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その聖女に近づいてはなりません  作者: 白雲八鈴


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第10話 シエン少年との出会い

 私は聖女として神から加護を賜ったことにより、辺鄙な田舎から王都の教会に連れてこられたのです。


 私が十歳のときでした。


 当時はアンジェリカ様という神聖女様がいらしており、教会の敷地の中にある別館で暮らしていました。


 お年をお召した神聖女様用に、用意された屋敷にお住まいのところに、私が転がり込んだのです。

 次代の神聖女として教育されるためにです。


 当時の私は今と全く違っていました。

 全てのモノに怯え、周りの物を消滅させるということを繰り返していました。


 神の加護の暴走です。

 それをアンジェリカ様の力によって中和しているという状況でした。


 その暴走の最初の被害者は父親でした。

 気に入らないとすぐに怒鳴り、暴力をふるい、酒瓶が飛んでくる。

 そんな家庭環境でした。

 母親が病で死んだあとはいっそう酷くなり、もう耐えられないと思った瞬間に、父親が白い灰になって消えたのです。


 村人はそんな私を恐れて日が届かない地下に閉じ込め、もう死ぬしかないと思っていたところに、浄化のために村を訪れた聖女様に助けられたのです。


 暗闇に私がまとう光が漏れ出ていたそうです。


 そして、王都に連れてこられたのです。

 しかし、今まで父親の件で気を使ってくれていた村人たちが、父親を白い灰にした私を人ではない扱いをしたことで、人間不信に陥ったのは言うまでもありません。


 その私に対して、護衛騎士だっアンラディーラ様が気を使ってくれたのでしょう。

 同じ年頃の少年を紹介してくれたのです。


 教会では若くても十六歳ぐらいの聖女しかいませんでしたから。





「カエルが降ってきた」


 私が中庭で寝そべっていると額にカエルが乗っかってきた。

 寝そべっているので、そんなこともあるだろうと思うべきだけど、目には金髪の少年に見下されている光景が映っている。


「消えないのですね」


 どうやら、私が物を消してしまうという能力を見たかったらしい。


「アンジェリカ様がいるときは消えない」


 アンジェリカ様がこの別館にいるときは、私の力も抑えられている。だけど、時々神を祀っている神殿のほうにいくことがある。その時はよく物が消えてなくなる。


「そうなのですか」

「シエン! ここにおったのか!」


 アンラディーラ様の声が聞こえたので、土を払いながら立ち上がった。


「お、フィエーラもここにいたのか」


 公爵家のお偉い貴族の人と聞いていたけど、気さくに話かけてくれるアンジェリカ様の護衛騎士。


「なに? カエルを頭に載せておる?」

「降ってきた」

「消えるのか試してみました」

「もう、仲良くなっておったか。フィエーラの遊び相手にと連れてきたのだ」


 ハハハハと豪快に笑うアンラディーラ様。

 別に仲良くはしていないと横を見ると、シエンと呼ばれた少年も同じことを思っているようだった。




 それが『シエン』と呼ばれた少年との出会いでした。

 ……アンラディーラ様。結局どこの誰とか自己紹介がありませんでしたね。


 それから二年ぐらいは、ときどき遊びに来ていた気がします。


 私の目の前にいるラフェシエンが、あのシエン少年というのであれば、私が手を取られるのが嫌というのは知っていると思います。


 父親に暴力を振るわれ、その後村人たちに暗闇に閉じ込められたときに腕を掴まれたトラウマが残っていたのですから。


 まぁ、今もですが。


 そして消滅の力の制御ですが、建前として魔物や魔の囚われたものとしておりますが、大司教のメガネぐらい簡単に消滅できます。


 だから大司教はあのように嫌がったのですわ。


「そうですか。あのシエンがラフェシエン様であるなら納得です」


 私がそういうと、ラフェシエンは少年のような笑みを浮かべました。


 ドクンと心臓が波打ちます。え? なにですか?

 私は思わず胸元に手を置きます。


「懐かしい呼び名ですね。二人っきりのときだけでいいのでシエンと呼んでいただけませんか? フィエーラ」


 ふぉ! なんだか心臓がすごくバクバクしています。


 呼び捨て! 確かにシエンからはフィエーラと呼ばれていましたが、今呼ばれると衝撃力が凄いです。


「もう子供ではないので、お断りします」


 口ではそう言っていますが、絶対に顔が赤くなっていますよね。だってすごく熱いですもの。


「そうですか。残念です」


 ラフェシエンは残念と言いつつ、クスクスと笑っています。


 くっ、早く次の町につかないのでしょうか?


 その時ガクンと揺れて馬車が止まりました。

 どうしたのでしょう? まだ、宿泊予定の町に到着するには時間がかかるはずですのに。


 すると、馬車の扉がノックされました。そして外にいる聖騎士から報告が入ります。


「先頭の者たちが魔物と遭遇したようです。しばしお待ちください」


 どうやら偵察のために先に行っている聖騎士が魔物と戦っているようです。


 しかし、まだ王都に近いこの街道で魔物と遭遇ですか。あまりいい出だしではありませんね。


「前回、街道にある浄化石を浄化したのはいつなのかしら?」


 浄化石には穢れの浄化の効果もありますが、小物の魔物を遠ざける効果もあるのです。

 まぁ、強い魔物には全く効果はありませんけどね。


「南方面は半年前だったと思います」


 街道には一定間隔で浄化石が埋められているのです。それは一年ぐらいかけて浄化を行うので、新人の聖女の役割になるのですが……サボりましたか?




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