10 正しさ
「────────はっ??」
騎士たち全員が気絶している中、一人平然と立っている俺をポカンと見つめるレオンハルトと前に立つ騎士の男。
そして後ろで余裕そうに笑っていたザイラスは、そのニヤついた笑顔のまま固まっている。
俺は騎士から奪った剣をヒョイッと上に何回か投げて遊んだ後、落下してきた剣をキャッチし、そのままピッ!とレオンハルト達の方向へ投げた。
すると微動だにしないレオンハルト達の直ぐ横を通り、剣は深々と背後の壁に突き刺さる。
────ビィィン……ビィィーーン……。
剣が振動する金属の音だけが静かに響く中で、こちらを凝視したままのレオンハルト達に向かって得意げに胸を張った。
「ちょ〜っと、俺を相手にするには実力が足りなさすぎるかな〜?
う〜ん……こいつらって強さ的にはどれくらいだ?平均くらい??」
「────なっ……は……ええっ……??」
言葉になってない音を口から漏らすレオンハルトに向かって、俺はゆっくりと近づいていく。
すると主人をまもるため、無表情騎士君が剣を振ってきたが、それをパシッと指で軽く摘んで止めた。
「────っっ!??!」
騎士君は自身の剣が軽く止められた事に驚き、直ぐに形勢を立てようとしたが、その前に俺に肩を掴まれそのまま横の壁に向かって投げられてしまう。
────バンッ!!
壁に勢いよく叩きつけられた騎士君の体は、無念にもその場に崩れ落ちた。
そうして大きな壁の様に立ちふさがっていた騎士くんがいなくなってしまうと、目の前には青ざめたまま俺を凝視しているレオンハルトが丸見えに。
「と……止まれっ!!俺はこの国の王子だぞ!!俺の命令は絶対────っ……」
レオンハルトは顔色を白く変えごちゃごちゃと喚いていたが、俺が静かに右手を上げると、ビクッ!!と身体を大きく震わせ、殴られると思ったのか目を瞑った。
俺はその反応を見てニヤ〜と悪い笑みを浮かべながら、そんな子犬の様に怯えるレオンハルトにゆっくりと手を上げ────そのままそのお高い鼻をキュムッ!と摘まんでやった。
「────っ???!」
その瞬間、目を開きキョトンとした顔をするレオンハルトに向かって「────メッ!」と叱りつけてやると、レオンハルトはただでさえ大きくパッチリした目を更に見開き、驚いた様子で俺を見る。
「王だろうがなんだろうが『死』を前にしたらこんなもん。
実際に生きるか死ぬかの世界で、お前の言う言葉には『正しさ』はないんだ。」
「そ……そんな蛮族の野蛮な考え方を、俺に押し付けるなっ!!」
レオンハルトは直ぐにハッとして俺の手を振り払い睨みつけてきたので、俺は吹き出した。
「だよな〜!俺もそんな世界が嫌いだから戦ってる。
きっとお前の言うそれを正しいモノにしてくれるには、沢山の『人』が必要なんだ。
だからさ、お前を正しくしてくれる『人』は大事にした方がいいぞ。
人って、本当にあっという間に死んじゃうからさ。」
ヒラヒラと手を振りながらそう言うと、後ろにいるザイラスは死ぬほど顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らしていたが……レオンハルトは何だか不思議そうな顔をして俺を見下ろしてきた。
しかもかなりボンヤリしている様子だったので、続けてレオンハルトにペシッと軽いデコピンを食らわしてやると、「────わっ!」と随分幼い子供の様な反応を見せてくる。
それが恥ずかしかったのか、薄ら頬を染めてしまったレオンハルトを見て軽く笑うと、俺はその後窓の外へ視線を移す。
「夜は雨が降りそうだから、その前に終わらせちまおう。俺一人で行って────。」
「どうか30分ほど待ってくれませんか?
図々しいお願いではありますが、一緒に連れて行って下さい。」
今まで一切言葉を発しなかった無表情の騎士様が、ヨロヨロと立ち上がり、突然胸に手を当て敬礼のポーズを見せてきた。
まぁ、一応討伐した際に騎士団も〜という事実は作って置いた方がいいか……。
カシャカシャと一瞬で計算して「いいよ〜。」と軽く返事を返すと、足元に転がる騎士たちの足を掴む。
「じゃあ、用意ができたら声を掛けてくれ。」
そう言いながら倒れている騎士達を全員ポイポイッと部屋の外へ放りだし、またボンヤリし始めてしまったレオンハルトと怒り狂ったザイラス、キラキラ目を輝かせている騎士の男をまとめて全員部屋から追い出した。




