聖都バフォメの襲撃者
ルンルン気分で向かったバフォメは?
承章4 学術都市ディービアの陰謀⑨下
ババロンの3つ目、宿泊施設のメメア復活を目指してるのにバフォメに行きたい転生者である八神直哉です。
バイクに跨がるように右ハンドルのスロットを開ける。
ベータは僕の意志に従って急速にスピードを上げた。
風が急に強まる。
ベータ全体を包む四角錐を作るように魔素を展開して、風の魔法を発動する。
息が出来るようになった。
学術都市ディービアからバフォメまで定期馬車では1日工程だが、ベータなら30分と掛からない。
今、会いに行くよ!セラ、待っててくれよ。
気分が高揚してスピードが上がった。
この風のシールドをテトラポッドと呼ぼう。
空気を切り裂くテトラポッドは風切り音をほとんど立てない。前方の視界もクリアだ。
神器腕時計から女神ガライヤと交信して、状況を報告する。その際、打ち合わせでお願いしておいたことはうまく行ったか確認する。
問題ないと言う返事に僕は安心した。
だが、女神ガライヤから急ぎなさいと言われた。
何故?と疑問に思う間もなく目前のバフォメから煙が立ち上がっているのに気付いた。
一体何が起きている?
女神ガライヤに訊こうと思ったが既に交信は切れていた。
とにかく急ぐしかない。
ベータの高度を上げて俯瞰位置から見て、只ならぬ事態だと知った。
バフォメの南門がドラゴン達に襲われていた。
レーダーと鑑定を併用する。
一番大きいのがレッドレッサードラゴン、周りにトカゲのような四つ足のグランドドラゴンが5匹、更に小さい小回りの効きそうなヘイトドラゴンがうじゃうじゃいる。
門壁から矢を放ったり、ウォーターボールが放たれているが、レッドレッサードラゴンやグランドドラゴンには効いていない。
僕はベータを停止させるとインベントリーに収納する。テトラポッドは下向きにして落下する。
デモンオーガの時と同じ手でドラゴンを倒す積もりだ。
後少しの高さでインベントリーから暗器飛来針をばらまく。無論、魔糸付きでである。
風魔法を強めて落下に制動を掛けて、テトラポッドを解除する。
落下速度が落ちたところで天走を使って、レッドレッサードラゴンの真上に位置を合わせた。
ドガガガ
と暗器飛来針がドラゴン達に突き刺さる。
落下速度で運動量の増した針は魔素を含んでいるだけあって、硬いドラゴンの鱗さえ貫通してしまった。
暗器飛来針の穴から魔素ボールをねじ込み、氷弾として爆発させる。
ボン ボボン ボン ボボン
と爆発が起き、ドラゴン達が倒れてゆく。
残念ながらレッドレッサードラゴンは傷つきながらもまだ健在のようだ。
ヴろろぅ~ん
怒りに満ちたレッドレッサードラゴンだが、僕が配置した顔の周りのライトボールの爆発で周りが見えなくなっている。
「破邪!!」
適当な僕の叫びに合わせた同時に仕込んでおいた頭部の氷弾で頭が爆ぜて倒れてしまう。
これで僕の魔法の力で倒したように見えるだろう。
唖然とした空気の中で周りを見回す。
何人かはこちらを見て呆けているが大多数はうお~と雄叫びを上げていた。
なんとか残りのドラゴン達を倒せそうな雰囲気になったようだ。
誰彼と無く手を振ると、天走で門壁の上に飛び上がり、セラに連絡を取る。セラは西門で救護に当たっているらしい。
セラによると東門で劣勢なようだ。
ならば反時計回りで加勢に行こう。
門壁の上を東門目指して走り出した。緩やかなカーブを描いているため縮地は使えないので瞬足で駆け抜けてゆく。
程なくして東門の門壁の上に乗り上げているレッドレッサードラゴンを見つけた。
インベントリーから雷熊仗を取り出し、少し離れたところでセットする。
雷魔法の電気で回転させて電磁力で打ち出す魔道具『魔導砲』だ。
今回のバレットは多弾頭型だ。6弾をひとまとめにしてある特殊弾頭なのだ。
レッドレッサードラゴンの頭を狙い魔素ボールを多数配置する。もちろん魔素はドラゴンの鱗はおろか皮膚に弾かれてしまうから、無理に押し込まない。
僕も少しは学んでいるのだよ。
魔素の半数をライトボールとして爆発させることでめくらましにして、魔導砲を発射する。
ぎゅるる~るぅ~
甲高い音を立てて多弾頭弾が炸裂する。
レッドレッサードラゴンの頭が向こう側に振られると同時に魔素ボールを傷口から押し込み、誰も見ていないのに
「破邪!!」
と格好をつけて氷弾を爆発させてみる。
ずず~ん
巨体が音を立てて向こう側に倒れ込んだ。そのままずるずると門壁の外側に落ちていった。ほかの竜達は放置だ。
それを確認して僕は門壁上を更に北門目指して走り出した。
瞬足で走っている内に頭の中に声が聞こえた。
*スキル“賢者“のスキルアップの条件が満たされました。HPを支払ってスキルアップしますか*
これは鑑定が言っていた上位互換のスキルだ。タイミング良いのか?
