第1話 旅路と初夜と井戸トラブル!?──新しい世界とふたりの“はじまり”
新天地への旅がスタート!
ユータとカイのラブラブ&波乱の夜、そして村のトラブル発生!?
新章・旅編、開幕です。
──街道を歩く朝。
初夏の風が野花の匂いを運ぶ。カイとユータは、並んで小さな地図をのぞき込んでいた。
「この先、アトリ村があるみたいだよ」
ユータがルシアスからもらった地図を確認しながら、楽しそうに言う。
「……ああ」
カイは相槌を打ちながら、ちらちらとユータの横顔を盗み見ていた。栗色の髪、素直な瞳、旅装の中でどこかあどけない笑み――。
(やばい……朝からこんなに可愛いの、反則すぎる。俺、絶対顔に出てる……)
心の中は乙女の独白。だけど表情は相変わらずクールそのもの。
昼過ぎ、二人はアトリ村に到着。
宿場町のにぎわいにまぎれながら、石造りの小さな宿屋へと足を踏み入れる。
「ようこそ、旅のお方! あいにく今夜はお部屋がほとんど埋まってましてね……残ってるのは一番小さな一部屋だけですけど、それでよければ」
「はい、それで大丈夫です!」
ユータは即答する。
(節約しなきゃだし、カイさんなら……大丈夫、だよね?)
***
夕食時、賑やかな食堂。
カイはビールに似た琥珀色の麦酒を、ごくりと一口。ユータは果実酒を控えめに飲む。
「北魔王国に着いたら、クラヴィスさんから建築のいろんなことを教えてもらいたいんです」
ユータの声は熱を帯びる。「でも、途中の村や町も見てみたい。古い橋や町並み、色々な暮らし方を知りたいんだ」
カイは無表情で頷きつつ、心の中は沸騰寸前だった。
(なんでこんなに前向きで、真っ直ぐなんだろう……可愛すぎる。可愛すぎて目が合わせられない!)
「……お前が見たいなら、どこにだって付き合う」
カイの声は静か。でも視線の熱は隠しきれない。
食後、二人は部屋へ。
***
案内された部屋は、ベッドがひとつだけの狭い空間。
宿の主人は「今日は混んでまして……」と恐縮していたが、選択肢はない。
「せ、狭いね……」
「俺は構わない」
しばし気まずい沈黙。
やがて、カイがゆっくりとユータをベッドに押し倒す。
魔族の本能――いや、それ以上に、ずっと我慢していた想いが噴き出した。
「……カ、カイさんっ、待って――」
ユータの服の裾が捲られ、カイの手が素肌を優しくなぞる。ユータは小さく震えた。
唇が重なり、熱い舌が絡みつく。
ユータの頬は真っ赤で、目を潤ませてカイを見上げる。
(どうしよう……初めてすぎて、息が止まりそう……)
ユータは恥ずかしさに身をよじるが、カイの手が背中を包み、そっと服を脱がしていく。
――と、その時。
コンコン、と控えめなノック。
「少々よろしいでしょうか?」
ノックの音に慌てて身を離し、服を整えたふたり。ユータは顔を赤くしたまま扉を開けた。
そこには、年配の村長が深く頭を下げて立っていた。
「こんな夜分に、本当に申し訳ありません……。ですが、どうしても今すぐお話したくて……」
村長の声は、どこか切羽詰まった響きがあった。ユータは姿勢を正して応じる。
「どうされましたか?」
「実は――数日前から村の井戸が枯れてしまい、水がほとんど出なくなったのです。村には小さな子供や病人も多く、このままでは生活が立ち行かなくて……。村に“建築士”の方が泊まっていると聞きまして、どうか、お力を貸していただけませんか」
カイはユータの背中をそっと押す。
「分かりました。大丈夫です、明日すぐに井戸の様子を見に行きます」
ユータは少し緊張しながらも、はっきりと答えた。
「本当に……ありがとうございます! お休みのところ失礼しました」
村長は何度も頭を下げ、安堵の息をつきながら部屋を去っていく。
村長が帰って扉を閉めると、部屋にはふたりきりの静寂が戻った。
だが、さっきまでの熱は一気に冷まされ、ユータは慌てて布団をめくる。
「……もう、あぶなかった……」
カイはまだ火照ったまま、名残惜しそうにユータの髪を撫でる。
「俺は、まだ……」
カイの声には、どうしようもない欲が滲む。だがユータはそんなカイの視線を避けて、そそくさとベッドにもぐりこんだ。
「えーと、か、カイさん……今日は、ほら、明日も朝早いし……ちゃんと寝ましょうね〜」
布団の端から顔だけちょこんと覗かせ、ぎこちなく微笑むユータ。
(……だめだ、今あんなことになったら、頭おかしくなっちゃう……! カイさん、目が本気すぎる……)
ユータの心臓はまだバクバクと跳ねている。だが精一杯、ごまかすように「おやすみなさい」と呟いた。
「……本気で寝るのか?」
カイは唇をかみ、肩を落とす。
(くそ、あともう少しだったのに……ユータの反応が可愛すぎて我慢できるか! ……いや、でも無理にせがむのは違うし……)
「……じゃあ、俺も……」
渋々ベッドに入るカイ。
その横顔は不満そうに見えたが、ユータが寝返りを打つと、そっと背中に腕を回した。
(でも、こうして近くにいられるだけで十分だ。焦らなくても、きっとまた……)
ユータは、背後に感じるカイの温もりにほっとしながら、(ごめんね、今日は本当に限界……でも、カイさんのこと大好きだよ)と胸の中でつぶやいた。
そうしてふたりは、眠りにつく――
だが、カイは夜が明けるまで、じっとユータの寝顔を見つめ続けていた。
──つづく
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
ふたりの初々しい(?)夜と、さっそくの建築ミッション。
次回、ユータは村の“井戸問題”をどう解決するのか──お楽しみに!




