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ラスボスと空想好きのユア  作者: ReseraN
第2章 異世界編
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第38話「さらなる異世界へ」

 水界(すいかい)を経たユアたちは、異世界へ飛べる本・ボヤージュ・リーヴルで次の世界へ飛んだ。

 着いた先は、草木に覆われた森の中だった。


「今度こそ、フィーヴェか?!」


 オプダットが辺りを見回すと、彼の足に植物のツタが巻き付き、そのまま持ち上げられた。


「何だぁ?!」


 巨大な人食い花が、長い数本のツタをうねうねと動かしながら威嚇して来た。


「植物系のモンスターじゃん! ファンタジー物のRPGで、くさい臭いを放ったり、ドロドロに溶かす液を持っているやつ!」


 ユアが興奮しながら言っていると、ティミレッジと一緒に捕らえてしまった。


「ひゃあっ!」


 捕らわれた三人は、人食い花の口に入れられそうになった。


「やだ! 食べられたくない! てか、くさっ! やっぱり、くさい臭いを放つタイプじゃ~ん!」


 ユアが恐怖のあまり文句を言うと、人食い花は彼女を優先に食べようとしていた。



 そこへ、ディンフルがツタの攻撃を手刀で弾いてかわし、相手の前で飛び上がると、人食い花の頭にチョップを食らわせた。

 彼は戦闘力に長けたディファートなのでモンスターのダメージは大きく、ツタの力は緩まり、ユアたちは救出された。


 相手が目を回している間に、フィトラグスが剣を抜いてモンスターを斬り倒した。

 同時にフィーヴェでないことがわかったので、再びリーヴルで次の世界へ飛んだ。



 次の世界は、ただっ広い草原のど真ん中。


「ここも違う。フィーヴェにも草原はあるが、どんなに広くても遠くに景色が見えるはずだ」


「ここは、何も見えませんからね」


 ディンフルがすぐに推測すると、ティミレッジがそれに同調した。


「それよりもだな……」


 フィトラグスは静かに言った後で、突然声を荒げた。


「いきなり、本体に掛かって行く奴があるか!!」


 彼が先ほどの戦法について、ディンフルを責め始めた。


「動きも速くはなく、本体も大したことはなかった。そもそも、私が動きを止めたから助かったのだぞ」


「何だ、その言い方は?!」


「まあまあ! 全員無事だったんだから、いいじゃねーか!」


 またディンフルとフィトラグスの口論が始まりそうだったので、急いでオプダットが止めに入った。

 ここで、ユアがあることに気付いた。


「ディンフル、その手……」


 人食い花の本体には細かく鋭いトゲがあった。

 手袋は裂け、掌から血がにじんでいた。


「心配無用。この程度、名医の傷薬で治る」


 ディンフルは、水界からもらって来たアティントスの傷薬を塗り出した。


「ほら見ろ! 無茶するからだ! そうでなくてもティミーは魔法が使えないんだから、ケガすんなよ!」


 フィトラグスが再びディンフルへ文句を垂れる。

 しかし、内容を聞いたティミレッジはピンと来た。


「もしかして、ディンフルさんを心配してる?」


「は?」


「”戦い方が危ない”って言いたいんでしょ? ケガしたことまで怒ってるし」


「お、お前を心配してるんだ! こんな時、ティミーなら“魔法が使いたい”ってうずうずするだろうし、薬も使えば減るんだぞ! だからこいつに”無駄なケガをするな”って警告してるんだよ!」


