聖都の魔女
聖女セラの冒険です。
承章4 学術都市ディービアの陰謀⑩下
昏々と眠り続けるナオヤさんを看病している聖都バフォメの西の聖女セラです。
なにやら気になる敵を捕らえに行って、失敗したと言って現れたナオヤさんが急に倒れてしまった時は大慌てでした。
ナオヤさんの様子を見て必死にハイヒールを掛けるも腹にたまった魔力は抜けず、回復出来ないまま眠っていたけれども突然身体が光ったかと思ったら全快したのにはびっくりしました。
女神ガライヤ様の力を感じたので霊夢の中でガライヤ様に治療して頂いたのではないかと思います。
明け方に目を覚まして「おはよう」っていつも通りに言ってくれた時は涙が止まらなくなってしまいました。
ナオヤさんはずるいです。沢山心配掛けるのにこうやって優しくしてくれるからつい絆されてしまいます。
それから私の身に、いえ、この聖都バフォメに何があったのかをナオヤさんに求められるまま話したのでした。
朝からそわそわ気も気でないそぞろな気持ちで北の聖女サフィア様からの呼び出し待っていました。
昨日見た霊示のことを話し合う事になるのは判っていたからです。
護衛のシャダーンと側女のレオナを連れ、神殿の礼拝の間に行き、軽くいつもの礼拝を行うと隣の待合室に行きます。
既に北の聖女サフィア様、東の聖女シェルダ様は来られていました。
長めの椅子と短めの椅子が合い向かう形に置かれ、北側にサフィア様、東側にシェルダ様といつもの座り方です。聖女様の背後には護衛のシャダーンたちと側女達が控えています。
入り口で軽く頭を下げ、北に向け頭を下げ入室をします。西側からそのまま進み椅子と椅子の隙間から入り椅子の中央に浅く座り、また軽くお辞儀をします。
北の聖女サフィア様に「おはようございます」と挨拶し、東の聖女シェルダ様にも同じように挨拶をします。
すると北の聖女であるサフィア様が口を開きます。
「昨日霊夢を見て、霊示を受けたと思います。その内容について確認しましょう」
流石に霊示の内容が大問題だからか、心なしにサフィア様の声が震えています。
「まずは、セラあなたから話しなさい。」
私は霊示を詳しく話します。
白い霧の世界で三人は並んで霊示を受けました。
女神ガライヤ様はおっしゃいました。
『子等よ、我が愛しき聖女達よ。
我が声を聞きなさい。
今各地で異変が頻発し、人心が荒廃しつつある。
それは全ての種族を超えた覇王を求める、異世界の神に操られた悪しき者が暗躍しているせいなのです。
かの者は5年ほど前に突然この世界に現れ、世を乱していたが昨今の動きからようやく目的が分かって来たのです。
私はかの者を打ち倒せる勇者を見つけました。
勇者はかの者よりも魔力も弱く、力もありません。
ですが、聖女達が助力する事で大きな事をなしてゆくでしょう。
その勇者の名は ナオヤ と言います。
勇者ナオヤです。』
私は感動に震えました。
だって、ナオヤさんが世界を救う者と女神ガライヤ様に宣言されたのですもの。
でもその感動は直ぐに崩れてしまいました。
なぜなら東の聖女シェルダ様が叫んだのです。
「そんなことはある訳がないじゃないの!
あたしにはガライヤさまの声なんて少しも聞こえなかったわ!
耳障りな音ばかりでもう、訳が分かんない!
第一から、あんたの男が勇者だって?!
はっ! 都合のいい夢見てんじゃないわよ!
そんなの、神託じゃなくってただの夢じゃないの~!!」
侮蔑と中傷に満ちたシェルダ様の言葉と態度は聖女のものではありませんでした。シェルダ様が聖女として勤める前の飲み屋の女中の時代の態度でした。
これにはサフィア様も言い募りました。
「お止めなさい、シェルダ。セラの神託には疑わしい所もあるけど、私にも聞こえていたわ。
覇王が生まれると言う話と勇者を女神ガライヤ様が遣わせて下さったから協力しなさいと言う所は聞こえたわ。セラのいいひとの名前までわからなかったけれどね。
それと、シェルダが言うようにいつもと違って酷く聞こえにくかったわね。」
3者3様な神託など初めてでした。いつもならきちんと同じお言葉を承るのにおかしな事でした。
「はっ!いい子チャンぶらないでよ、サフィアさ~ま。
勝手に話を纏めて都合の言いようにしようったって、お見通しよ!前から気に食わなかったのよ、あんたの事。あたしがお仕えする事になった時も1番反対したのはあんただったって聞いてんだから!!」
この時ばかりとシェルダ様はサフィア様に噛みつきます。
その時でした、ドアをバンと叩いてシャダーンの一人がとびこんで来たのです。
「大変です!ドラゴンです!
