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【完結】聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど……??  作者: バナナ男さん
半年後の話

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55/65

55 何か違った……

(大樹)


森の奥に進むにつれてそれなりに高ランクのモンスターが姿を現す様になったが、勿論俺の相手にはならない。

レオンハルトも以前から剣の腕は相当だと思っていたが、この10年でそれに加えて魔法使いとして相当な実力をつけたらしく、剣と魔法を駆使して淡々と襲い来るモンスターを倒していく。


ほほ〜、ちょっとした騎士団一個団体並の戦力〜。


こりゃ幸いと言わんばかりに戦闘はレオンハルトに任せて、俺は風に乗ってくる匂いをクンクンと嗅ぎ回った。


『《聖零華》は咲く前に甘酸っぱい匂いがするそうです。』


ニコラから出発前に聞いた話ではそうらしいので、俺の超嗅覚でその匂いを辿ってみると、確かに森の奥から甘酸っぱい……いちご?に近い匂いが漂ってくる様だ。


『万能薬の材料になるだけあって非常に栄養価が高く、その匂いはその栄養分が熟し始めている匂いだと言われております。

更に群生地を作って生えているので、それが咲き乱れた時の美しさと大量に放たれる熟した甘い匂いは、まるで天国に来たかの様だと言われています。』


『しかし────……。』


近づくにつれてどんどん濃厚になっていく匂いに、口の中には唾液がじわっと滲む。

そしてその匂いがピークに達したその時、美しい湖とその周りを囲む様にビッシリ生えている蕾状態の花畑が姿を現した。


「よしっ!見つけたぞ。これで花が咲いたら一本採って帰れば依頼達成だな。」


後ろからトコトコ追っかけてきたレオンハルトに向かって手を伸ばすと、そのまま手を叩きあって苦労を労う。

レオンハルトは、フム……と小さく頷きながら、周りを見渡し、その後はポケットから出した懐中時計を見て時間をチェックした。


「あと三時間くらいで明日になりますね。三時間か……。」


ブツブツと呟きながら、レオンハルトは背中に背負ったバックを降ろすと、テキパキと下にシートを引いたり、毛布やクッション、更にシートの上に軽く風を防げる程度のテントを組み立てる。

そしてそこに先程買ったお酒を置くと、俺の手を引きそのシートへ座らせた。


「戦いなしの野営、楽しむんでしょう?」


自分も隣に座ると、レオンハルトは俺にニコッと笑いかけてくる。

何だか話をちゃんと覚えていてくれた事が嬉しくて目を閉じると、レオンハルトは当然と言わんばかりにチュッとキスをしてきた。

そしてそのままチュッ、チュッ、と軽いキスから次第に深いキスへと変わり、俺の目に写るのは満点の星空と────幸せそうに微笑むレオンハルトの顔だけになった。


「────???」


……あ、あれ……?


?????



あぁ〜────!!




…………。


…………あ、そっかそっか〜。



うん。

何か……俺の考えていた楽しみ方と違った。


それなりに楽しんだらしいレオンハルトは、後ろから俺を抱き込み、満足そうに後頭部にチュッチュしている。

服は全部脱がされて辺り一面散らばっていて、俺が着ているのはレオンハルトの羽織っていた黒いフード付きのマントだけ。

抱きしめてくる腕に素直に身を預けながらしみじみ思う。


楽しむって、こう……。

夜空を楽しみながらお酒飲んだり、つまみ食べたり?色々語ったりさぁ────……。


自分の理想の楽しみ方を想像していると、突然レオンハルトが「こうしていると何だか幸せですね。」と言ってくる。

その声が幸せで幸せで仕方がないと言わんばかりの声だったので……『まっいっか!』と俺はまた大きく流された。


「あ────……そうねぇ〜?幸せ、幸せ〜。」


背中に当たるホカホカした体温で温まりながら、そう軽く答えるとレオンハルトから反応がない。

それを不思議に思いながら、後ろを振り向こうとしたその時、突然レオンハルトがポツリと呟く様に言った。


「大樹様は本当に幸せですか……?」


何だかそれが苦しそうだったので、益々不思議に思いながら「うん、幸せ〜。」と素直に答えた────が、やはりレオンハルトの雰囲気は硬いままだ。


「……それって思い込もうとしているのではないですか?それか、あまりにも前いた世界が酷かったからでは……?」


「はぁ?お前、急に何を言い出すんだよ。」


話の意図が掴めず、そのままクルッと後ろを向くと、思った以上に真剣な様子のレオンハルトの顔が目に入る。


「人は比べる対象がないと、自分の今の状況を冷静に判断できません。

だから大樹様は今の閉鎖された空間を、前の人生と比べて幸せだと思っているんだと思いますよ。」


「???そ、そうか〜?……いや、そもそも別に俺、そこまで不幸だったわけじゃ……。」


新型人類には戦ってもらうためにと、旧型人類からすれば破格の待遇だったし?

一応クリーチャーが襲ってこない時は、美味い酒飲んだりしてたけど……??


そう思って否定をしたのだが、レオンハルトは首を横に振り、更に俺の言葉を全否定し始めた。


「大樹様は、今非常に不幸な人生を送っています。

はらね?それに気づいてない。頭が弱くて本当に可哀想な人ですね。

何が幸せかも知らずに過ごし、更にこれかも過ごすだなんて……。」


「……お前さぁ〜本当に何が言いたいの?俺のどこを見て不幸だって思うわけ?」



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