 フィトラグスはディンフルを指して言った。

 魔法が使えずにもどかしくなるのは事実なので、ティミレッジは認めざるを得なかった。


 一方でユアは内心喜んでいた。

 前のフィトラグスなら、ディンフルがケガしても何とも思わなかっただろう。それが旅を経て、少しずつ変わって来たのだと思った。


 結局、次に着いた先もフィーヴェではなかった。

 リーヴルを再び開き、次の世界へ飛んだ。



 到着すると、目の前が見えないほどの猛吹雪に襲われた。


「さっっっっっむ!!」


 短時間の間に、暑い場所から来たので寒さが身に沁みた。


「砂漠の次は雪国かよ!」


 袖なしの服を着ていたオプダットが一番寒がっていた。


「ユア、頼む! ここはフィーヴェじゃない!」


「了解っ!」


 フィトラグスの指示で、ユアはリーヴルと鍵であるボヤージュ・クレイスを手にした。


 しかし、いきなり突風が吹き、両方とも飛ばされてしまった。


「えぇーーーーーー?!」


 ユアの手から両方がなくなると、五人は沈黙に包まれた。


「マジかよ……」


吹雪(ふぶ)いてるのに……」


 フィトラグスとティミレッジが絶望した。

 ユアの全身が震えた。寒気による体温低下もあるだろう。


 ディンフルの表情も、低温からか凍り付いていた。


「お前と言うお前は……」


 次の瞬間、怒号が響いた。


「何故いつもやらかすのだ、バカ者がぁっ!!」


「ごめんなさ~い!!」


 ユアが鍵と本を無くしたのは、これで三度目。

 ミラーレから見守って来たディンフルもさすがに声を荒げた。悪天候もあり怒りも頂点に達していたのだ。


 ユアも謝りつつ、鍵と本が同時に消えたことが信じられなかった。


(カエルのこともあったから、ちゃんと握ってたのに……。こんな吹雪の中だし)


「天候は悪いが探すぞ! 吹雪が止むのを待つより、次へ飛ぶ方がいい!」


 フィトラグスの指示で、ディンフルとティミレッジは周辺の雪をかき分けて探し始めた。

 ユアも血眼で探した。


 探すと同時に、オプダットの視界にかすかな光が揺れた。


「……あれ?」


 よく見ると吹雪の中に、ドーム状のレンガ造りの家があり、窓から高齢の女性がこちらへ手招きをしていた。


 オプダットが四人へ声を掛けた。


「あそこで休もう! 居させてくれるみたいだ!」


 ユアたちは探すのを中断し、その家の中へ入って行った。

 住民の老婆は、快く迎え入れてくれた。



 ユア、ディンフル、ティミレッジ、オプダットにココア、チョコが苦手なフィトラグスのみ生姜湯が振る舞われた。全員、体が暖まった。


「よそから来て大変だったわね。吹雪は当分止みそうにないから、しばらくここにいなさい」


「ありがとうございます。でも、ご迷惑ではないですか? 五人もいますし……」


「子供たちは巣立って、主人も勤め先に行っているから私一人よ。この吹雪の中、当分は帰って来れないだろうし大丈夫よ。」


 老婆は優しく笑った。

 猛吹雪の中を歩くのはもちろん、クレイスとリーヴルを探すのも大変なので、お言葉に甘えることにした。


「今回もごめんなさい……」


 暖まって来たところで、ユアが重い口を開いた。


「あの突風なら仕方ないよ。僕でも持ててなかったかもしれない……」


「これだけ雪が積もってるなら、近くに埋まったと思うぜ。遠くへ飛んでないだろうから大丈夫だ!」


 いつものようにティミレッジとオプダットが励ます。


「“二度あることは三度ある”と言うが、そのとおりだな。これでまた時間をロスするのか……」


 ディンフルもいつも通り文句を口にした。


「だったら吹雪の中、探して来いよ」


 フィトラグスが冷たく言った。

 ユアを庇うと言うよりは、不満げなディンフルが気に入らないようだ。

 また五人の間に緊張が走る。


「探し物なら、落ち着いてからの方がいいわ。今行くと、自殺行為よ」


 様子を見ていた老婆が止めに入った。


 吹雪が止むのを待つ間、話をしようとしたがそんな気分になれなかった。

 クレイスとリーヴルの力は運任せで行き先は定まっておらず、倒すべき敵がいるわけでもないので、作戦会議をしても意味が無かった。


 外では、吹雪が激しくうなり続けていた。

 その音に包まれながら、ユアたちは静かに眠りへ落ちていった。

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