ドラゴンの大群が四方の門を目指して攻めてきました。」
「「何ですって!!」「あたしの言うこと聞けって!!」」
サフィア様と私が驚いているのにシェルダ様は自分の事に夢中だったようです。
その時微かな“いまだ“と言う声が聞こえました。
いつの間にかナイフを手にしたシェルダ様がサフィア様に近づいていました。
「ホーリー!!」
その時の霊法が何故ホーリーだったのかは分かりません。でも、私の力を受けて一瞬シェルダ様の動きが止まりました。
シャダーンの2人がシェルダ様とサフィア様の間に割り込みシェルダ様の凶行を止めたのです。
ねじ上げられた手からナイフがカランと落ちました。
「「!」」
驚くサフィア様とシェルダ様です。凶行をした本人まで驚くとはおかしな事でした。
更に恐ろしい事がおきたのです。
「シェルダ様になにをする!!」
シェルダ様付きのシャダーン2人が細身の短剣で切りかかって来たのです。
私の護衛である2人のシャダーンが動き出したのは私の魔法が飛んで行った後でした。
「ヌルファイヤー!」
極小の炎の粒はナオヤさんに教えて頂いた相手を無力化する為の魔法でした。
ヌルファイヤーは先行していたシェルダ様付きのシャダーンの顔に当たり、産毛を焼き視界を潰しました。
その為私の護衛のシャダーンが取り押さえることが出来ました。
ナイフを落としたシェルダ様は目の焦点が合わず放心状態で、シェルダ様付きの2人のシャダーンは縛り上げられました。
ドラゴンの報告に来た衛士は驚いて固まっていました。落ち着きを取り戻したところでサフィア様が指示を下します。
「シャダーンを割り振って門を防衛、聖都内の冒険者ギルドとハンターギルドに緊急要請、聖都内の住民には家に閉じこもって出て来ないようにそれぞれの区長に通達して頂戴。」
騒ぎに集まって来た事務官や補佐官にテキパキと指示を終えたサフィア様はどっかりとそのまま椅子に座りました。
シェルダ様は別のシャダーンによって側女と一緒に自室に軟禁、取り押さえられた2人のシャダーンは牢屋で反省です。
じーっと見ていたサフィア様が座って待っていた私に言いました。
「色々と聞きたいことはあるけれどセラは回復の出来る者を集めて怪我人に当たって頂戴。私は此処で指示を出すから何かあったら直ぐに連絡を」
黙って頷いた私はすぐさま行動に移したのでした。
一通り聞いたナオヤさんさんは「セラが無事で良かった」と言ってくれました。
説明が終わってナオヤさんと共に神殿の拝殿の間へ行きます。
拝殿の間で軽く礼拝して、サフィア様が待っている部屋に入りました。
入るなりサフィア様が言いました。
「あなたがセラのいいひとのナオヤさんですね。」
なんだかサフィア様の言い方が酷いです。私は恥ずかしさで真っ赤になりました。
「まずは、ドラゴン退治に協力して頂いてありがとう。お陰で何とか4門を破られずに済みました。
倒したドラゴンはどうします?そう、レッドレッサードラゴンは解体したら冒険者ギルドに預けて置きます。」
じーっとナオヤさんを見詰めたサフィア様は話を続けます。
「あなたが捕まえられなかっ敵の事と何があったのかを教えて頂戴。」
ナオヤさんはドラゴニュート綺麗の事とあったことを教えてくれました。
レッドレッサードラゴンを軽々と倒すナオヤさんを一撃で倒す敵なんて誰が倒せると言うのでしょう。でも、ナオヤさんは次に会ったら倒すと明言されました。
恐らく勇者の力を使うのでしょう。
一通り説明を聞いたサフィア様は今度は私の方を向いて問いかけて来ました。
「セラ、何時から魔法が使えるようになったの?」
サフィア様の声は咎めるというより信じられない事を訊いているだけでした。
だから、学術都市ディービアでナオヤさんが魔獣ラミアと戦い、魔力切れで倒れた時の共感の話をしました。あの時ナオヤさんは霊法を身につけ、私は魔法を覚え、その使い方をナオヤさんから学んだのです。
「聖女じゃなくって魔女になってしまいましたのね。」と言うサフィア様の呟きが心にのし掛かりました。
更にサフィア様はナオヤさんが聖都バフォメに来た目的を尋ねられました。
霊示で求められている協力の確認でした。
ナオヤさんは助力者を必要としていると言い、私を見ました。ナオヤさんの求める者は西の聖女セラこと、私でした。
前に言ったとおり迎えに来てくれたのです。
セラが仲間になりました。
ピロリン♪




