森その2
「来たよー」
「では行きましょうか」
冒険者ギルドで約束通り落ちあった二人は、屋台エリアに行って買い食いをしたのちに森へと向かう。どうやら森の敵は熊とスライムの強化版しか居ないようだ。そのスライム強化版も、二人の前ではなす術なく倒されていった。
道中は特に問題は起きずに、ボス前の建物が見える。中に入ると変わらず昨日見たメッセージが確認出来た。
「作戦会議をしましょうか。私は元から使っている小火の祈りと小治癒の祈り、そして新しく敵の足を一体だけ遅く出来る鈍化の祈りと言う魔法が使えるようになりましたわ」
「僕はいつも通りヘッドショットを狙うって感じかな。鈍化の祈りが発動したら狙いも付け易くなるはずだし」
「私のことを頼みましたわよ?」
「分かってる、サヤもビビって魔法中断しないでね」
「分かってますわ。では細いことは……」
「「その場で決める(ですわ)」」
一体目のボスと言っても、本来二人で戦うものではない。しかし二人の目はそんな事は気にしていない様子だ。それほどお互いを信頼してるのだろう。
YESボタンを押すと、建物の外らしき場所に転移される。少し開けているが大きめの岩が何個かあった。そして奥からやって来るのは……。
「ガァゥゥゥゥ!」
「来るよ! 《チャージショット》」
「《鈍足の祈り》」
ニャイアルの溜め時間は三秒ほど、対してサヤの待機時間は十秒かかるのだ。巨大な熊は大きい見た目に反して速く動く。つまりニャイアルが外せば二人とも大ダメージを喰らってしまう。
(デカい胴体にはデカい頭!)
「ガッ?!」
しかしニャイアルは見事頭を撃ち抜くが、熊は少しよろめいただけでピンピンしている。しかしそれだけ時間を稼げれば充分なのだ。
熊の動きはそこそこ遅くなる、があくまで遅くなっているのは足の速さなので、油断しているとかぎ爪に当たってしまう。二人は左右に散り、ヘイトはニャイアルが買った。
「よーし、もう一発」
今度は欲張らずに胴体を狙い、ヒットするがよろめかずに熊はそのまま向かって来る。サヤは小火の祈りの溜め時間に入っていた。
振り下ろされるかぎ爪をすんでの所で躱しつつ、次のポイントを探す。敏捷値を上げているため素早く身を隠す事が出来るのだ。
「前ばかり気を取られていてはダメですよ?」
追いかけようとした熊は、火に包まれた。熊は後ろを振り向き、その瞬間にニャイアルによって頭を撃たれる。順調に行ってると思った彼女達だったが、熊が次のとある行動に移った途端二人はそれは間違いだと知った。
「木を一本丸々引き抜くとかあり?!」
「これは不味いですわ?!」
熊は抜いた木で薙ぎ払う。ニャイアルは自慢の動体視力と素早い動きで、木の上をジャンプで通過したがサヤはそうも行かなかった。
「うっ……」
避けようとはしたが、避けきれずにHPを七割持っていかれ吹き飛ばされる。しかも薙ぎ払い攻撃は一度だけで無く何度も繰り返されたのだ。不幸中の幸いとして吹き飛ばされたサヤには当たらないが、ニャイアルに全てのヘイトが向いている。
「手の甲を狙って撃つしかありませんわ!」
「マジで言ってる?! うわっ……やるしかないか」
またしても間一髪で避けながら、手を狙う事を決心する。確かに手の甲をよく見てみると体毛が薄く見える。しかし撃つタイミングはとても難しいのだ。
(僕が木をジャンプで避けた瞬間! てかチャンスがそこしか見当たらない)
基本的に小さい上に狙いづらいが、熊は薙ぎ払い時は必ず手の甲を上にする。スーパープレイもいい所だが、ニャイアルはそれを成功させるしかない。スナイパーライフルを構え、次で決めることにしたのだ。
(空中でこんなの撃ったら反動で吹き飛ぶからチャンスは一回かなぁ)
そう思いながら、次の振り回し攻撃が来る。ニャイアルはジャンプし、そして……。
「今!」
「ガォッ?!」
弾丸は手の甲のど真ん中を撃ち抜き、木を落とす。回復が終わったサヤもそれに続き範囲攻撃を発動させる。
「信じてましたわ」
「ほんっっとうに僕に対してはそう言うとこ容赦ないよね」
「ふふ、今更ですわ」
「まぁそだね、後はさっさと倒すだけだよ、《チャージショット》」
「《鈍足の祈り》」
立ち位置は最初に戻ったが熊のHPは残り僅かと言う状況だ。それをヘッドショットで削られ、最後の足掻きをサヤに止められ倒れていった。
「あー疲れた……」
「流石に迫力がありましたわね……格好良かったですわよ?」
「照れるから辞めて」
こうして二人は無事に第二の街に行けるようになったのだった。
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