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ラスボスと空想好きのユア  作者: レセラン
第3章 最後の異世界編

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第44話「魔封玉」

前回までのあらすじ

ユアは、ゲームのキャラクターであるディンフル、フィトラグス、ティミレッジ、オプダットと異世界のミラーレで出会い、彼らの故郷・フィーヴェを目指して旅を始めた。

途中トラブルもあったが、虹印(こういん)を手に入れたり、それぞれの世界を救うパーティを間近で見られるなど、いいこともあった。

雪に覆われていた炎界(えんかい)を救った後、ユアは火の精霊・サラマンデルから魔封玉(まふうぎょく)でディンフルらの魔法を封じていることを指摘されてしまう……。

 炎界(えんかい)。

 ユアは一人、サラマンデルに呼び出されていた。

 他の四人は先に外へ出て、彼女を待つことにした。


 洞窟を抜けると雪はすっかり溶け、茶色い土の地面が見えて、辺りに松明(たいまつ)が灯っていた。

 ここへ来たばかりの時より、明らかに暖かくなっていた。


「火が戻ってるぞ!」


「土だったんだな、ここの地面は」


「さっきまで寒かったのが、ウソみたい」


 オプダット、フィトラグス、ティミレッジの気持ちが高ぶる中、ディンフルのみ「これぞ炎界だ」と冷静に感想を述べた。


「それにしても、人助けって気持ちがいいな!」


「まさか、異世界でもすることになるとはな」


「変動破(へんどうは)でフィーヴェから出ていなかったら、経験出来なかったね」


 ティミレッジが言うと、オプダットとフィトラグスは「そういえば……」と振り返り始めた。


 思えば四人は、変動破の一つである竜巻で、本来の戦いを中断され、ミラーレへ飛ばされた。

 そこでユアと出会い、リーヴルとクレイスを手にしたからこそ、イマストV(ファイブ)の延長とも言える旅に出た。


 そして、これまで犬猿の仲だったフィトラグスとディンフルも、互いに助け合うまで距離を縮められていた。それだけでも大きな収穫だった。


「助けなきゃしょうがないだろ! ディンフルに死なれたら、異次元に飛ばされた人たちが戻って来ないんだから!」


 フィトラグスが焦りながら否定する。照れ隠しにも見えた。

 オプダットは、次にユアの話題を出した。


「でも、出会ったのが、妄想好きのユアで良かったな!」


「“空想”ね。僕たちのことも好きでいてくれるし、ドジだけど良い子だし」


「最初は”ディンフルのことが好き”って言うから、思わず警戒したが……。良い子だな。国への想いも理解してくれたし」


 フィトラグスら三人は和やかな空気になっていた。


 しかし、ディンフルは楽しそうにする彼らへ、冷たく忠告した。


「あまり信用しない方がいいぞ」


 さっと表情を変え、相手を不思議そうに見つめる三人。


「何でだよ?」



「お待たせ~!」


 フィトラグスが聞いたところで、ユアが洞窟の中から出て来た。

 火の力が戻ったサラマンデルが洞窟内の温度を上げたため、外に出れば少しは涼しくなると思ったが、同じく熱気に包まれていた。


「外も熱いじゃん!」


 ユアが合流したところで、五人は準備万端だ。

 次の世界へ飛ぶ前に、借りていたポンチョを老婆へ返しに向かった。


◇


 老婆の家。


「こちら、ありがとうございました」


 ユアが代表でお礼を言いながら、ポンチョを返した。


「こちらこそ、サラマンデル様を救ってくれてありがとう。何かお礼をしないとね」


「いえ、お構いなく」


 老婆は小さな箪笥(たんす)の引き出しから、小さなスーパーボールサイズの丸い赤紫色の石を持って来た。

 それを見た瞬間、ユアの全身が強張った。


「それは?!」


 ディンフルとティミレッジの顔も引きつった。

 老婆は手前にいたユアに、石を差し出した。


「良かったら、もらってくれる? 主人から遠征のお土産でもらったんだけど、この部屋に合わないのよ」


 ユアは固まり、石を受け取ろうとしなかった。


「そういうことだったら、いいっすよ!」


 オプダットが前に出て、代わりに受け取ろうとすると……。


