97話 川田美春さん
息子に、香原さんのお守りを預けた。肌身離さず持つようにと。香原さんが信用できるかは分からないが、息子は多分話す様な気がする。できれば言わないで欲しいけれどもう仕方がない。他所様の娘さんを危険に巻き込む訳にはいかない。
朝からゴミ出しに行くと、川田さんが娘さんと一緒に挨拶してきた。
「こんど引っ越してきた川田美春です。よろしくお願いします。」
私のファンだと言っていたから、息子のストーカーの事もあってちょっと警戒していたけれど、根掘り葉掘り聞かれる事もなく挨拶だけで済んでほっとした。がつがつ来られるの苦手なので。ストーカーの騒動も知ってるだろうに、何も聞かないでくれた。もしかしたらそのこともあってピリピリしている私に配慮してくれたのかも知れない。
母の店に行くと、女性のお客さんは少しだけ減っていた。息子が暴言吐いたのを見た人が居たんだろうか。多分嫌われる為にわざときつめに言ったんだろうけど、あの言い方はさすがに酷かった。逆恨みされていなければ良いけれど。
女子達は、美味しそうにランチを食べて、スイーツに舌鼓を打っていた。皆一様に楽しそうで、この子達がストーカーに関わりがあるとはとは到底思えなかった。
このままお料理を楽しんでくれる人だけがここに来てくれたら良いのに。
私は何事もなく家に帰る事ができて、ひとまず事態は落ち着いたのだと分かった。
異世界。
「唯花、ダンジョンに川は無いの?飲水どうしてる?」
「ありますけど、寄生虫や細菌がおります。目に見えないのと、知識が無いので、現地の人間の浄化では細菌はともかく寄生虫までは対応できませんし、浄化を使えない人も居ます。基本は水筒を持ちますが、2日分がせいぜいですね。安地なら煮沸する余裕あるんですけどね。」
あー、そういう……。まずは教育が必要な感じかー。
「こういうのはどうだろう。」
豚さんの魔石を凸レンズ型にして覗いた。これじゃ細菌は見えないなあ。ペットボトル顕微鏡とか実験であった気がするけど……。身体強化……遠目じゃなく顕微鏡のイメージで付与してみる。
私しか作れないけどこれは教育の為だからね。虫眼鏡の形にしてまず一個。
「もう一つレンズを作って、こっちは鑑定を付与ってあっ!割れた!!だめかー。飲めるかどうか分かれば有難いんだけどね。」
とりあえず虫眼鏡を持って商業ギルドに行く。
「ヒッ……」
ダンジョンの川の水を見せたらエリザさんが驚いて固まる。
「川の水には見えない虫が居るので、それを消す感じで浄化する。このレンズでは見えませんが、体に悪影響のある細菌というのも居るんです。だけど、体の調子を整えてくれる有用な細菌も居るので、浄化の時は、体に悪いものを消すイメージで浄化する様にするのを広めたらどうかと思うんです。」
エリザさんがショックのあまり動き出さないのでギルド長に直談判しよう。
「と、こうすれば川の水も飲めます。」
と説明。まず浄化の意識を変えないとダメだ。ただ、何もかも消せば良い訳では無いので、この水を飲める様に、飲んでもお腹壊さないように、と強くイメージしなくちゃいけないと話す。
「これは……知れると大騒ぎになるから無理だ!人によってはショックで水が飲めなくなるぞ!なんとおぞましい!」
えぇ!なんでぇー?!
「浄化を徹底すれば問題無いのでは!」
「浄化を使えない人間も居るんだぞ!」
うー。難しいー。教育水準の高そうな商業ギルドでもこれなんだ。私はショックが深刻なエリザさんに治癒をかけた。
「もう水を飲めません……。」
エリザさんが泣き始めてしまった。
お詫びに白鹿の魔石に浄化を付与してエリザさんとギルド長に無料でプレゼントした。これを漬ければ一瞬で水は浄化されるからね。




