LVアップ
「そうしたら、やってやりますか」
安峰さんがスマホを握りしめる。
ライトが点灯しているのは、安峰さんが〈アタック〉のボタンを押したからだろう。
プリーツスカートを揺らしながら、軽快なステップで勢いをつけた安峰さんが渾身のストレートを繰り出した。
安峰さんの拳の周囲がプラズマのように発光している。
「おらあ!」
バグがすっ飛んだ。
爆弾ほどじゃないけど、結構、威力があるじゃないか。
スマホに目をやれば、ステータスの表示上もバグの電池がみるみる減っていく。
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名前 フライ
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LV 1
属性 悪
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分類 バグ
性別 不明
年齢 不明
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電池 10%
状態 終了中
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状態は終了中。
電池が0%になると同時に、ステータス表示が黄色から赤に変わり、状態も終了に変わった。
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名前 フライ
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LV 0
属性 中立
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分類 バグ
性別 不明
年齢 不明
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電池 0%
状態 終了
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1匹目のバグを倒せたらしい。
LVが0に下がっていて、属性が中立に変わっている。
死者には善も悪もないということなのだろうか――。
「なんか通知が来たよ」
安峰さんが言った。
「LVが上がったみたい。あと新しいアプリを入手したって」
安峰さんのステータスを表示してみる。
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名前 安峰流伽
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LV 2
属性 善
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分類 ユーザー
性別 女
年齢 18
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電池 100%
状態 正常
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アプリ 2 ›
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安峰さんのLVが2に上がっていて、アプリの数も2に増えていた。
「何のアプリだ?」
「ちょっと待って――。なんか〈ブレーク〉っていうのが増えたみたい」
安峰さんのアプリ一覧を開いてみると、確かに〈ブレーク〉が追加されていた。
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スリープ 10 / 15
ブレーク 15 / 15
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「攻撃アプリだな。〈アタック〉よりもずっと強力だぞ」
「どうやって使うの?」
「懐中電灯系のアプリだから〈アタック〉とほとんど一緒だ。ただ、ストレートを繰り出す代わりに、スマホを垂直に振り下ろすんだ。それで斬撃のエフェクトが出る」
「ふうん。やってみていい?」
「やってみな。このタイプのバグなら、彩輝が爆弾で削らなくても1撃で倒せると思うぞ。倒せなくても追加効果で停止状態になるはずだ」
「オッケー」
安峰さんが眠っている2匹目のバグの前に立つ。
そして、スマホを思いきり垂直に振る。
「どーよ!」
すると、斬撃のエフェクトが出てバグを一刀両断にしてしまった。
「おお。こんな感じか」
〈スタット〉で確認するまでもなく、それでバグが終了したのは明らかだった。
初見だったから、念のため確認はしたけど――。
「あれ? なんか、またLVが上がったみたい」
安峰さんのステータスを表示してみると、確かにまたLVが上がっている。
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名前 安峰流伽
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LV 3
属性 善
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分類 ユーザー
性別 女
年齢 18
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電池 100%
状態 正常
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アプリ 2 ›
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「だよ。倒したバグのLVと同じ分だけLVが上がる仕様だからな」
「じゃあ、もう1倒せばLV4になるわけ? また新しいアプリがインストールできるじゃん」
「そうだけど、最後の1匹は彩輝に譲ってやれ。彩輝はまだLV1のままなんだぞ」
「あ、倒した人しかLVが上がらないんだ?」
「そういう仕様だ。それまでに誰がどれだけダメージを与えていたかは関係ない。とどめを刺したユーザーの全取りになる」
2024/12/15:クォータの誤り修正
2025/01/26:誤記の修正