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その聖女に近づいてはなりません  作者: 白雲八鈴


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第11話 散歩は諦めます

「扉を開けてもらえますか?」

「まだ町ではありませんよ」

「それぐらい見ればわかります。あの大司教が、私に南に行けと行った理由が何なのかですわ」


 神聖女という立場は特別です。よっぽどのことがない限り、私を王都から出さないはずなのです。


 ええ、王都の守りが最重要ですからね。


 外から開けられた扉から外に降り立ちます。

 降りるときに手を差し出してきた者がいましたがガン無視です。


 そして一番近くにある浄化石まで歩いて行きます。


 街道は石の床で補強されており、その端に浄化石が埋め込まれているのです。


「ちっ!」


 石の間に埋め込まれている浄化石を見下ろして思わず舌打ちがでてしまいました。

 どす黒く濁っています。

 もうほとんど浄化作用などないという色合いです。


「これは、酷い色ですね」


 私の隣から呆れた声が聞こえてきました。

 これは半年放置したという色合いではありません。


「はぁ。これは困りましたね。下手すると三ヶ月では終わらないかもしれません」


 道中でこのように足止めをされてしまうと、旅の行程が長引いてしまうのです。

 ええ、浄化する浄化石の数は変わらないので、移動時間がかかるという意味合いです。


 私は目視でなんとか見える王都を目を細めて見ます。

 この距離で、足止めをされるということは辺境ではどうなっていることでしょうか。


「主よ。浄化の光で人々が進む道を照らし給え『シャルアマーベル』」


 私は王都のほうに向って浄化を行います。

 とはいっても、王都までの距離の半分ぐらいまでしか浄化できないでしょうが。


 すると周りから感嘆の声が聞こえてきました。

 これ、私の仕事ではありませんからね。


「誰か大司教様に伝言をしてくれないかしら?職務怠慢の聖女のお陰で、全く進まないので早急に街道の浄化をするようにと」


 すると騎獣に乗った聖騎士の一人が王都に戻っていく姿がありました。


 これは仕事が終わらないので、最悪帰りが遅くなりますという伝言ですね。


 足元を見ますと、先ほどとは打って変わって、青白く光る浄化石がありました。

 街道の浄化石など小さなものなのに、これに手を抜くなんてありえませんわ。


 そう心の中で文句を言いながら、私は馬車に戻っていったのでした。



 空が赤く染まる頃にやっと宿泊する町に到着しました。


 あれから二回足止めをされまして、腹が立って止まるたびに浄化石の浄化を行ってしまいました。


 いつもはもう少し早く着きますのに、散歩をする時間がなくなってしまったではないですか。


 ん。いいえ、まだ完全には暗くなっていません。まだ行けるはずと、目立たないように外套をはおり、いざゆかんと部屋の扉を開けました。


 何故かそこに扉をノックしようとした形のラフェシエンがいるではないですか。


「どちらにお出かけなのでしょうか?もう日が暮れておりますが」

「……」


 それには答えず、そっと部屋の扉を閉めようとすると、手が出てきて止められてしまいました。


「フィエーラ様」

「散歩です」


 ここはこの町の教会の施設です。

 定期的に聖女の浄化石の浄化が行われるため、街道沿いの町の教会には聖女たちが泊まる宿泊施設が完備されているのです。


 もちろん、護衛騎士もそこで一晩泊まります。


「明日は整備されていない街道を通りますので、早めに休まれたほうが良いかと思うのですが?」


 はい、ごもっともな意見です。

 私は明日、道が悪く浄化石が設置されていない街道を通って2箇所の村を回る予定です。


 恐らく今日よりも魔物との遭遇が多くなると想定しています。

 そして予備日としてもう一日あるのです。

 明日で終われば、明後日はお休み。自由行動の日なのです。


 散歩は明後日でいいのではと、遠回しに言っているのですよね。


 わかっていますよ。


「はい」

「それからお食事の用意が整っているので、聖女様方は食堂のほうにと連絡を受けています」

「はい」


 くっ! とても残念ですが、今日は諦めます。


 私はすごすごと食堂のほうに向かったのでした。


「まぁ! フィエーラ様。珍しいこともあるのですね」


 何度か私と同行したことがあるメアトリーゼに驚かれてしまいました。

 ええ、到着した初日に宿泊施設で夕食をとることは滅多にありませんから。


 いつもはもっと早くに到着をしますので、夕食は必要ないと言って出掛けるのですけど……


「今日は到着が遅かったので仕方がありません」


 そう言って席に着きます。


 食堂には今回の務めに同行する四人の聖女がすでに席についていました。

 皆、私より若い聖女です。


「そうですよね。まさか三回も魔物に襲われるなんて」

「前回の街道の浄化をしたのは誰?」

「そんなもの新人でしょ?」

「でもわかりますわ。やってもやっても終わらない作業に飽きますもの」


 そんな話をしている聖女たちに夕食が運ばれきます。

 パンとスープ……のみ。


 これが嫌で毎回外に食べに行くのです。


 今日は仕方がないと具がほとんどないスープを掬って食べます。


「でも! 流石フィエーラ様ですよね!」


 なぜ私の名前が出てきたのですか?


「あの浄化範囲! すごいですよね」


 浄化範囲? そのように言われて首を傾げます。

 私より凄い人を知っているので、凄いと言われることではありません。


「そうでしょうか?」


 すると『これだからフィエーラ様は』と言われてしまいました。

 え? 何がこれだからなのでしょう?



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