誰だって、時の流れには抗えないっていう-9
文句ばかりで代案がでない。自分たちに不利益だからって否定ばかりのていたらく、口だけ達者、現状を変えたいなら文句や批判だけじゃなく、現実的なアイディアを出して欲しいもんですなぁ? んん~? ぎゃーぎゃー言うだけで僕ちんの考えが変わるとでも?
「まあでもせっかく井上が加わってくれたのじゃ、井上の魂の宝具で何か良い案が浮かぶかもしれんし、もう少し考えてみてもよいのではないか?」
「良い案なんて出ませぇぇ~ん! パンツレスリング以上の案? 出せるものなら出してどうぞぉ!? おまえのちっちゃいちっちゃい脳みそで考えられるならなぁ!」
「なんじゃこいつ」
俺も一応一通り、井上の魂の宝具で出来そうなことを考えてはみたが……マジでない、確かに井上の魂の宝具で出来ることは多そうだが、今回必要なのは兵士の目をなんとかするためのインパクトだ。
どれだけ凄い絵を描こうが、どれだけ似顔絵を描きますよとか言って兵士に呼びかけようが、職務を怠慢してまで兵士が注意を逸らしてくれるわけがないのだ。
兵士の目を逸らすにはつまり、兵士が動かざるをえないような騒動を起こすしかないのだ。
つまりパンツレスリング…………いや待てよ。
「いや……やっぱりあるかも」
「お前は情緒不安定なのか?」
ミナが犬みたいな耳を項垂れさせて冷たい視線を向けてくるが、思いついてしまったのだから仕方がない。
「なあ、この世界にローションってあるのか?」
「何々? ローションって?」
聞いたことのない名称なのか、レイチェルが小首を可愛く傾げる。
「ないのか……いや、名称が違うだけか? なんかヌルヌルで人肌に触れても害のない液体のことなんだけど」
「ああ、ショウジンの滴のことか」
心当たりがあるのか、サトウチが閃いたような顔を見せた。対してミナやセナ、レイチェルには心当たりがないのか呆けた顔をしている。
この時点で俺は察しがついた。つまり俺の世界でも異世界でも、使用用途はそんなに変わらないということなのだろう。
「え? なんでサトウチさんだけ知ってるんスカ?」
それなのに空気を読まずに井上が聞くもんだから、サトウチもそりゃ困った顔になるよねっていう。
「その……あの、井上くん? あれだよ……あれ、でゅふ……あれあれ、でゅふでゅっふぉ!」
「いや、わからんわ」
俺がそれとなしに伝えると、セナが心底不可解そうにそう言ってきた。
そりゃセナのようなクソガキちゃんにはわからないだろう。
つまりは大人だけがいけるようなお店に置いてあるものだからだ。
とかいう俺も未成年なので行ったことはないが、知識だけはある。
なんでって言われると……そりゃもうでゅっふぉ!
「ああ……そういうことッスかぁ! 先輩マジさすがッスよでゅっふぉ!」
しかし井上には充分伝わったようで、井上は照れながらでゅふぉでゅふぉ言い始める。
「……セイジのスケベ」
どうやらレイチェルもそういうお店の知識だけはあったようで、気付いてしまったのか赤面しながら俺に嫌悪の視線を向けてくる。
いや、俺がスケベ呼ばわりされる意味が分からないんだけど、サトウチに言えよ。
「それで、ローションで何するつもりなんだよ?」
「いや、井上とローションって言ったらもうあれしかないだろ?」
「ああ…………え? あれやるのか? いやでもあれか……ありだな」
ヒロシも合点がいったのか、納得顔を見せる。
「いや、ちょっと待ってください。でゅっふぉとか言ってる場合じゃなかった……全然ありじゃないですからね? 僕やらないですからね?」
対する井上も、俺が何をしようと提案しているのかに気付いたのだろう、焦り始めた。
「世界が滅びれば俺たちも帰れないし、一緒に死ぬことになるんだぞ? お前の勇気がこの世界を救うんだ。やるしかないだろう?」
「それだったらパンツレスリングの方がいいんですけど」
「いや、パンツレスリングとかないわ。パンツレスリングで世界を救うって頭がおかしすぎるだろ、ちょっと考えればわかるよね?」
「言い出したの、先輩なんですけど」
とは言いつつ、これからやろうとしていることも充分頭はおかしいのだが、やりようによってはパンツレスリングよりも兵士をかなり呼び集められるのは間違いないだろう。
「でもあれ、携帯とかないと無理だろ?」
「それなら僕、持ってますよ。電源切ってたとはいえ、恐らく充電がもうやばいですけど」
「自分から墓穴を掘ってくれてありがとう」
やりたくないとか言いつつ、自分から必要な物を出してくれる井上くん。ナイスヒロシ。
「……いったい何をするつもりなんだ? 俺はパンツレスリングとやらに巻き込まれないのならなんでもいいが」
俺たちだけで勝手に話が進むのか面白くないのか、サトウチが腕を組みながら困った顔で俺に問いかける。
「世界最高峰のお祭りだよ。焔祭りに負けないくらいのお祭りさ」
「お祭り……?」
何をしようとしているのかさっぱりわからないのか、俺たち異世界から来た三人以外の四人は理解に困った顔を見せる。
安心してほしい、そのお祭りは俺たちの世界でもほとんどの人が理解できないから。
そう俺たちが始めようとしているお祭りは、お祭りと言う名のただのワンマンショー。
井上祭りだからだ。




