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ラスボスと空想好きのユア  作者: レセラン
第4章 リアリティア編

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第87話「襲撃」

 ユアとディーン(ディンフル)がリアリティアで過ごしている頃、フィーヴェでは複数の問題に悩まされていた。


 フィトラグスらが戻る前から雨続きで、まともに晴れた日がほとんどなかった。

 他の地域でも小さいながら地震が頻繁(ひんぱん)に起こり、火山の噴火、季節外れの嵐などに見舞われている。

 ディンフルから世界を取り戻し、平和になったはずのフィーヴェは災害続きで「何かの前触れではないか」と噂する者もいた。


 そんな中、魔導士を生み出すビラーレル村では、ティミレッジがソールネムに呼び出されていた。


「いきなりだけど、超龍(ちょうりゅう)ってご存じかしら?」


「その昔、世界一魔力の強い魔導士たちが命懸けで封印した伝説の龍ですよね? 本で読んだことがあります」


「あれが復活するかもしれないわ」


 衝撃の一言に、ティミレッジは絶句した。


「前にも言ったけど、フィーヴェはずっと天候が良くないわ」


「そ、それと、どういう関係が?」


「豪雨、嵐、地震、火山の噴火……これらはすべて超龍が暴れていた頃、同時に起きていたものよ」


「えっ? それって、偶然では……?」


「偶然じゃないわ。現に魔導士の何人かが、これまでにない邪悪な気を感じているの。超龍がいた頃も同様の邪気が感じられたそうよ」


「じゃあ、本当に……?」


「現時点で確定は出来ないけど、超龍が生きていた頃と同じことが起こっているの。近々ダトリンド様へ報告へ行くから、あなたもついて来て」


 不安げなティミレッジに対して、ソールネムは終始冷静だった。

 そして、ダトリンド国王のところへ行くということは、フィトラグスに会える。

 ティミレッジがソールネム以外の仲間と会わなくなってから、もうすぐ一ヶ月が経とうとしていた。


◇


 リアリティアのグロウス学園。

 夜通しのゲームプレイを園長に咎(とが)められたディーンは、目の下にクマを作りながらも事務の仕事をこなしていた。

 パソコンを使わない業務だったので、目が疲れている上に、パソコンの「パ」の字も知らない彼にはちょうど良かった。

 元々器用なので、事務作業もすぐに慣れた。


「すごいね。ほとんど寝てないのに、テキパキ出来て」


 ディーンの働きぶりに、隣から先輩のアレルトが感心した。


「新しい作業は刺激になるからだ」


 相手が先輩にも関わらず、ディーンは敬語を使わず対応した。

 アレルトも気にせず「いい考えだね!」と絶賛した。


「でも、一晩かけてゲームをクリアなんてすごいな~。俺も子供の時、一日中ゲームしたいって思ったことあるよ。でも、大人になったら目は疲れるわ、座りすぎて腰は痛いわ、集中力は続かないわで、長い時間出来なくなったんだよね。何より、学園でやったら園長に殺されそうだし……」


「殺す? あの園長は見かけによらず、物騒なのか?!」


 真面目に捉(とら)えたディーンを、アレルトは笑い飛ばした。


「言葉の綾(あや)に決まってるじゃん! 本当に殺したら、学園終わるって!」


「言葉の綾か……。思わず信じたぞ。私の世界では実際に殺すのでな」


「え? ディーン先生、どんな世界で生きて来たの……?」


 アレルトの顔から血の気が引くと、ディーンはあわてて「冗談だ」と取り繕(つくろ)った。


◇


 今日は、ユアがリアリティアをゆっくりと案内してくれる。

 夜ふかしして眠気が残るディーンだが、子供たちの話題について行くためと土地勘を養うため、教えてもらうのだ。

 もちろんユアは、マントが化けた黒いキャスケットを着用していた。


 街へは歩いて行けないことはないが、距離があるため電車で行くことにした。

 電車といえば先日の満員っぷりを思い出し、ディーンは今から気が重かった。

 察したユアから「休日はあそこまで混んでないよ」と励まされ、駅の階段を上り始める。



「おはよう、ユア」


 階段の上段には、リマネスとボディガード数人が立ち塞がっていた。

「何で……?」ユアは背筋が寒くなった。


「休みだし、お兄さんを案内すると思ったから、朝から待ち伏せしてたの」


「何の用だ?」


「決まってるでしょう。ユアを返してもらいに来たのよ」


「わ、私、帰らないから!」


 ユアが拒否すると、ディーンが彼女を隠すように立った。


「そうはいかないわ。教室に乗り込んで、生徒や教師に怒鳴りつけるなんて普通じゃないわ。そんな人にユアは渡したくないのよ」


「普通でないのは貴様だろう。ユアを好いていないなら、何故引き取った? 矛盾(むじゅん)が多すぎる」


「あなたには関係ないでしょ! 女子高生に向かって“貴様”だなんて! このまま渡さなかったら、容赦しないから!」


 リマネスが指を鳴らすと、ボディガードたちが二人へ近づいて来た。


「場所が悪い。一旦降りるぞ」


 ディーンがユアの肩を抱いて階段を降り始めると、ボディガードの一人が彼へ飛びかかって来た。

 彼はすぐに気づくと、かわしながら足を引っかけた。

 襲ってきた相手が下まで転落した。


「ここで飛びかかるとは卑怯な」


 二人が降りるのも待たず、ボディガードは次々と襲いかかった。


 だが、階段という狭い場所で、さらに通行人も行き交っていた。

 なので、ボディガードたちは一度に一人ずつしか攻撃出来ない。


 ディーンは攻撃をすべて避けつつ、相手を下まで落として行った。

 彼にとっては簡単なことだった。


 ついに一人もいなくなってしまい、リマネスが怒号を上げた。


「何しているの?! たった一人に負けるなんて!」


 彼女に向かってディーンは得意気に言った。


「こんなに弱いボディガードで大丈夫か? そんな環境に、ユアは預けられぬ」


 そう吐き捨てるとディーンは再びユアの肩を抱いて、階段を降り、駅から去って行った。



 二人がいなくなると、ボディガードたちは階段から降り、道の端で横一列に並んだ。

 リマネスはその前に立ち、彼らを労(ねぎら)うことなく怒鳴りつけた。


「あなたたちがそんなに頼りないなんて思わなかったわ!」


「申し訳ありません。ですがあの男、本当に強くて……。」


「言い訳はけっこう! どんな手を使ってもいいから、ユアを取り戻して!」


 彼らは自信がないのか、「はい……」とバラバラに気弱な返事をした。

 その中で一人だけ返事をしない代わりに、意見を言い始めた。


「お嬢様。あの男ですが、前に我々がやり合ったコスプレ男と、同じような動きをしておりました」


「コスプレ男って、イマストってゲームの?」


「はい。私が警棒で立ち向かった時と同じ匂いもしました」


「なら、コスプレ男とユアのお兄さんが同一人物だと?」


「その可能性はなくはないです」


 リマネスはグーにした手を顎(あご)に当てて考え込んだ。


「そうだとしたら、何でコスプレしたまま街を歩いていたのかしら? たぶん趣味の一環だろうけど。そもそも、十八年経ってお兄さんだけ迎えに来るのも変な話ね……」


 考えた末に、彼女はボディガードたちへ指示を出した。


「ディーン・ピートについて調べてちょうだい! 今すぐ!!」


 彼らは今度は一斉に返事をし、屋敷まで急いだ。

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襲撃事件が発生。果たしてどうなるのか気になります!
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