98話 テンプレ起こらず
今日は初ちゃんがランチを食べに来てくれた。
今日の日替わりはピタパンサンド。日替わりを女性向けにした事で8割以上が日替わりランチを注文する様になっている。未だ男性のお客様はほとんどいない。
自家製サラダチキン、スモークサーモン、カボチャとナッツのサラダ、リーフレタスを自分好みに挟んで食べるスタイルだ。別々に食べても良いし、ご飯に変更もオッケー。デザートのミニ炭焼きみたらし団子の評判も上々。ヘルシーメニューやスイーツ目当ての人は多いかも知れないけれど、男性陣にも来て欲しいと思う。
川田さんに会った話をしたら、フェイシャルエステが開業したら行かないかと誘われたが、私は他人に体を触られるの少し苦手なのだ。美容院ですら半年か一年に一度くらいしか行かない。特に頭や顔を律樹さん以外の人に触られると脇腹や耳の後ろがぞわぞわして気持ち悪いのだ。
夫はともかく何故初ちゃんには手とか体を触られても平気なのかは分からないけれど、息子は私のこの感覚を何となく分かっているようで不用意には触れてこないし、何かを受け渡しする時も極力指が接触しない様に昔から気を遣ってくれていたのが分かる。
先日押し返された時も、手の平ではなく持っていたカバンで、面でやんわり押し返す様にしていたのを思い出した。あんな時でも私を思い遣ってくれていたのだ。
忙しくて初ちゃんとはあまり話せなかったけれど、後でメッセージがきた。顔につけるのではなくて、室内に使う加湿器にあの化粧水を入れる事を提案して定期的に仕入れてもらうのはどうかという話。精油入りのあくまで香りを楽しむ雑貨としてエステの施術とは関係ないものを開発して欲しいという依頼だった。そして沼に引き摺り込んで裏切れなくする作戦らしい。初ちゃん、恐ろしい子。
実はフリマであまりに石鹸のリクエストが多く、結構早い段階でOEM石鹸を発注していたのだとか。アロマ戦法に沼った美春さんに更に石鹸を売りつけようと言い出した。よく分からないけれど本気で言っているのだろうか。
初ちゃんそれもうドールとか関係ないけど良いの?
異世界。
顕微鏡が生理的にダメらしいので"水のみを飲用可能かどうかだけ調べて⚪︎か×が表示されるだけのミニ鑑定虫眼鏡"を安い豚の魔石で作った。お守りの使用者制限の応用だ。そしてコップや水筒に重ねて使う炭のフィルターを作った。
濾過しても飲めない水を煮沸する為、沸騰魔石を作った。火豚の魔石に紐をつけてコップに垂らし、1分沸騰したら加熱が止まるものだ。魔石が割れるまで使えるし、魔石の上まで水に完全に浸けないと発動しない。高地では紐を持ち上げ取り出して浸けてを繰り返し3度沸騰を繰り返す。沸かせば安全になるというのを鑑定メガネで確認してもらう。
これで寄生虫と細菌が死ねば飲めるし、重金属が入った様な毒水は煮沸しても無理だと鑑定で確認して分かる。
ちなみに水専用なのでワイン等は鑑定できない。冒険者専用で格安に設定した。
魔石は私にしか作れないけれど、炭フィルターはここの人たちにも作れる。フィルターで大まかなゴミを濾してから煮沸して飲む手順を身につければ、煮沸自体は魔道具でなくてもできる。これが受け入れられたら冒険者に魔石を納入してもらってどんどん量産していく。
それともう一つ。教会だ。
「神様の意図が分からない場合は教会でお祈りするのが定番」だと息子が言ったので確かめに行った。面倒臭い事頼まれたら嫌だけれど、何となくモヤモヤしたのだ。
「こんにちは。お祈りをしにきました。」
「こんにちは。礼拝堂はこちらです。」
信徒さんに案内され礼拝堂へ。
行ってお祈りはしたのに何も起こらなかった。白い部屋に飛ばされる事も神様がご降臨する事も。息子が言っていた神が地上に干渉できないもう一つのパターンかも知れない。
私は近くにいたシスターに声をかけた。
「ようこそ。エルガセナウ神教会バローマ支部へ。私はこの教会の責任者であり、孤児院長のセレスティア・リトリーと申します。こんにちは。」
彼女は美しい所作で礼をした。
「こんにちは。私は唯芽です。よろしくお願いいたします。」
「本日は礼拝ですか?それとも懺悔ですか?」
司祭様はゆったりした口調で言い、慈愛の笑みを浮かべた。なにこの謎の安心感。私より全然若いのに物凄い聖母っぽい。どう見ても二十代後半でどうしてここまでの母性が出せるのか。
「さっきお祈りしてきました。」
「おほほ。そうなのですね。」
教会の庭を掃除している子供達は、併設された孤児院の子達らしい。これもお約束的なやつらしく、場合によってはその子達を英才教育して次代の職人や冒険者に育て上げるのが定番らしい。もし貴族が人身売買に関わっていそうなら可哀想だけどスルー推奨だという。だけどそんなこと、教会をちらっと見ただけでは分かるはずも無い。
異世界といえばお城に召喚されて魔王を倒したり、貴族の子供に転生して領地改革をするのだと思っていたけれど、クラス召喚で追放されたり、森や遺跡スタートだったり、突然に何もない森へぼっち召喚されるのも定番らしい。つまり何でもアリか。やはり神様は人選ミスをしたらしい。息子が異世界に詳しすぎるのだ。




