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魔王の攻略法は知ってます!

 自然溢れる広大な大地。様々な生き物の遠吠えが響き、人間の国が栄える。

 魔族vs人間。この形だけは何千年も変わらず残り続け、そして今ーーそれは終焉を迎えようとしていた。


「お、お前が魔王…!」 


 古びた重い鎧を身に纏う女騎士が、その闇そのもののようにも思えるようなもの対し、睨みを効かせる。

 魔王城内部、冒険者5人パーティーがそこに到達していた。煌びやかで豪華なライトに照らされたその客間は、何とも言えぬ奇妙な雰囲気で包まれていた。


「よくぞ、よくぞ到達した」


 その人形の闇は両の腕を広げ、生成したような声で言った。今にも逃げ出したくなるような緊張感の中、彼女らは汗を拭い、ゆっくり呼吸をする。

 そんな中、パーティー唯一の男であるそいつは緊張か恐怖か、強く両の拳を握り、血が出るほど強く唇を噛んだ。

 

「よくぞ……」


 男は震えたように小さな声で呟く。

 静寂の中、その声だけが部屋に反響した。


「んん?」

 

 魔王ですら理解できないその言動に首を傾げた。

 

「よくぞが……

 よくぞが一個多いんだよぉぉ!!」


 男は感極まった様子で、まるで変身するかのようなポーズをとり、発狂した。


「はあ……?」


 その不解明な言動に、魔王を前にし女性らは思わず剣を下ろすほどだった。


「いやいやいや! ふざけんなよお前!! 

 何セリフ変えちゃってんのおぉ? 原作愛が足りねえんだよおぉぉぉぉ!!」


 男はそうやって叫ぶのと同時に、とてつもないスピードで魔王に突進し、その横にあったハートの形をした何かを殴り壊した。

 

「「は?」」


 女性らはポカンとした顔をし、目を丸くして男を見つめた。魔王でなくその横のインテリアを殴るという謎の行動。だが、魔王は驚愕の表情で膝をついた。


「なぜ、なぜだ。なぜ分かった…?」


「原作愛さ」


 男はすっきりしたような爽やかなドヤ顔をして、魔王にピースをした。


「……は?」


 魔王はそれを遺言とし、塵になり飛ばされていった。

 


*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*                         



 僕の名前は津島幸一(つしまこういち)


 極々平凡な高校生だ。変わった点があるとすれば小説を書いているくらい。

 ネットに投稿している訳でもなく、本当に趣味で書いている。

 最近では一つの作品が完結した。3年以上書き続けた大作である。


 物語は異世界に転生し、魔法を極めるために冒険する、恋愛あり冒険ありの作品だ。ただただ無双するなんていう作品ではなく、少しずつ少しずつ強くなっていく、そんなようなものだ。


「おい、津島。津島!」


「えっ?」


 と、考えごとをしてると、ガタイの良いでかいハゲが目の前に現れていた。おそらくお坊さんか何かだろう。


「集中して授業を聞け!」


 男は手に持っていた教科書でポンッと僕の頭を叩くと、朗読を再開した。今時体罰なんて、良くないよね。

 

「また小説のこと考えてたのか?」


 すると横から小声で山本に囁かれた。山本はもちろん男で、隣の席の唯一仲のいいクラスメイトだ。金髪で結構顔もいいが、男子校なのもあって彼女はいないらしい。素晴らしい選択だ。


「まあね」


「ちゃんと授業聞かないとテストやばいだろ」


「お前だって聞いてないだろ?」 


 ちゃんと授業を聞いている生徒なんてほんの一部だけ。大体は聞いてるふりしてなんかやってるんだよ。

 

「普通に聞いてるが」


「1+1=は?」


「2」


 僕の出した難問はまるで1+1を解くように解かれてしまった……。

 ってそのまんまやないかい!

 

「ちぇっ、本当に聞いてるのかよ」


「いやいや、1年生でも分かるし、てか今国語の授業な?」


 ナイスツッコミ!

 1人漫才も楽しいけどやっぱり人とやるのが1番だね。


「あ」


「どうした? 吐息みたいな声、出、して……」


 何かとてつもない気配を感じ、ゆっくりと首を横にする。


「バンッ!」


 頭を教科書で叩かれた。もう2度目だぞ! しかも僕だけ……。

 教育委員会に訴えてやるぅ!



*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*                         


 

 それはこことは違う異世界の話。

 貧乏な夫婦の間に生まれた1人の転生者の少年。何の才能もなく、それでも可愛がられ幸せに暮らしていたという。優しいお母さんに元気なお父さん。お金はなくても不自由ない暮らしをしていた。

 

 だが、しかし。

 ある日母親が重い病にかかり、ベッドから起き上がれなくなってしまった。

 それを治すため、少年は誰にも言わずに、伝説の回復薬があると言われるダンジョンに潜っていってしまうのだった。


「よし、あらすじも書けたし。どっかの出版社に持ち込んでみようかな?」


 一応5年は小説書いてるし、最高傑作であるこの作品ならいけるかも!

 そう思い、椅子から立ち、早速出版社に向かった。


 ーー無理でした。


 入ってすぐ近くにいた社員の人に事情を説明すると、一応見てあげると言われ、紙を渡した。結果3秒で返され一言「字が汚くて読めない」死〇えぇぇ! 何が字が汚いだ。お前の読解力がないだけだろ!


 まあいい。センスのない会社に引き込まれても困るしな!

 とりあえず本当に読めないとこだけ書き直すか……。

 僕は机に座り、めがねをかけた。


 んん?


「ここ、一つ文字が変わってる」


 主人公の名前である、けんごがけんとなってる? 

 なんでだろ、さっきまでは普通だったはず。

 とりあえず書き直すか。


 そう思い文字を消そうとすると。


「え?」


 見間違いか? 今、「と」に避けられた?

 僕は目を擦ってマスを凝視する。そのマスには変わらず、「と」の文字が書かれていた。


「今だ!」


 消しゴムを「と」に突き刺す勢いで向かわせる。文字が避けるなんてあり得ないからな!


「よし! 捕らえた!」


 と思った時。紙に腕が貫通した。


「うわぁ!!」


 消しゴムは弾かれどこかへ飛んでいき、僕の腕だけが紙に飲まれた。しかもそれは抜けないどころか、勢いよく僕の体を吸い込んでゆく。


「ど、どゆこと!?」


 頑張って対抗してみるが、全然抜ける気配がない。

 やばいやばいどうしよう!


「あ、そうだ!」


 小説を破ってしまえばいい。

 僕はその文字がびっしり書かれたA3サイズの紙の束を掴み、破ろうと試みた。

 

「おらーー」


 ーーその時、とてつもない勢いで小説に吸い込まれ、それと同時に僕の意識はプツンと切れた。

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