勇者(メサイア)ナオヤ対不死者(ノスフェラトウ)ゾルダ再戦
復活したゾルダにナオヤは苦戦します。
勝利の鍵は?!
転章1 世界探訪記 メリカ国⑦
勇者でありながら世界に戦いを挑む八神直哉です。
謁見当日 夕刻間近
「お前は逃がさん!」
僕は無形を変形させて鞭のようにして不死者ゾルダを浮遊石から引きずり落とした。
無形に依る捕縛で浮遊石から落ちたゾルダは派手に落ちた割には平気な顔をして立ち上がって来る。
しかも、僕と戦うのが当たり前のような顔をしているのが何故か気に喰わない。
「もしかして僕に殺られたこと覚えていない?」
とかまを掛けてみる。
「お前は勇者だ!。
無論、忘れる訳が無かろうが!!
血の盟約を撥ね退けた勇者!
我が伽藍胴を破壊せし者!
我が血肉の力、不死を奪いし者!
我を雷の魔法で殺した者!
」
ひとつひとつの事実を列挙する事で怒りを確認するかのようなゾルダだった。
前のゾルダが死体を残さずに光の粒子となって消えたこと、あれは不自然だった。
召喚された魔獣は死体を残さず光の粒子となって消えていた。
つまり、人工的に造られた疑似生命のような物は魔力による生成体だったと言うことなのだろう。
この目の前のゾルダも同じ事だ。
あれ?
じゃあ、百薬斎セイはどこかに生きていると言うことか?派手な魔法に隠れて魔力体を残して逃げたのだろうか。
5Mほど離れて対峙する。
ゾルダがフード付きマントを脱ぎ捨てると暗い赤色のライトプレート姿の巨漢が現れた。
顔つきはゾルダだが、肉体は完全にハルバードを使っていた時とは異なっている。
まるで筋肉の化け物だ。
格闘家が魔道具のライトプレートを着ている。
「良し、来い!」
ドラミングのように胸を叩いて自分を鼓舞しながら宣言した。
身体強化Ⅴで“錆びたように見える短刀“無形を振るう。胸に向かって小さく鋭く切り込んだ。
ゾルダは簡単にバックステップで避けると左のハイキックを放って来た。
屈んでゾルダの右脚狙いで前転するように短刀を横に薙いだ。
ゾルダのハイキックの足が角度を変えて僕の背中に落ちてきた。
悪寒を感じた僕は右足狙いの短刀を投擲して左前に身体捻りながら転がった。
体勢を整えながらゾルダに向き合うようにしゃがみ込んだ。魔糸を飛ばして、ゾルダの右足に跳ね返された短刀を引き寄せた。
「「なんて言う反応だ!」」
期せずしてゾルダと僕は同じ言葉を叫んだ。
激しい動きにゾルダは汗ひとつかいていない。
身体強化Ⅴの反応速度は人の反応速度を倍以上に引き上げる。
見て、判断して、行動する時間が通常なら0.5秒掛かるところを0.25秒にするのである。
意識からすれば自分の動作が緩慢に見える。自分の身体が重い感覚に陥るのだ。
だから使用される体力は倍では足りない。
ゾルダの魔道具のライトプレートは身体強化Ⅴに相当する、いやそれ以上の強化をしているのかも知れなかった。
ふんっ!とゾルダが息を吐き、縮地に相当する速度で近づく、だから息に合わせて僕は天地自在で空中に飛び出した。
ゾルダの伸ばした手に空を掻かせ、捻りを加えて逆さのままゾルダの頭へ長剣と化した無形を振るった。
タイミングはゾルダの頭を割った筈なのに空を切る。
回転して着地の姿勢になった。
ゾルダが頭を下げていた。
身を低く這いつくばったゾルダが手足の力で後ろ向きに僕に向かって回転しながら跳ねた。
僕の背中にゾルダが迫る。
回転の勢いで僕に裏拳を当ててくる。
避けられない!
肩口辺りを強打され、くはっ!と僕の息が漏れ、吹き飛ばされた。
とっさのプロテクトアーマーが無ければ肩は抉れていたかも知れない。
プロテクトアーマーが合って尚、ダメージは僕の身体に届いていた。
浸透勁のような体技が使われたのかも知れない。
華麗に着地したゾルダが地を蹴って肉薄して来る。
横倒しになって身動きもままならない僕に容赦が無い。
だいぶ前からジャンプして両足で僕を踏みつけようとする。
すんでのところで僕の姿が霞んで消える。
僕のいた位置にゾルダが着地した。
それから、用心深く腰を低くしてゾルダが周りを見渡している。
僕の気配を探っているのだろう。
僕はミラージュで姿を消した後、転がるようにゾルダが開けた窪地に身を潜めていた。
全くもって不利だ。
前回スピードと近接で圧倒したが、それを上回るスピードと近接である格闘家と言うスタイルで対抗して来た。
このままでは押し切られて殺られる。
身体強化はこれ以上のものは無い。後は時を止めるしかない。でも、確実にしとめないと時を止めた負荷で逆に殺されるだろう。
どうする?と自問自答する。結構焦っている。
パワーで押し切りたくてもあれだけの早さにはパワーでは駄目だ。
くそっ!!
打つ手なしか?勇者なのに?!