「ならぬ!!」


 突然ディンフルが怒鳴った。


「な、何だよ? せっかく、おばあさんがくれるって言ってるのに」


「僕も、もらわない方がいいと思う……」


 フィトラグスが言うと、ティミレッジも怯えたようにうなずいた。


「何でだよ?」


 オプダットが聞くと、フィトラグスも興味津々で、ティミレッジらの顔を覗き込んだ。


「お前たちは知らぬのか……?」


 ディンフルは信じられないような目で二人を見ると、声を落として説明し始めた。


「魔封玉(まふうぎょく)と言って、どんな魔法も封じてしまう、とんでもない石だ」


 彼の説明に二人は動揺した。


「魔法を封じるって……? 二人が知ってるってことは、フィーヴェにもあったのか?」


「一応あるけど、現在は魔導士しか持ってないよ。“魔法を使えない人が持つと危ないから”って」


 フィトラグスの疑問に今度はティミレッジが沈んだ声で答えた。


「我らディファートにとっても忌々(いまいま)しい。人間がそれで魔力を封じ、ディファートを襲撃した事件もあった。魔法が使えなくなると、封じられた側は圧倒的に不利だろう?」


 話を聞き、老婆は魔封玉を急いで引っ込めた。


「そんな石だったの? ごめんなさいね。そうとは知らずに勧めてしまって……」


「構わぬ。そちらも知らなかったのだろう?」


「しっかりと覚えておくわ。でも、魔法を封じる物なら、サラマンデル様の体調が悪くなったのって……?」


 老婆はだんだん寒気がして来た。

 自分が魔法を封じるアイテムを持っていたがために、精霊が不調になったと思い始めたのだ。


「それは関係ないです。魔封玉は、持っている人が“魔法を封じて”と願わない限り、力を発揮しません。おばあさんは、それが何なのかわからなかったんですよね? だったら効果は出ていないので、大丈夫です。それと、サラマンデル様はとっても元気になりましたから!」


 ティミレッジが老婆を慰めるように言った。


「じゃあこれ、持ち主が一回願ったら、ず~っと魔法を封印し続けるのか?」


「それはない。どの魔封玉にも期限はあり、少しずつ力を失っていく。ただの範囲封印だけではない。特殊な例だが、相手の体内に入れると、その者の魔力を確実に封じる。力の有無に関係なくな」


 オプダットの質問にディンフルが答えると、今度はフィトラグスが疑問を抱いた。


「“どの魔封玉も”ってことは、タイプがあるのか?」


「ニ種類ある。広範囲か狭(きょう)範囲かである。それは赤紫だから、狭範囲の魔法が封じられる」


「建物一個分の中しか効果がないタイプだね。広範囲だと世界単位で封じるから、かなり厄介だよ」


 ディンフルとティミレッジの説明を聞いたフィトラグスらは「魔法メインじゃなくて良かった……」と、心から思った。

 次は、オプダットが聞いた。


「じゃあ、体に入れるってどんな感じだ? 食べさせるのか?」


「そうだな……例えばその昔、フィーヴェを恐怖に陥れたと言われる“超龍(ちょうりゅう)”がいただろう?」


 ディンフルが少し考えた後で、新しい言葉を出すと、ティミレッジが反応した。


「千年ほど前、凄腕の魔導士たちが命を懸けて封印した、史上最強と言われたモンスターですね?」


「超龍は膨大な魔力を持ち、多彩な魔法を使うことで知られている。白魔法の弱体化でも効かぬが、体内に入れると、魔法を封じられたかもしれぬ」


「”かもしれぬ”? 使わなかったのか?」


「残念だけど、魔封玉は超龍が封印された後に作られたんだ」


 フィトラグスら四人は今度は「超龍」という存在を中心に会話が白熱した。

 いつもなら、イマストの要素に飛びつくはずのユアは参加出来ずにいた。


「ユア? 元気ないけど大丈夫か?」


 見かねたオプダットが声を掛けた。


「う、うん。ちょっと疲れちゃったみたい……」


「寒暖差がすごいからね。次の世界が安全なら、少し休憩しよっか」


 ティミレッジの提案に老婆が「良かったら家で……」と気を遣ってくれたが、「急いでいるゆえ、気持ちだけ受け取ろう」とディンフルが代表で断り、魔封玉については捨てるように忠告した。


 五人は改めて老婆に礼を言い、家を出た。

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