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9 セカンドコミュニケーション

「 それはもしかして自分に言っているのか〜?



────なぁ、お前ってこの国の王子様なんだろ?


” 困った事になりました〜異世界の人助けて下さい〜 ”


” ボクは王子様だからここで応援だけしてるので〜頑張って国を救ってくださ〜い! ” 



……って情けなくないの?


そりゃ〜そんなんじゃ ” 死 ” に対してな〜んにも分かんないよな。


それを負うのは自分が利用する道具達だけだもんな? 」



カッ!!となったらしいレオンハルトは反射的に俺を殴ろうと拳を振ってきたが、俺はそれを軽く避ける。


それによりフラッとよろけたレオンハルトを後ろに控えていた騎士の男が慌てて引っ張って転倒を防いだが、レオンハルトはそんな騎士の男の手を乱暴に振り解き、凍てつくような冷たい瞳で俺を睨みつけてきた。



「 ────巫山戯るなよ?


貴様、昨日から一体何様のつもりだ。


私はいずれこの国の王になる男なのだぞ?


本来は、貴様の様な汚らしい中年男など見ることも叶わぬ存在だ。 」



「 な、な、な、なんと無礼なっ……っ!!


────殿下、こんな蛮族、実力を試す価値もございません!


今直ぐ不敬罪で首を跳ねてやりましょう!! 」



大激怒するレオンハルトとザイラスは顔を真っ赤にして怒ったが、俺は大きなため息をつきながら胸ポケットから1枚の紙を取り出し、それを二人の前に突きつけた。


すると直ぐにザイラスの方はサァァ……と顔色を無くし、レオンハルトもギクッ!と身体を震わせる。


これは昨日ちょっとくすねておいた、聖女について書かれていた本の後半に書かれていた歴代 ” 聖女 ” 達の記録の一部。


この国が ” 聖女 ” 様達にしてきた事の何よりの証拠であった。


                ・・・・

「 歴代 ” 聖女 ” 様達は随分とご丁寧な扱いをされてきたみたいだな?



……お前たちさぁ〜ちょっとクズ過ぎないか?



国民の命が掛かっている中で致し方なく人攫い召喚をするまでは……まぁ分からないでもない。


人によっては ” 自分の故郷を捨てても本気でこの国の人々を助けたい ” ……と思って協力してくれる奴らだっているかもな。


だが召喚後のこの扱いは最低すぎるだろう。 」



「 な……なぜ貴様がそれを……? 」



呆然と尋ねてくるレオンハルトに対し、俺は得意げにニヤ〜と笑って見せる。


  ・・

「 普通に図書室でお勉強してたら、偶然にもあらら不思議〜な扉を見つけて────…… 」



「 そんなわけないだろう!


この国の最高レベルの隠蔽魔法が何重にも掛かってる扉だぞ!?


それに警護の騎士達が王宮内の至る所に配置されてるのに……



────あり得ない……。 」



確認の為かレオンハルトは後ろのアルベルトへ視線を向けると、アルベルトは静かに首を縦に振り、騎士団の警護は完璧であった事を説明した。


するとレオンハルトは何かを思いついたのか、突然フンッ!と人を馬鹿にする様に笑う。



「 それが貴様のユニーク能力か?


隠蔽したものを見つける。そんな所だろう。


コソコソと……まるでやっている事が盗賊と同じだな。 」



「 だってお前嘘つきなんだもん。


俺はそんなヤツの言葉なんざ、一つも信じねぇよ。


だから自分で色々調べさせてもらったが、これでよく ” 尊き命が〜 ” とか御大層な事が言えるよな〜。


子供じゃないんだから、そういう恥ずかしいのはそろそろ卒業してくれよ。 」



俺の煽るような言葉に、またカッ!!としたらしいレオンハルトが憎々しげに顔を歪ませたままパチンッと指を弾いた。



するとその瞬間────部屋の外に待機していたらしい沢山の騎士たちがドッ!と部屋の中へとなだれ込んできて、あっという間に俺を取り囲むと、そのまま全員剣を抜いて俺に向ける。


その状況を見て完全優勢を確信したらしいレオンハルトはフッ……と笑い、その前にはあの無表情な騎士の男が剣を抜いて俺を静かに見つめていた。



「 ……本当にこんな不快な思いをしたのは生まれて初めてだ。


こんなゴミ如きがこの私にそんな思いをさせるとは……それだけで死罪に相当する大罪である。


死をもってその罪を償え。 」



「 えぇぇ〜……俺王子様の初めて貰っちゃったの?


辞めろよ、俺、すっげぇ一途な男なんだからさ。


誤解されたら困るんだけどぉ〜? 」



うげぇ〜と吐き出す仕草をすると、レオンハルトの顔からストンっと全ての表情が消えた。



「 ────やれ。 」



その一言で騎士達は一斉に剣を振り上げ俺に襲いかかる。



剣が振り下ろされ風を切る音が部屋中に響き、更にキンキン!という金属がぶつかり合う音に混じって悲鳴が聞こえた後は────その場に立っているのは俺のみだった。



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