自分で策を弄しておいてイレギュラーがあると詰むとは地力が無いなぁ~。
その時、天からの声が聞こえた。
「ナオヤ君、悩んでいないでアレを使いたまえ!」
うん、これは悪魔の囁きとも言うな。
メジーナ博士の声だった。
アレとはヴェルダの事だ。
仕方ない、使うか。
窪地から出て、ミラージュを解く。
「がはははは、覚悟を決めたか」ゾルダが嘲った笑い声を上げる。
ゾルダを無視して無言で左手をあげ「ヴェルダ!」と叫ぶ。
背後に飛行形態のヴェルダが現れたので跳びすさり、乗り込んでトランスさせる。
ロボット形態のヴェルダでゾルダを襲う。
かかと笑いながらゾルダも叫ぶ。
「来い!!伽藍胴Ⅱ!!」
ゾルダの濃い魔素に呼応するかのように背後に巨大な鎧が出現した。
鎧に吸い込まれて動き出す伽藍胴Ⅱに遠慮なく金剛をインベントリーから取り出し、叩きつける。
進化したらしい伽藍胴Ⅱはプロテクターを付けたように各部所が太く、濃い色に成っていた。
500㎏もある金剛の衝撃を受けてもゴンと鈍い音をたてるが凹んだり、傷ついたりしなかった。
「かっかっか!前とは違うのだよ、前とは!」得意そうなゾルダの声が響く。
爪を生やした長い腕が振り回される。身体強化EXで強化されているのに避けるので精一杯だ。
隙をみて振るう金剛も跳ね返されるか払い退けられてしまう。
頭部を狙った金剛を掴まれて金剛がひしゃげてしまった。奪われないように素早く収納する。
武器が無くなった。飛空艇クレイモアからの援護射撃を試みようにも的の大きさが小さく、狙いが付かないとメジーナ博士から連絡が来た。
魔法攻撃も余り効いていないようだ。むしろ、伽藍胴Ⅱの光弾がホーミングでうざいほど当たる。
ダメージから言ったらこちらが不利なようだ。メジーナ博士の助言でロボット戦にしてみたがやはり厳しいものがあった。
「じゃあそろそろ切り札いってみようか!」楽しそうなメジーナ博士の言葉に嫌な予感がする。
「ナオヤ君、ブーストアクセラレータを使いたまえ!」と指示が飛ぶ。
逃げ出すのかと思ったが
「状況を打開するなら指示に従いたまえ」と言うメジーナ博士の言葉を渋々了承する。
ヴェルダを一旦飛行形態に戻し上空へ上がって行く。
逃げたと思ったのかゾルダは光弾やホーミング弾をばらまき始めた。
上空で光弾を避けながら
「ブーストアクセラレータ、セット!!」と叫ぶ。
「今度はフルブラストでなく、トランスで変形だ。」
と言い出した。
恥ずかしいが「くっ! ・・トランス!」と叫ぶ。ヴェルダを飲み込んだブーストアクセラレータが変形を始めた。
変形が終わるとそこにはヴェルダに似たロボットがいた。
「ナオヤ君が名前を付けてあげなさい。それにより学習する。そして強くなる。」
メジーナ博士はノリノリだった。
着地する迄には名前が決まった。
「ヴェルタクス!!」
ヴォーーーン
返事をするかのように機械の擦れる音が鳴り響く。
ゾルダの驚愕が歓喜に変わる前に、ヴェルタクスが伽藍胴Ⅱを踏み潰した。
ヴェルタクスの高さは42M、総重量は63tにもなる。
素材は神鋼とアダマンタイトの高複合鋼であり、3重構造となっていて、魔素伝達には金メッキされたミスリル銀線が使用されている。
内部は小型化された魔素凝積機、魔素保管器、魔素反応炉を持っている。
構成はほぼ飛空艇クレイモアと同じである。
言わば個人用飛空艇なのだ。変形ギミックはメジーナ博士の趣味である。
「そうそう、システムコントロールはソリオちゃんだから優しく扱ってね~」
ソリオと言えばババロンの中央施設じゃあないか。
「次元コネクトでコントロールはばっちり、殆どオートコントロールだよ~ん。」
ヴェルタクスが足を上げると破壊された伽藍胴Ⅱからゾルダが大怪我状態で這い出て来た。
異様な速度で体が修復されていく。
慌てて外へ飛び出し、キックを浴びせる。
血を流しながらゾルダがゴロゴロ転がる。
たまらずゾルダが声を上げた。
「ガハァ~」
不死スキルを無効化したのだ。今のゾルダは不死者ではない。
「雷散華」
雷撃!雷撃!雷撃!雷撃!
更に雷撃!!
最初にゾルダを下したのと同じ技で止めをさす。そして、ゾルダは光の粒と消えた。
こうしてゾルダとの再戦は終わった。
だが、ゾルダは不死者で、覇王だ。
また、現れるんだろうな~
なんとか勝てたナオヤですが、次は勝てるのでしょうか?
不安いっぱいのナオヤとノリノリのメジーナ博士です。
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いつも読んでいただいてありがとうございます。
ナオヤは勇者ですが普通の中学生です。
これからも苦戦するでしょうが暖かく見守り下さい。
ブクマ・評価は近況報告からお願いします。
引き続き本作を宜しくお願い致します。
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