60 羞恥……羞恥!
(大樹)
「ニコラ王様────!!!」
「フォードロンド王国万歳!!」
次々と上がる声を聞きながら、ニコラは片手を上げ声を制すと、そのままマイクの様な拡声器を使い、国民達に向かい話し始めた。
「我が愛する国民の皆様。昨年は例に見ないほどの豊作であり、餓死者を出す事なく新年を迎える事ができました。
それも全て国を愛する皆の努力の賜物であると言えるでしょう。」
ツラツラと続くニコラの挨拶は、国民にとっては尊いものである様で、中には拝みだす人達までいるほど。
「ほぉ〜。ニコラは随分と人気のある王様なんだな。 ……って弟に嫉妬すんなよ。
そもそもあんなおっかねぇ奴とどうこうなるか。正妃達も怖すぎるしな。」
後ろからムスッ!とした雰囲気を感じ釘を刺すと、一応は分かったらしく、やや不機嫌ではあるが普通に話を返してくる。
「まぁ、ニコラの性格に王は非常にマッチしたのでしょうね。
ニコラが王になってからは腐敗していた王宮内は一掃され、僅かに残っていた者達も大樹様の帰還によってトドメを刺されました。
それにより国民の不正に上がっていた税も下がり、その事からニコラは国民に非常に支持されています。」
「なるほどな〜。俺が帰還した時の、チャンスとばかりの怒涛の攻撃は凄かったよな〜。
イリスや他の側妃の実家も参戦して叩き潰したもんな。」
王家の後ろ盾を得た側妃達の実家は、大きな権力を得る事ができる。
流石の古くから続く名家であろうとも、そんな側妃の実家総出で参戦されてはなす術なかった様だ。
あっという間に国に対する侮辱罪や反逆罪などの名目の元潰され、側妃達の実家はその潰した家の財産を山分け、ウマウマ〜というわけ。
レオンハルトはその時の事を思い出したのか、楽しそうに笑う。
その嬉しそうな顔をチラッと見上げ、俺はなんとも言えない気持ちになった。
悲願であった復讐は完全に終わった。
そして王子という責任ある立場もなくなったレオンハルトは晴れて自由の身。
これからは今までの人生を取り戻す為に生きていくのだ。
そしてその側に────俺はいつまでいれるのかな?
またしてもネガティブな思考に捕まり、心にズンッ……と重しがのった様な気分に……。
人の気持ちなんてものは、あっという間に変わるもんだ。
そりゃ〜仕方ねぇもんな。
今はまだ逃さないとばかりに絡みついてくる腕を掴み、クルッと後ろを向いてレオンハルトの唇に自分の唇を優しく付けた。
驚いた顔をするレオンハルトに、ニヤッと笑って見せると、どろりどろりとした粘着性のある目を俺に向けてそのまま激しい口付けが始まった。
「……はぁ……大樹さ……まからの……キス……っ!!はぁ……っねぇ、そんなに俺の事っ、好き……なんですか?はっ……ねぇ、ねぇ……大樹様っ!!」
はぁはぁと息を乱し、嬉しそうにキスしてくるレオンハルトを見つめながら、心の中で叫ぶ。
うん、好き、好き。
大好き。
沢山の好きを訴えてくるキスにうっとりしていると、いつの間にかなんだか周囲が静か〜な事に気づく。
あれ???
違和感を感じ、一旦グイッとレオンハルトの顔を遠ざけてキスを止めさせる。
そしてそのままクルッと前を向くと、一斉にこちらを向いている国民達の視線と一斉に目が合った。
いや〜……なんていうか……時が止まっちゃったよね。
白目を剥いて気絶しそうな俺に、キスを中断されたレオンハルトがムスッ!!としながらもう一度キスをしようとしてくるので、慌てて覚醒してもう一度顔を離す。
そしてザッ!と視線を回すと、こちらを指差すニコラの姿を発見。
あいつが犯人か!!
頭から湯気を吹き出しニコラを睨みつけたが、なんとニコラはニコッと笑い、続けて正妃も側妃も同様にニヤッと笑った。
それにゾワッとしているうちに、俺の手から逃れたレオンハルトはチューチューペロペロと俺のほっぺに吸い付き、それを見た国民達は慌てて側にいる子供達の目元を隠す。
それにまた意識が遠のいてしまったその隙に、ニコラは憂いたため息をつきながら話し出した。
「新年が始まる今日の明け方、ある人物達が我が王宮を訪ねてまいりました。
彼らは同じ性を持つ者同士……しかし遥か昔からずっと愛し合っているのだと、私に訴えてきたのです。
その心をわかって欲しいと、何と《聖零華》まで持って……。」
そこでニコラがスッと片手を上げると、後ろに控えていたイリスが《聖零華》を持って前に出る。
その時点で国民達はザワッ!!と大きくざわめき出した。
「ま、まさか!あれは幻の……!?」
「花を守ってたヤベェモンスターがいたはずじゃ……。」
あー……いたな。熊が。




