12話 解体様は優秀だ
金曜日:地球
夫が口を開けて寝ていたので口の中をコッソリ浄化。
虫歯菌は滅菌!ピロリ菌も滅殺だ。
口の中の浄化を始めてから私も調子が良いのでお裾分けである。もちろんそれとは別に歯は磨いている。必要が無くても気分的なものだ。歯磨きは間食防止にとても良い。
「おはよう。母さん」
「おはよう。和樹」
息子は何故か今日も朝早い。
これではアイテムボックスが使えない。
予定が狂った。
先に出した食材の中で作るか冷蔵庫を覗くふりをして取り出すか……。
「何?」
「いや……。母さんさ……」
隣に来て何か言いたそうだが言わない。
いつもは踏み込んでくる癖に言いたい事があればハッキリ言え。言いかけて言葉を濁されるとイライラする。
「近い。私の動線を遮るな。効率が落ちる」
「ああ、ごめん」
息子はよく私の行動を遮る。いつも私に怒る。
しかも私の機嫌が悪い時に限って距離感が近いのだ。
二人を送り出すと、今日は皮の加工について調べた。
情報収集が大変なのだろうと覚悟していたのだが、インターネットですぐ見つかった。便利な世の中である。
「素晴らしい」
猟師さんのブログだ。手作業で毛皮や革を作る工程が紹介されており、写真付きでわかりやすかった。
それから久しぶりにクッキーを焼いたりして過ごした。大量に。
とにかく何でもストックしないと気が済まないのだ。
同じ生地で作っても成形の仕方で食感が変わる。私はパイの様に折り重ね伸ばした型抜きクッキーの食感が好きだ。
昔、バニラアイスに添えるものを作っていた経験があり、その時も特に女性には褒められたものだ。
絞り出しクッキーだけは作るのが苦手だったりする。焼くとエッジが消えて見た目が丸っこくなってしまう。硬め生地にすると袋が破れたら悲惨だ。
失敗するのが悔しくて学生の頃毎日毎日作って、1人で食べては作り続け、太って作るのを諦めた経緯がある。
今でも懲りずにたまにチャレンジはするけれど、味や食感は向上しても見た目は美しくならない。これからはアイテムボックスがあるから作るのにハマっても習得するまで時間の限りチャレンジできる。お金さえあれば!!
だがバターは高い。
バターやショートニングの代わりに猪のラードが使えないだろうか。確か沖縄にラードを作ったお菓子があったのだが、しかしそれは果たして絞り出せる生地だっただろうか。何にしてもラードはお料理に使えそうだ。
夕食にピザ2種を出したら、オーブンで焼いたものに見えないと息子に怪しまれた。
「実は裏庭にピザ窯を作ったのだよ!」
とカーテン勢いよく開けて見せたら夫と息子が驚愕していた。
「え!草が全部無くなってる!」
「すごい頑張って掃除したんだね。ありがとうね」
食いつくとこはそこじゃない!
——
異世界。
アイテムボックスのこやしになっていた猪の皮をなめした。
毛を溶かす薬剤なんて無いけれど、解体様は優秀だ。肉も脂も綺麗に取れているし、ちゃんと解体錬金で毛と皮に分けられた。
毛皮はそこはかとなくマタギ感があって私には使うのが難しいファッションアイテムだ。全て革にした。
「不思議パワーで皮が革になった件」
錬金術は持っているスキルや魔法を複合的に使って加工するのをサポートしてくれる物らしい。
レシピが頭に浮かんだりも時々するけれど、よほどの固有アイテムでなければ魔力で代用できそうな雰囲気である。
まあこれは、聖域が魔力豊富だからかな?
実は錬金術で料理も作れそうなのだけれど、料理は今後も手作業で作るつもり。
だけどハーブティーは大量に消費するから別枠だ。火と水の複合魔法を使った錬金術でサクッと作った。
思い立って、猪のラードを作った。
解体と錬金術で一発である。
ラードを作る時にできる副産物の油かすは父親の好物だった。私も大好きだが、今回はできなかった。
錬金術に欠点などあったのだな。油かすを食べたいと思えばできるのかも知れない。でも副産物でできるお得感はない。
余った時間は運動だ。
猪から逃げた時は命からがらだったから。
素早さと力のステータスの低さが特に目立つ。魔物が怖いから何とかして上げられないか。
という訳で反復横跳びとシャトルランとかした。あと、土魔法でダンベルを作った。
今なら何キロでも持てそうかも。




