24話 息子の視線が語るもの
水曜日:地球
はい。朝です。
私だけ顔までゆうに10歳は若返ってしまった。ただでさえ童顔なのだ。夫は歳の差を気にしているらしいので、髭剃り用のフォームと洗顔、ジャンプーやボディーソープ歯磨き粉全部にコッソリ薬草成分を混入しておいた。
なんでか知らないうちに、薬草の色と味を抜いて無色透明無味無臭にする事に成功していたのだ。
最近自分でも知らないうちに「あったらいいな」が実現することがある。もしかしたら私天才かも。
大切な事を思い出したので庭に出た。
「やっぱりかー」
簡易燻製器が聖域化しておる。油断していた。聖域の木もアウトだ。
異世界の普通の木材で作り直して設置する。絶対に息子にバレたくない。
普通に金槌や釘を使って手作業で作った。
木工スキルと身体能力の高さで電動ドライバー要らずである。木工だけなら魔力を使わないが、木材を切るのだけはノコギリで切るフリして魔法を使った。
ポーションは快適。
畑は聖域ではなかった。地球の土と混ぜたからかも知れない。
名前は同じ薬草だけれど、魔力が少なくて聖域のものより成分が少ない。これでポーションを作ったら低級ポーションとかになるのかも知れない。
回復用ポーションはできたのだから、家で皆で飲むハーブティーはこの薬草で作ろうか。
昼は息子だけだから簡単にチャーハンにした。例のラードを使った。
「うま!手抜きなのにうま!!」
「手抜きじゃない。訂正して」
息子は悪びれもせずに言った。
「チャーハンって炒めるの一分だろ?」
言葉を飲み込む。彼は私の苦労を知らなかっただけなのだ。
「手作りのチャーシューにお手製のラードを使ってるよ」
そう言うと、息子は不自然な程にテンションを上げた。
「ええ!めっちゃ手混んでんじゃん!!うおお!すげえ!!さすが飲食店の娘って感じ!!」
これは、異世界食材チート効果なのか、それとも私に気を遣ってくれているのか。
「ありがと」
何故だか息子は気まずそうな顔をした。
「あ、いや無神経でごめん。母さんの努力なのに親と比べて。さすがに嫌だよな」
「なんで?お母さんが居たから私はここに居るよ」
お母さんの娘と言われて私は誇らしい。
「そうか。ならいいんだけど」
「和樹も、天才の律樹さんの息子で誇らしいよね?」
息子の眉が一瞬寄った気がした。だけど、遅れていつもの笑顔を浮かべた。
「当たり前だ」
息子は皿を持ちあげてチャーハンをかきこみ、無駄に大きな動作で胸を叩きながらハーブティーで流し込む。
私はポットから追加のハーブティーを注いだ。
「急いで食べちゃダメ」
すると息子はがばりと顔を上げ目を輝かせた。
「今度俺にも教えてくれよ!」
私は顔がひきつるのを感じた。
「だめ。私のアイデンティティだから」
「ぶはっ。何それ。大げさか」
大笑いする息子。
だが大げさなどではない。私から家事を取ったら何も残らない。
——
さて、異世界についたらまずお供え。
酒は高いので、今日は自分で焼いたパンと川田さんからの頂き物の桃を一個。桃って何故か神様のイメージがあるのだ。
今日は新しい区画に畑作りをする。
先日買っておいた野菜の種。せっかく裏庭を掃除したが、家で作ると育ち過ぎてバレそうなのである。
にんじん、ブロッコリー、キャベツ、レタス
あとは、大根と白菜。もちろん薬草畑も増やす。
物語では異世界に来たら冒険するところだけど、常識で考えて引きこもれる状態ならば冒険したくない主婦は多いはずだ。ただでさえ魔物に襲われて怖い思いをしたのだ。中でも私は保守的な方だ。
慣れた土魔法で耕して畝を作って種を植える。
「元気に育てよ~」
水魔法で全体に水を撒いたら虹が出る。
「わーいキレイーってはあぁあ?!」
芽が出ました。
即座にステータス確認。植物魔法もヤバいけど、それ以上にヤバそうなのが何故か増えていた神聖魔法。何がきっかけだろう。お供えか聖水か。
使う予定は全く無し!神聖とかいう響きがやばい。神の聖なる魔法を人間が使って良い訳が無いのだ。
木曜日
朝起きて庭で新鮮な薬草を摘んでりんごと氷を昔に通販で買ったミキサーに入れてジュースを作る。りんごと小松菜のスムージーを参考にした。
「おはよう。唯芽。今日はいつもと違う朝食かい?」
「おはよう、父さん母さん」
海外モデルみたいな朝食を目指した今日は、憧れのクロックマダム。だがパンはナイフフォークでは食べづらいのだと初めて知った。
「おはよう2人とも。ふふふ。今日は暑いのでスムージーでございます」
夫と息子の前に置く。
「朝からオシャレなもん作ってんなー。最近若作りしだしたし、一体何を目指し始めたの?マジウケるんだけど」
と息子が調子に乗って煽ってきたので即座に取り上げて
「そう。いらないのね」
と余裕の顔で返す。最近やたらに調子に乗っているが、大人を舐めてはいけない。
「返せよ母さん。ほんと大人気ないとこあるよな」
夫はちらりと息子を見たが、息子は目を合わす事はなかった。
ほんの少しの違和感。
夫は私に目を向け苦笑する。
「相変わらず君達は仲が良いよね。いつもと違うメニューも良いものだ。これからも時々頼むよ」
そんな優雅で健康的な生活。
だがりんごのヘタは植える気満々で収納に入れるのが私クオリティ。
無料とは、なんと甘美な響き。
相変わらず出費は多い。
全ては思いつくままひたすら夢中になる性格のせいだ。
すっかり忘れていたフリマアプリは完売して問い合わせが殺到していた。慌てて追加の商品を出して発送の準備をした。
幸いまだ大丈夫だけど、これ発送が遅れたら評価が下がる。
評価は得ることより維持することが難しい。
息子が後日友達を3人連れてきてピザを食べさせたいと、窯の使用許可を求めてきた。
乗せる具材やジュース類は持ち寄ると息子は言ったけれど、ピザ台とソースは私が準備する事にした。過保護にできるのも今のうちだから、それは親の楽しみなのだ。
そうと決まったら私は庭に出て深呼吸。
目を閉じて、切り替える。
私は、木工が得意だ。
次の瞬間、頭に手順が思い浮かぶ。物置きから持ってきたフリして木材でテーブルとベンチを作る。もちろん普通に手作業で。
息子が目を丸くしている。オイルステインとハケを物置でサクッと錬成し、もともと家にあったフリをして塗った。息子が見てないうちにサラッと乾燥させたのは言うまでもない。
名前:久我唯芽
レベル16
HP 368
MP 1090
力 158
体力 184
素早さ 88
器用さ 411
魔力 545
運 34
常時発動スキル
スキル習得率アップ 気配察知 夜目
任意発動スキル
アイテムボックス
浄化 遠見 千里眼
解体 錬金術 調薬 木工 服飾 鍛治 料理
建築 彫金 宝石加工
身体強化 魔力感知 魔力操作 素材操作
土魔法 水魔法 火魔法 風魔法 氷魔法 無魔法
光魔法 闇魔法 治癒魔法 結界魔法 転移魔法
付与魔法 植物魔法 神聖魔法




