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アセット・フロンティア・オンライン  作者: 床間信生


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第1話-届いた招待状

 西暦20AX年、五月。


 郵便受けを開けると、一枚のはがきが目に入った。


 白を基調とした厚紙に、金色のエンブレム。


 差出人は――


 National Asset Project 運営事務局


「……来たのか。」


 高橋蓮は小さく息をつき、そのはがきを手に取る。


 数日前、半ば勢いで申し込んだ国家プロジェクト。


 その結果が、ついに届いたのだ。


 はがきを裏返すと、中央には大きく一文だけが記されていた。


 『アセット・フロンティア・オンライン参加申し込みを受理しました。』


 その下にはログイン開始日時と専用端末の認証情報。


 そして最後に、ひときわ大きな文字でこう書かれていた。


 ――あなたの未来は、あなた自身の開拓によって築かれる。


 蓮は思わず苦笑する。


「ずいぶん大げさなキャッチコピーだな……。」


 だが、今の自分には、その大げさな言葉にすがるしかなかった。


「……思えば、長かったな。」


 小さく呟き、蓮は静かに目を閉じる。


 思い返すのは、すべての始まりだった半年前。


 上司のミスを自分の責任にされ、理不尽な解雇を言い渡された日。


 納得できるはずもなかった。


 それでも会社の決定は覆らず、蓮は職を失った。


 そこから何社もの面接を受けた。


 だが結果は、不採用、不採用、また不採用。


 ようやく見つかった仕事も、正社員ではなく派遣社員。


 生活するだけで精一杯の日々が続き、貯金は少しずつ減っていった。


 そんなある日、スマートフォンのニュースサイトで偶然目にしたのが――


 『アセット・フロンティア・オンライン参加者募集』


 という広告だった。


 政府が推進する国民資産プロジェクト――NAPの一環として開発された、世界初のフルダイブ型開拓・資産形成VRMMO。


 ニュースでは連日のように話題になっていたが、蓮には正直なところ何がそんなにすごいのか分からなかった。


 ただ、一つだけ理解できたことがある。


 ゲームをプレイすることで、自分の将来の資産形成につながる可能性があること。


 そして、自宅にネット環境さえあれば、自分の好きな時間に挑戦できること。


「……どうせ今の俺には、失うものなんてない。」


 その一言が、応募ボタンを押す理由になった。


 だが、実際に参加資格を得るまでには一か月以上もの時間を要した。


 本人確認。


 国指定証券口座の開設。


 専用SNSアカウントの登録。


 政府発行IDとの連携。


 ゲームを始めるだけとは思えないほど煩雑な手続きに、何度も嫌気が差した。


 それでも蓮は、一つずつ書類を揃え、必要事項を入力し続けた。


 ――これが、本当に人生を変える切符になるのなら。


 その一心だけが、彼を最後まで動かしていた。


 そして今日。


 ようやく、その参加通知が手元に届いたのだ。


 蓮はもう一度、はがきに目を落とす。


 自然と口元が緩んだ。


「やっと……ここまで来た。」


 胸の高鳴りを抑えながら、机の上に置かれたフルダイブ用VRヘッドセットへ視線を向ける。


 電源ボタンを押して、はがきに記載された認証情報を読み込ませると、電子音が静かに鳴り響いた。


『参加認証を確認しました。ログインの準備が完了しています。』


 蓮はゆっくりとヘッドセットを手に取り、頭へ装着する。


 深呼吸を一つ。


 視界がゆっくりと暗転していく。


 これは、一人の派遣社員が資産を築き、人生を変えていく物語の始まりである。


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