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61話 和樹 ピアノ動画

最近バイトが忙しくて柚月に会う暇がなかなか無い。

祖母は俺に甘いから多めに給料くれるけど、少し前まで経営難だったのに貰ってばかりで申し訳なさすぎて買い出しの荷物持ちや、仕込みにも入るようになった。

 お陰でますます柚月との時間が減ってる。

ある日、バイト先に柚月と増村さん、山根が3人で偵察に来た。山根に聞いた話、店のお客さんは若い女性が多いから柚月がめちゃくちゃ心配しているらしい。

 正直意識されてるのは知ってるけど俺はマジで興味無いし、迷惑してるくらいなんだ。

だいたい土日は柚月と会って、平日はバイト忙しくて他の子と遊ぶ暇とか無いんだけど何で俺が疑われてんの?気分悪いんだけど。


「なあ和樹!これなんだけど」

 食後のコーヒー持って行ったら、山根がスマホを見せてくる。

「悪ぃ、後で聞く。」

今忙しいっつーの!話しかけんな!

「おい!露骨な顔すんな。なあ聞けって!これ、お前の母さんじゃね?」

見ると、ショッピングモールの楽器屋でピアノを弾ているのを隠し撮りされたらしい動画が上げられていた。顔までバッチリうってる。映り込んだギャラリーの中にも動画撮ってる人間が何人も居る。


何だよこれ。母さんまた夢中じゃねーか。何で父さんは止めないんだ。何で撮られてる事に気付いてないんだよ!


俺は思わず顔を顰めた。

「…母さん何やってんだよ…」

 周囲がヒソヒソしだした。「お母さん」「ピアノ」「革命のエチュード」というワードが聞こえ、次々検索し始める人が出てきた。マズイと思い、山根にスマホをしまう様に促し、周りにも聞こえる声で言った。

「山根悪い、店内で音楽の再生はやめてくれ。」


 バイトが終わって急いで家に直行し、確認を取る為に米を研いでいる母に後ろから話しかける。

「ただいま母さん、この動画なんだけど!」

「おかえり。えーと、ウッドデッキ?」

「はぁ?これだよ、ピアノ動画。どうせ不用意に目立って誰かに勝手に撮られたんだろ?削除申請して良い?」

「え?ピアノ動画?削除申請?」


 母はネットの事あまり分かってないみたいだったから、ちゃんと説明して、隠し撮りされた動画の通報と削除申請をした。幸い上げられたのはこの一つだけで、再生数もあまり伸びていなかった。

「あんまり目立つ事しないでくれよ。」

店に来てた女連中に知られたんだ、広まって顔バレしたら困るのは母だ。

「目立つ事って、普通に試し弾きしただけじゃない。皆やってたよ?」

「普通に弾いただけじゃこうはならねーんだよ!」


 ていうかもう母さん自体が普通じゃないっていい加減自分で理解しろよ!見た目だってもう俺の姉でもおかしくねーよ!

くっそ!思わず素が出ちまった。


…良かった。今日はまだ大丈夫そうだ。

「怒鳴って悪かったよ。顔が出てんだ。こういうのネットに顔が出たら、消しても完全に消すの難しいんだ。デジタルタトゥーっつってな?」

なるべく穏やかな声を作って不満そうに眉間に皺を寄せている母に諭す様に声をかける。

「うん。デジタルタトゥー、後で調べとく。心配してくれたんだよね?ありがとう。」

「ああ。きつく言ってごめんな。じゃ、俺上行くから。」


俺は自室に入り、ため息をついた。ほんと扱いにくい。いや、マダム口調母の方が俺を子供扱いして話聞かないか。


とりあえず荷物を置いてベッドに横になる。


…ていうか…

ウッドデッキってなんだ?

ウッドデッキで動画検索するとずーっと下の方にうちの庭の動画が出た。

詳細に貼られてるURLを踏むと、ドールサイトに誘導される。


「はあああ?!ちょ母さーん!何やってんのー!」

 

 それから小一時間説教した。

もちろん怒ったりしてない。母は怒るとよけい伝わらないから、こんこんと、何故悪いのか教えた。何故こんな事に。まさか母の独断で我が家がネット公開されるとは。これこそうちに来た人が見たら身バレするじゃねーかよ。


「ご、ごめんなさい。」

「ちょちょちょ、待て待て、土下座やめろ。泣くなって。」

俺は母さんが泣き止むのを待ってなるべく穏やかな声で言った。

「理由、まず理由教えてくんない?」

「趣味が増えてお金使うから広告収入欲しかったの。」

「ええ?小遣い増やしてもらえば良いのに。」

「そんな事言えないもん。お願いします。黙っててください。」

また母さんが頭を下げる。それされるとどうしようもねぇ。

俺は父みたいに抱え起こそうとしてやめた。俺がやると余計にストレスを与える。


「まいったな…。わかったよ。父さんには内緒な。だから顔あげろ。な。」

俺はこの幼児退行モードに滅法弱いんだ。この時とマダム口調の時は突発的行動が少ないけど、父曰くストレスでこうなるらしい。さっきまでマダムじゃない方の母だったから、今俺がストレス与えたって事だ。くそ。罪悪感半端ねぇ!


とにかく、どうしても父には言えないって言うんで、顔も出してない事だし、父さんには内緒にする事になった。幸いそんなにも視聴はされてないし。気が済んだ頃に消させれば良い。


無理言って懐中時計をねだった手前強くは言えない。奮発したんじゃないかって父さんに聞いたからな。


 でもなあ、誰の入れ知恵だよ。


ネットに詳しく無い人間がこの編集できないだろ。考えてみたら母1人でウッドデッキ作るとか無理があるし、このアングル……誰が撮ったんだよこの動画。


やっぱり誰かに騙されてんの?

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