犬と猫は仲が悪い
犬獣人と猫獣人は仲が悪い、と言われている。
理由はいろいろとある。
犬獣人は群れを好み、猫獣人は単独を好む。
犬獣人は臭いに敏感で、猫獣人は音に敏感。
犬獣人は規律を重んじ、猫獣人は自由を求める。
つまり、性質上合わないのである。
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王国遊撃隊第四班、班長。
犬獣人。
ロイ・ハウゼン。27歳。
黒い髪を短く刈り上げ、
てっぺんには大きめの黒い耳が立っている。
大柄で槍を使う。
性格は極めて真面目で几帳面。
規則を破ったことはなく、任務に忠実。
まさに群れのリーダーになるべく生まれてきたような男。
口癖は「予定通りにやれ」。
同班、西部警備隊より異動。斥候。
猫獣人。
シオン・ミル。25歳。
薄灰色の髪で襟足だけ少し長い。
少し濃い灰色の縞模様が入った耳。
細身で双剣を使う。
性格はマイペースで気まま。
姿が見えない時は大抵高いところにいる。
口癖は「なんとかなる」。
王都から少し外れたキンドゥノスの森との境界線。
第四班は、この森からくる魔物や盗賊をいち早く駆除するための戦闘部隊だ。
そこへ西部警備隊、隣国との国境を守るエリート部隊から猫獣人が一人異動してきた。
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初対面の日。
午前訓練の前に、執務室へ訪れるよう指示していた。
「八時に来いと伝えていたはずだが」
「うん」
「今、八時十五分だ。なぜ遅れた?」
「猫がいた」
全く反省している様子のない目の前のシオンに、ロイは眉間に皺を寄せた。
「……お前も猫だろ」
「猫と猫獣人は違うよ」
「そう言う問題ではない!」
「声でか」
この時点でロイからのシオンへと第一印象は最悪だ。
ひょろっとして背が丸まり、加えてこの態度。
なんとも頼りないやつで、日々小競り合いの起きている西部前線から外されたのは当たり前のように思う。
とは言え、ここも毎日ではないが戦闘は起きる。
油断一つで隊員に危険を与える環境なのだ。
ロイは早々にシオンの根性を鍛え直すことを決めた。
それから五日。
シオンは毎度訓練の時間に遅れてやってくる。
「遅刻した罰だ。外三周走ってこい」
「うん」
遅刻を反省することはない。
でも罰はちゃんと受け入れる。
どうしたらいいものかと、ロイは頭を抱えた。
「おい、お前」
外周から帰ってきたシオンに声をかける。
「何」
「今日はなんで遅れた」
「…...なんとなく?」
「…...あと三周走ってこい」
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シオンはシオンで、毎回かまってくるロイに対して、少しの面倒臭さを感じていた。
「おい、お前装備の点検最後にしたのいつだ」
「点検?」
「…...今すぐやれ!」
そしてロイの監視を受けながら点検をした翌日。
「今日の点検は」
「昨日したばっかりだよ」
「毎日やれ」
「昨日は訓練でしか使ってないから壊れてないよ」
「確認しないと分からない」
シオンがロイの槍に視線を向ける。
「壊れてないよ」
「俺のじゃないし、勝手に触るな!」
西部警備隊では、毎日戦闘が起きていた。
斥候として最前線に配置され、自分の身は自分で守る。それがシオンにとっては当たり前だった。
情報さえ正しく伝えられれば、とやかく言う奴はいなかった。
「おい、お前」
「また?」
「何だ」
「また、なんか言われるのかと思って」
「お前がちゃんとしてないからだ!」
そして勝手に腕を取られ、訓練で擦りむけた手のマメにロイが包帯を巻いていく。
「よく気づいたね」
「血の匂いがした」
「別にこれくらい大丈夫なのに」
「…お前の油断が隊の油断につながるんだ」
「ふぅん」
まるでシオンが油断してるみたいな言い方。
斥候として動く時、自分の情報が仲間の安全に直結することなんて知っている。
「いい加減、お前もちゃんとしろ」
ちゃんとしてないなんて、まだ戦闘になっていないのだから分からないだろうに。
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