誰だって、時の流れには抗えないっていう-5
今までこの世界に来てから色んな変な奴に会って来たけど、今までのは序章と言わんばかりのぶっちぎりで変な奴に出会ってしまった。どうしよう、こんなヤバい人初めて見た。
お前のどこをどう見たら魔法少女なの? 魔法熟女の間違いじゃなくて?
「はぁ……まあ、大変だったんですね」
目の前の人物に対してそれくらいしか返す言葉がなく、俺は溜め息交じりに仕方なく返答する。
「やめてよ! あなたに何がわかるの⁉ それがどれだけ苦しいことなのかって……ちょっとでも理解してあげようと思わなかったの?」
どうすればいいんだよ。今同情してあげたんだろうが。
そりゃ昔は魔法少女だったのかもしれないけど、時間が経てばババアになるっつの。必死に肌の若さを保とうとして鍛えたが後が見えるけども。
「決めた……私。あなたを倒す」
わざわざ宣言しなくても、戦うことになるんだが?
「しかしどうしよう。既にこのババアに勝てる気がしない」
「……ババア?」
チラッと俺を背後で応援してくれているレイチェルやセナに視線を向ける。すると二人は既に俺の勝利を諦めているのか、目を逸らしてやるせない顔をしていた。
その瞬間、俺はガッと魔法熟女に肩を掴まれる。
「神様でも何でもいい……今日まで魔法少女として戦ってきた私を、希望を信じた私を、私は泣かせたくない。最後まで魔法少女でいてほしい。それを邪魔するあなたなんて、壊してみせる、変えてみせる」
変えてみせるって何? 俺、何をどう変えられちゃうの? え、ちょっと待って怖い怖い。よく考えれば壊してみせるって普通に言ってて怖い。
「一応言っておくけどな? 誰もがその……なんだ? 抗えないものだからさ、ほら、人生って……終わりがあるから価値があるわけじゃん? ね?」
「大丈夫、信じようよ。だって魔法少女は……夢と希望を叶えるんだから」
叶えられてないからそんな見た目になってしまわれたのでは?
「ミラクル!」
「おわっ⁉」
とか考えてたら、目の前に立っていた魔法熟女は突然殴りかかってきた。もう試合は始まっているから全然悪くはないけど……ああ駄目だ、ツッコミどころが多すぎる。とにかくそんなミラクルで倒されたくない。
「あなたを倒せば、きっと夢を叶えられる……」
「どうしてそんな結論に」
「あなたは若い。でもだからこそ、夢を叶えられる。あなたを超えることで、あなた以上の若さを手に入れられる。もしくは吸い取ればいい」
「吸い取るって……何?」
そんなことできるなら、今じゃなくて前もって吸い取ってから来いよ。本当はその見た目、気に入ってるんだろお前?
「もういいの。もう、いいんだよ。もう誰も恨まなくていいの。……あなたが私を受け止めてくれるから」
「何勝手に決めつけてんの?」
意味不明なことを言いながらも、ミルキーは手元を突然眩いばかりの光で覆わせる。
遂に魔法が出てしまったか……一般人の俺にはどうあがいても防ぎのないやつ。
「ていうかそれ本当に魔法? 実はそれ魔法じゃないよね?」
しかしよく見るとミルキーは、熟練の武闘家がアニメとかでよくやる気弾を撃ち放つときに見せる、大地にしっかりと足を踏ん張らせるポーズを取っていた。
更に両手を重ね合わせ、「はぁぁぁぁああああ!」とか叫びながら光の塊を練り上げていく。
どう考えてもそれ魔力じゃない件。
「ありがとう。あなたは私の最高の宿敵だったんだね」
そしてそんな言葉を耳に、視界は真っ白な光に包まれた。なんでこいつ、今更兵士になろうとしたの? と疑問を抱きながら、俺の意識は徐々に消え失せたのだった。
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意識を取り戻した時には、試験は終わった後だった。目を開けた時には空は夕暮れで、王城の近くにあったベンチの上で、レイチェルの膝を枕にしながら眠っていた。
いつもの俺ならスーパーラッキーとか思ってしまうところだが、最後に記憶にある光景があまりにも酷すぎて、レイチェルの太ももの柔らかさの余韻に浸ることなく、俺はあの後どうなったのか解説を求めた。
どうやら殺したら失格という言葉をちゃんと覚えていたらしく、ミルキーさんとやらは意識を奪うだけで済ませてくれたらしい。キッチリと若さを吸い取ろうともしたらしいが、試験官の兵士が止めてくれたようで助かったとのこと。
意識を失ってその後の試験を受けれなくなった俺は当然の如く失格で不合格。予定通り勝ち進んだレイチェル、サトウチ、セナは兵士として合格。最後まで参加したが、全てにおいて惨敗したヒロシは不合格という結果になったらしい。
同じ不合格なら、ずっと休んでた俺の方が結果的に得しているということで、ヒロシをいびりまくった後、俺たちは城下町の宿屋で現在、食事をとっている。
「で、どうするよ俺たち。役立たずにもほどがあるんだけど」
「どうするこうするも……城に近付けないんじゃあどうしようもないだろう? 覚えてるだろあの貴族様たちの俺たちの嫌悪っぷり? うろついてるだけでも警戒されちまう」
こっぴどくボコボコにされたのか、全身包帯だらけのヒロシがつぶやく。
わかってはいたことだが、兵士になれないとなると世界の滅亡を防ぐための鍵である王女様を、お城から救出しずらくなる。というのも、そもそもお城に入れなくなるからだ。
「もうあれだね、完全にレイチェルとセナとサトウチに任せるしかないね」
「できる限りのことはするけど……正直難しいと思うよ。お城の警備って、場所が分担されてて、同じ兵士でも用がないのにうろついていたらとにかく声をかけなきゃいけないみたいだし」
期待を込めてレイチェルとサトウチとセナに視線を向けるが、三人の表情は暗い。
どうやら合格者の三人は兵士としての講習を受けたらしいのだが、思っていたよりも城内の警備が複雑らしい。
まず、兵士だからと言って城内を自由に歩き回れるわけではないらしい。兵士が自由に歩き回れるのは兵士の宿舎(希望者が住み込める寮でレイチェルたちは希望していない)と、修練場、馬小屋、城外のみとのことだ。
城内を警備する兵士は分担されており、客人を案内するにしても担当している通路毎に兵士が交代で案内をするとのことだった。城内を制限なくある程度自由に歩き回れるのは、貴族としての階級を持っている者だけとのことだった。
兵士がすんなりと城内を動き回るには、侵入者が現れただとかそういう緊急事態でもない限りは無理だ。つまり、そもそもレイチェルたちにも王女様のもとにまで近づけないし、辿り着けても一緒に脱出するのはほぼ不可能といった状況。
「焔祭りっていつだっけ? それまでに何とかしないといけないんだよな?」
「焔祭りは……来週だね。時間もあんまり残されていないみたい」
「さすがに今回ばかりは一朝一夕じゃいかねえな。なんとかどうにかする方法を一週間以内に考えねえと……どうするかねえ」




