第11話:表面仕上げは慎重に
左右に二つの円錐……山の形。
その両側の山の頂点に丸く短い煙突。
裾野の裏側には靴の中敷き。
概ねの形状が出来たところ。
「ちょっと着けて確認してみたら?」
と、妻・アカネの提案。
「そうだね」
提案に従って、スウェットの上を脱ぎ。
キャミソールも脱いで、ブラジャー一枚。
ブラジャーの中に入れているのは簡易型の上げ底。
これは、ブラジャーがつぶれないようにするためだけなので、カップの中にすっぽりと収まっている。
その上げ底を外して、代わりに制作中の白い物体を着けてみる。
「どう?」
「色が白いから違和感あるけど、形的には、いいんじゃないかな?」
ブラジャーが四分の三カップなので、物体の一部がブラジャーからはみ出して見える。
アカネは姿見を移動して雪人の前へ。
「そうだね、なんとなくそれっぽい感じに出来てる、かな」
姿見に映る自分の姿を確認する雪人。
「手触りはどうだろう?」
と、夫に手を伸ばし。
「ちょっ!?」
「ふむふむ……手触りもいい感じだね」
「うぅ……」
ささっと状態を確認して、すぐに元の上げ底に入れ替えて、服も元通り。
「んじゃぁ、この形で仕上げるかな……」
と、作業再開。
「え? 出来上がりじゃないの?」
「うん。表面がまだなめらかじゃないから、もっとなめらかにするよ」
「あぁ、なるほど……」
ちょきちょきちょきちょき。
また物体を左手に、右手のハサミで切る。
「切るって言うよりは、表面を削る感じ?」
「そうそう。表面のデコボコを均してる」
先ほどまでは形状を整えるために大きく切り取っていたが、やや乱雑だったので凹凸が残っている。
その凸部分を削って平らに、なめらかにする作業。
ハサミを表面に当てて、表面をなぞるように、飛び出した部分だけを削る。
ちま、ちま、ちま、ちま……。
削り取られた部分が細かく、ぽろぽろと落ちる。
軽くてふわふわなので、まっすぐ落ちずに、あちこち飛び散るが。
アカネがそれを都度、拾い上げてゴミ袋へ、ぽいぽいしてくれる。
「ありがとね」
「どいたまー」
ある種、夫婦の共同作業?
「あー、でも、つるつるになって来てるの、わかるよ。うんうん」
「そう? ああぁっ! 切りすぎたっ!?」
「げ……」
表面をなぞるようにハサミを動かすが、素材が柔らかすぎるため、力の入れ加減で少し大きく切れてしまうことがある。
「うぅ……仕方ない、まわりも少し削って整えるしかないか……」
試行錯誤。トライアンドエラー。
習うより、慣れるん。
ちまちま、ちまちま。
さすがに、単調な作業なので、見ている方は飽きても来る。
アカネは切りくず拾いもしつつ、スマホを眺めてウェブサーフ。
ときおり。
「うぉおっ!」
とか。
「ぎゃぁあっ!」
とか、雪人が叫び、アカネがぎょっ、と、する場面がしばしばあったりするも、最終的には。
「こんなもんかな?」
「どれどれ」
アカネが雪人から物体を受け取って。
「ぉぉっ、すべっすべ!?」
表面を撫でてみると、明らかに先程とは異なって、つるつるの手触り。
「いいね」
「へへ。いいでしょ?」
しかし、アカネが気付く。
「裏は?」
「裏は……まぁ……見えるトコじゃないし?」
「なるほど」
「これで色付けすれば完成、かなぁ……」
「はいはーい、カシャカシャ、やりまーす」
出番に喜ぶ、アカネ。
才色兼備ならぬ、彩色兼備?
そんな感じで、まだ少し、作業は。
つづく。




