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誰だって、時の流れには抗えないっていう-6

 ここで今一度、話を整理したいと思う。


 焔祭りは一週間後、元々焔祭りとは聖なる泉に宿る精霊を祀るためのものらしい。人々が捧げた祈りが魔力となって泉の精霊に宿り、魔の力から人々を守るという国をあげて行う伝統行事らしい。


 なので、焔祭りの最中は聖なる泉は神秘的な光を放っているらしいのだが、実際のところ、それは人々の魔力の結晶で、恐らくそれを魔王軍に利用され、泉の精霊を魔へと染めあげることになるのだろうと、サトウチとセナは憶測している。


 なので、実際のところ焔祭りを中止させられれば、世界を滅ばさずにすませられるにはすませられる。

だが、かつて各国が戦争中でも行われていたという伝統行事を俺たちだけで止めるのは無理があり、それは現実的ではない。なので結局お姫様をお城から脱出させる以外に道はないのだ。


「多分だけど……お姫様はもう気付いてんだよな? ヒロシのこの予言書どおりだと」


「そういうことになるな。でも魔に通ずる者とかのせいで部屋から出られないとか書いてたけど……城内って今、どうなってんだ?」


 レイチェルに視線を向けると、レイチェルは困った表情でセナと顔を合わせた。


「なんか……予告状が届いたとかで、寝室を出られないみたいだったよ」


「予告状?」


「焔祭りまでの間にお姫様を攫うとかなんとかで、警戒した国王様がお姫様を守るために部屋から出ないようにしているみたいで……誰が魔王軍に通じているかわからないの」


 なるほど賢い。単純だが、変に目立つこともなく、短い期間の間であれば閉じ込めておける。姫様という立場を利用した良い身動きの封じ方だと思う。


「でもよ、姫様も馬鹿じゃないだろ? 焔祭りの間に何が起きるのかとかちゃんと訴えているんじゃないのか?」


 そこで、珍しくヒロシが中々良い質問をレイチェルに投げる。だがそれも既に調査済みだったのか、レイチェルは残念そうに首を左右に振った。


「訴えてるみたいだけど……聖なる泉の警備を強化するだけで終わってるみたい。そもそも、お姫様に特別な力があるって……国王様も含めて皆知らないみたい。お姫様もずっと隠してたんだと思う。だから、お姫様がどうこうするより、お城の精鋭隊がしっかり警備していた方がずっと良いって判断されてるみたい」


「なるほどね、つまり今回が初めてお姫様が持ってる特別な力が発揮されるタイミングってわけなのね。家族にぐらい自分に宿ってる特別な力を伝えておけばいいのに」


「その特別な力を証明する場が今までなかったってことだろ? この世界、ただでさえ魔法とかややこしい力もあるしな……ほら、セイジが今日戦ったミルキーさんとかも」


「その話は二度とするな、いいな?」


 戦地に赴く軍人のような顔つきでヒロシを黙らせ、俺は再びどうしたものかと机におでこをつけて考え込む。


「お姫様が事情を理解しているなら、とりあえずお姫様の下にまで辿り着ければ説明を省いて行動は共にしてくれるんだろうな…………ってなるとだ。いよいよ現実的なプランがお姫様の下になんとしてでも辿り着いて、脱出させる以外になくなってきた」


「ならそうすればいいのではないのか?」


「ミナたんはアホだなー? アホ丸出し、あんなくっそ広いお城の、厳重な警備が敷かれている内部に潜入して脱出させるとか普通に考えたら無理でしょ?」


 ミナにもわかりやすく、お前はアホだと馬鹿にするように優しく頭を撫でながら、俺は現実を見るように伝える。だがミナは、遠回しに馬鹿にする俺を真っすぐに見つめ――、


「でも、そうするしかないのなら、危険を覚悟でそうするしかないのではないか?」


 正論を叩きつけてきた。そう、安全を探して現実を見ていないのは俺だった件。


「むしろ、予告状が出ておるならその立場を利用してやればいいではないか」


「利用って?」


「仮に予告状を出したのが自分であると偽って、姫を脱出させようと侵入したとすれば、捕まっても捕まらなくても結果オーライではないか」


「なして?」


「予告状が出ているから姫は部屋から出られないのじゃろ? なら、予告状を出した犯人が捕まったとなれば出られるのではないか?」


 ミナのその説明に、レイチェルとヒロシは「それだ!」と立ち上がって、興奮した様子でミナの頭をわしゃわしゃと撫でくり回す。


 その光景を、俺とサトウチとセナは冷めた顔をしながら眺めた。


「やるじゃねえかミナ! お前だけは賢いと思ってたが……こんな良い案を出せるとはな! あとはセイジを生贄に捧げてしまえば……こりゃもうなんとかなったと言っても過言じゃねえぜ」


「はいアホー! アホ丸出しぃ! そんなの捕まったところで、お姫様の周りにいる魔に通じる者とかが、『まだ仲間がいるかもしれない』とか、『本当にこいつが予告状を出したやつか?』とかなんとか言って、お姫様を外に出さないように言いくるめるに決まってんだろ? あと仮に生贄になるとしてもヒロシだから」


 絶対に言うだろうと思っていた言葉を綺麗に吐いてきたので、的確に、小ばかにするように俺はヒロシとレイチェルに指を突き付ける。


 そう、敵が内部にいるのであれば、そんな事態は普通にありえてしまうのだ。なんなら閉じ込めておく理由なんていくらでもでっち上げられるだろう。


 じゃあどうすればいいかって? わかりません。


「そうか……良い案だと思ったのじゃがな。祭りの時期に潜入すれば、兵士の警備も手薄で混乱するじゃろうし……見事脱出させてもいいし、捕まってもいいで、いけると思ったんじゃがな?」


 少し煽りすぎたせいか、ミナは目に見えてしょんぼりとした顔をみせる。同じく賛同してしまったレイチェルとヒロシも、しょんぼりとしていた。その顔面白い。


「まあだが、仕掛けるにしても、祭りの時期に仕掛けるという案は悪くないと思うがな」


 そこで、幼女であるミナに好かれたいがためか、サトウチが咳払いしてミナを励ますように頭を撫で始めた。なんて下心見え見えな穢れた手でミナを触るんだこいつ。せめて顔の緩みくらい抑えて撫でていただきたい。


「騒がしくすりゃいいってもんじゃないけどな、焔祭りだからと言って城内の警備が手薄になるわけじゃないんだろう?」


「だが、何かあった時の応援にあたれる人数が減るのは事実だ。城内で問題が起きても、本来応援に駆け付けられる兵士も、城下町で焔祭りのための警備にあたるはずだからな」


 それを言われて俺は一考する。


 焔祭りであれば警備が手薄なのは確かなのだろう。それでも、仮に問題が起きたとして、そもそもの警備の数が多い城内ではすぐに対処されてしまう。


 しかし――通常よりも情報の伝達を遅らせることはできるのかもしれない。


「混乱……混乱か、魔に通じる者がどれくらいいるのかはわからないが……もしかしたらやっぱりミナの案でいけるかもしれないぞ。仮に捕まったとしても、捕まらなかったとしても……お姫様の下にまで辿り着くことさえできれば」


「……説明してくれ」


 いつもとは違う俺の真面目な表情から察してか、ヒロシも真剣な顔で俺に視線を合わせた。

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