多くを守れって……)


 ――その時だった。

 左腕に、布がかすかに触れる感覚が蘇る。

 あの時、少し照れたように笑いながら、傷を覆うように巻いてくれた黒いバンダナ。

 指先が結び目を押さえた瞬間の温もりが、今も確かに残っている。


(……本当に、それだけがカイさんの“本心”なのか?)

 脳裏に、誰もいない夜道でふと見せた横顔や、何気ない会話に滲む優しさがよみがえる。

(心のどこかでは……僕と生きる未来を望んでくれてるんじゃないのか?)


 ユータは深く息を吸い込み、両の手を広げた。

 右手は金色の光へ、左手は蒼い輝きへ――それぞれの光を掴み取るように手を伸ばす。

 瞬間、二つの光が掌の中で渦を巻き、熱を帯びながらひとつに混ざり合った。


 足元に新たな光の筋が伸びていく。

 右にも左にも属さぬ、中央を真っ直ぐ貫く道。


「……僕は、どっちも諦めない」


 その言葉とともに、足は迷いなく中央を進む。

 一歩ごとに光が形を成し、金と蒼が溶け合って、眩い白金色の道となる。


 やがて、その先に今まで存在しなかった巨大な扉が立ちはだかった。

 荘厳な光に包まれた扉の上には、古代文字でこう刻まれている――


 『双耀のそうようのみち


 ユータは迷わず、両手でその扉を押し開けた。


 転移の光が消え、ユータは再び大広間に立っていた。

 同じくミラも戻ってくる。


その時、澄んだ声が響き渡った。

『勝者――ユータ=ミナト。汝は“双耀のそうようのみち”を選び取った者なり』


「……双耀のそうようのみち?」

 聞き慣れない響きに、ユータは思わず小声で呟く。


 すると、玉座から立ち上がったクラヴィスがゆっくりと歩み寄り、口元に笑みを浮かべた。

「双耀の道――それは、光と闇、相反する二つの道を一つに織り上げた者のみが辿り着ける、王の資質を示す道だ」

「王……の資質……?」


  クラヴィスが低く笑う。

「……ふふ、楽しませてくれるじゃないか、ユータ」


 そして、堂々と宣言する。

「よって――ユータとカイの婚礼を認める」


 ミラは肩をすくめ、潔く笑った。

「完敗よ。まさか第三の道を自分で作るなんて……おめでとう」


 カイは事態の急展開についていけず、きょとんとしながらも頬を赤らめている。


 クラヴィスはさらに言葉を重ねた。

「ユータ……さらに追加するとお前は、魔王となる資格を得た」

「かつて我やルシアスも、この中央の道を創り出し、魔王となった。」

 その道を歩いたということは……お前は、王となる資格を得たということだ」


「――えぇぇっ!?、僕が……魔王?」

 大広間に、ユータの驚きが響き渡った。


──つづく。


最終試練は、ただの伴侶選びではなく“王の資質”を問うものだった――。

次回、突然告げられた「魔王となる資格」にユータはどう動くのか?

カイとの関係にも、大きな変化の予兆が……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