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きったない大人が成り上がる、この世界で-8

「確かに……人間と認めたくはないですが…………しかし、これ見た目どう見ても人間で――」


「はぁ⁉ うちのヒロシを馬鹿にしてんのか⁉ じゃあお前聞くけどなぁ⁉ こんな見た目をした、こんな意味不明な人間が世の中にいるのか⁉ おぉん⁉」


 俺の言葉に合わせるように、ヒロシは「ぶぎょぶびぇええええうぼ! うぼうぼうぼ!」と訳のわからない叫び声をあげる。


「いるとは思いたくないですけど……でも、今目の前に」


「じゃあ君はなんだ⁉ 人間って認めるということはこのヤバイ感じのモンスターと同じって認めるわけだな⁉ 同族ってことでいいんだな⁉」


「ど……同族」


「これが最後のチャンスだぜ? よーく見ろ? 確かに顔は人間っぽいけど、こいつはあくまでエキセントリックバードの希少種だ。エキセントリックバードの群れの中で捕まえた正真正銘のなぁ⁉ よーく考えろ? こんな人間いるか? 俺がわざわざ人間を使ってエントリーすると思うか? おぉん⁉」


「た、確かに、なんだか人間じゃない違う生物に見えてきました。モンスター寄りの」


 おめでとうヒロシ、いけるんじゃないかと思ってたけど、やっぱりお前はモンスターにそっくりだったらしい。今日から正真正銘のモンスターだ。恥じることなくモンスターを名乗ってくれ。


「では、一応ヒロシというモンスター名称でエントリーしておきますね。大会は明日開催となります。トーナメント形式で、対戦相手は厳選な抽選の元に決められますので、予めご了承ください。そ、それでは……明日をお待ちしております」


 俺に視線を合わせないまま、受付嬢は引きつった笑顔を浮かべる。エントリーされたことを確認した後、俺はご満悦になりながら、その場をあとにした。


「お主……と、とんでもないことをやらかしてくれたのう。ひ、酷すぎるじゃろ!」


 宿屋へと向かう途中、ミナが青ざめた表情でヒロシをチラチラと見ながら俺に抗議する。


「大丈夫、大丈夫、まだ慌てる時間じゃない。冗談じゃん! 冗談!」


「でもさすがにこれはやりすぎじゃろ……」


「やりすぎぃ⁉ はぁぁぁあん⁉ やりすぎとかくそくらえですから⁉ 本人がどんだけ嫌がってても自分が楽しいからってなんでも好き放題やってくる糞ヤンキーに散々辛酸を舐めさせられた俺に、やりすぎなんて言葉は俺の辞書にありませぇぇぇん! ヤンキーの教訓だからなぁ⁉ 冗談って言っとけばなんでも許されるからなぁ⁉」


 ヤンキーという生物はいつもそうだ。何をやっても冗談と言っておけば笑いに変わって許されると思っている。


 ヤンキーじゃなくても同じだ、上の立場に立とうとする質の悪い存在は力押しでなんでも解決しようとしてくるのだ。


 俺はもちろん、ヤンキーばっかの学校で冗談と称した力押し受け続けてきた。


 力押しに一番有効なのは力押しであることを知っている俺は、法律責めはもちろん、冗談をかましてくるやつよりも強い人間を助っ人に呼ぶことで対処してきたが、世の中にいる心優しい人たちの中にはそれができずに辛い日々を送っていることだろう。


 俺の親父もそうだ。嫌がらせしている本人は楽しいけど受けている方は辛い、所謂パワーハラスメントを受けて日々愚痴を漏らしていたものだ。


 親父いわく、嫌なことをされて「さすがにそれはちょっと……」と嫌そうにつぶやいた瞬間、「冗談だよなぁ⁉ なぁ⁉」とめちゃくちゃ威圧的に同意を求められてパワハラではないことを認めさせるというパワハラを日々受けてきたらしい。


 考えてみてほしい。受けた側の気持ちを。やっている本人は気持ちいいかもしれない。


 でも、やられている側には着実に負の感情が募っていくんだ。その負の感情を押し殺すことは難しい……人によっては病気になったり、恐怖で外に出られなくなったりしてしまう。


「つまり、受けた側も発散しないといけないわけよ。わかる?」


「それやられたらやり返すっていう負の連鎖に繋がるやつじゃろ」


「当たり前じゃボケぇぇぇぇえ! いつか全ての負の連鎖を断ち切るために自分がストレスを請け負うみたいな聖人がそう簡単にいてたまるか! 人間はなぁ⁉ ……そう簡単にストレスを我慢できないんだよ…………わかるな?」


「つ、つまり、セイジはそれだけの嫌がらせを受け続けてきたから、それの発散を今しようとしているってことじゃな?」


「は? 俺が他人に嫌がらせで遅れを取るわけないじゃん。毎回倍返し、もしくは一方的にマウントをとってボッコボコにしてきたよ」


「さっきまでの話はなんだったんじゃ⁉」


 そんな、無駄な会話を繰りひろげながら、俺とヒロシとミナは宿屋へと戻った。


 宿屋に戻ると、当然ながらヒロシの姿を見たレイチェルとセナとサトウチからの質問責めを受けた。


 経緯を話し、非人道的だとか、かわいそうだとか、やりすぎだとか、ボロカスに言われたが、うまくいけば明日の闘技大会で王宮に仕える兵士になれるかもしれないことを伝えることで、渋々納得してもらった。


 決まり文句はこれだ。「兵士になれるかどうかで世界の命運が変わるかもしれないのに……君たちの気持ちって、その程度なの? もっと必死にならなくて……いいの? 俺は必死だったから友を裏切るような真似までしたけど……ふーん、君たちにとってこの世界ってその程度なんだ。滅んじゃっても……いい~んだぁ⁉」だ。


 ワンパンKOだった。


 その台詞と共にアホのレイチェルはもちろん、脳筋のセナも言い返せずに押し黙ってしまい、サトウチは別にヒロシに興味がないのか何も言わず、嫌悪の視線を浴びるだけで終了した。


 あとは、明日。超人となったヒロシを使って大会で優勝すれば全てがうまくことが運ぶ。


 俺がやりすぎないようにミナがセコンドに着くとか言ってるが関係ない。俺は優勝を狙ってヒロシを使い倒すだけだ。


 余談だが、寝る時ヒロシを俺の部屋で預かることになったのだが、超人になったせいで寝る必要がないのかずっと俺の枕そばに立っていて、めちゃくちゃ怖かった。




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「さあ! いよいよ世界一のモンスター使いを決める闘技大会の開催です! 今回の参加者はなんと、過去最大人数の32人! 一体どんな激戦を繰り広げてくれるのか⁉ さあ皆さんが気になっているトーナメントの配列は……こちら!」


 翌日、俺たちは闘技大会が行われる闘技場へと足を運んでいた。闘技場は中学校の運動場くらいの広さはあるそこそこ大きい円形の場所で、観客席内は多くの人たちで賑わっていた。


 観客席は被害の及ばない二階にあり、実際に戦うことになるフィールドは一階と、よくある闘技場。現実世界と違う点あげるとすれば、二階の観客席が魔法によるバリアで守られているということだろう。


 また、トーナメントの表も魔法による具象映像として空中に表示されている。どの角度から見ても同じに見えるというのだから魔法って本当に便利。

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