59 同種だ……
( 大樹 )
「 やっべ、もう始まるっぽいな。
屋根に座って見ようぜ! 」
レオンハルトの答えを待たずに、俺はヒョイっと窓から飛び出すと、そのままトントンっと壁を蹴って最上階を超え、屋根の部分にたどり着いた。
研究塔の屋根の部分は、未来の主電力だったソーラーパネルの形の様になっていて、どうやら空気中に漂うエネルギーを集める際に使われる小難しい装置らしいが、レオンハルトの私物になってからは一切使われていない。
そこに立ち、バルコニーの方を見れば、視界良好。
特等席だ。
ふんふん〜♬と鼻歌を歌いながら座ろうとすると、ムスッ!としたレオンハルトがトンっと、俺の隣に飛んできてギュ〜ッと抱きついてくる。
そしてそのまま背中から抱き込む形で座り、スリスリスリ〜と頬を頭に擦り付けて来た。
「 …………。 」
ちょっと離れて欲しかったが、まぁ、一応これでも見えるし、訳のわからないスイッチが入ってここでおっ始められては困るので、そのまま大人しくすることに。
バルコニーの奥の方へ視線を動かし、ジッと見ると、そこにはニコラと正妃が横に並んでいる。
正妃はニコラより少し年上で、淡い金髪のスーパー美女。
ニコッと笑う顔は女神様の様に美しいものだが中身は本当にとんでもない女である。
こっちの世界に帰ってきて直ぐ、上層部のお偉いさん……別名しぶとく生き残っていたいわゆる前正妃の残党達は、あーだこーだと理由をつけて俺を増加したモンスター達と戦わせようした。
理由はとっても簡単。
ようは私利私欲で増やした財産を自分の領のために使いたくないって事だった。
お偉いさんはそれぞれ自身の領、つまり収入源となる自身が治める街をたくさん持っている。
街の人たちに税金としてお金を貰い、そのお金から勿論モンスターの討伐などを行う自治兵団へのお給仕を、更にそれでも厳しい場合は国から騎士団を派遣して貰うのだが、その出費はかなりデカい。
それが浮けば、かなりの金が自分の懐に入るもんだから、やれ────
" 人を救える力があるなら人々のために使うべき "
" はっ?お金??人を救うのにお金を要求するなど浅ましい!
聖女たるもの慎みやかに慈愛の心を持って無料ですべし! "
" それこそが優しさ!人として当然の事だろう! "
────いや、これ吹き出すだろう。
必死で笑いを堪えてた俺の横でニコラはニコニコしながら、やや後ろに控えてやはり笑顔の正妃に言った。
「 君の意見が聞きたい。 」────と。
いやいや、奥さんに聞くなよ、可哀想だろ……────と、思ったのは一瞬。
正妃はスッ……と表情をなくし恐ろしいほど冷たい目を向け一言。
「 我が国の戦力を舐めるな。 」
有無を言わさぬビシッ!とした言い方に俺は固まっちゃったよね〜。
そこからはずっと生妃のターン。
" 我が国の兵の実力は世界一である。
それに否と申すのか。 "
" 不届き者め。
その様な輩を国のトップに置く気はない。 "
" 聖女に頼らねば国も守れぬ役立たずは去れ。 "
ニコラと同種だ……。
嘘をつく時の鼓動が常に一定で、感情の波がほぼなく、目的がハッキリしていて迷い自体が無い。
大局を見ていて、尚且つ不正を行う輩に対する断罪っぷりは、まさに情のカケラすら見当たらない。
似たもの夫婦ってやつ〜?
そんな記憶を思い出しながら、ふぅ……とため息をつき、更に正妃の直ぐ後ろに控えているこれまた非常に目を引く美女へ視線を移した。
不動の側妃ナンバーワンの座を見事に勝ち取り、正妃のパートナーとなったスーパー才女、イリス。
イリスは正妃に何かをヒソヒソと囁き、二人でニコッと微笑むと、その後イリスの後ろに控えているナンバーツーやナンバースリー達、以下省略の若く美しい側妃達に何やら指示をしている。
それを見ていると、随分とニコラ王様のハーレムはうまくいっている様で、素直に凄いよな〜と感心しながら拍手を贈った。
その瞬間────突然正妃が俺達に気づいたらしく、こちらに顔を向けると……
────ニタリッ
……と不気味な笑みを浮かべる。
「 …………。 」
なんだかとてつもなくいや〜な予感がして、ブルっと震えると、レオンハルトが更に強くキュムッと抱きついて来た。
更にサワサワと服の上からない胸を揉んでくるので、それを阻止していると、いつの間にかイリスまでこちらを見ていて……
────ハンッ!!
……と、まるでザマーミロ!と言わんばかりに鼻で笑う。
この時点で悪寒は止まる事なくブルブルと震えていたのだが、後ろから囁かれる「 あったまる事しましょうか。 」というもっとヒヤッ……とするセリフにに震えは止まった。
こいつ、国民全員の前でおっ始める気か……?
正気を疑う様なびっくり発言に青ざめ、必死で服を脱がされない様死守していると、ニコラ王と正妃、側妃達が前に出た事で国民達からは、わっ!と歓声が上がった。