僕はyesを選んだ。
*スキルアップしました。常時起動をセットしますか?スキルコストは発生しません*
yesを選択。
*賢者のスキルを常時起動に設定、フルオートを発動します。
瞬足・縮地・天走をスキルアップして“天地自在“になりました。*
ガクンと腰砕けになったかと思うといきなり加速し始めた。どうやら天地自在に切り替わったらしい。
*魔法演算スロットが解放されました。
並列演算スキルが挿入されました。
未来予測スキルが挿入されました。
効果予測スキルが挿入されました。
多方向通信スキルが挿入されました。*
いきなり賢者スキルの効果が現れたらしい。
少ない魔素でも効果的に攻撃・迎撃・回避が出来そうだ。
幾分か軽くなった身体で僕はショートカットして北門を目指した。空中を縮地で転移のように移動してゆく。
あっという間に北門近くに着いた。
何故かレッドレッサードラゴンがいない。その代わりグランドドラゴンとヘイトドラゴンが倍数以上うじゃうじゃいる。
彼らなら魔素は弾かれないが少し数が多いか?
*問題ありません*
賢者がレーダーで補足した魔物全てに魔素ボールを押し込み、ライトボールのフェイクを爆発させてしまう。
門壁の上から「破邪!!」と見栄を切ってやった。
ほとんどの魔物が動かなくなり、ほぼ一瞬でおわってしまった。後は雑魚ばかりだから残っていた冒険者達に任せて大丈夫だろう。
「セラ、北門もクリアしたぞ。そっちはどうだ?」
少し得意になって交信すると焦ったセラの声が聞こえた。
「大変よ!赤いドラゴンが2匹で門を破ろうとしてるわ。」
なんてこった!守りが堅いから一点突破の策を取ってくるなんて。
絶対あいつがコントロールしてやがるな?
最初にレーダーでバフォメを走査した時にバフォメの中央の上空で小さな反応があったのに気づいていた。
鳥か何かと思っていたがやはり何者かいたらしい。
西門をクリアしたら捕まえてやる。
そんな事を考えながら西門目指して転移めいた天地自在で急ぐ。
瞬く間に到着するがかなり高くまで登り上がってしまった。
西門に向かってブレスを同時に浴びせている2匹のレッドレッサードラゴンがいた。
直ぐにでも門扉は焼け落ちそうだ。
どうしようか?迷っていると賢者が提案を出して来た。なかなか効果的な方法だったので即採用だ。
小さくて沢山の氷弾を生み出す。丸くなく先端が尖った紡錘形をしている。
生み出すとどんどん落ちていく。集中豪雨のような密度で2匹のドラゴン達を襲う。
ドラゴン達が氷の粒で埋まるほど落ちていく。
苦悶の鳴き声を挙げる間もなく、一斉に氷結させてしまう。
そこへ自由落下して行く。
僕を先行して落ちていくのは暗器飛来針の雨だ。
着弾と同時に2匹のドラゴン達を動けなくしていた氷が砕け散る。
浮遊するように降下して頭上からパフォーマンスだ。
「破邪!!」
伸ばした手から光弾が飛び出し、2匹のドラゴン達の頭を吹き飛ばす。
どうやら黒こげにはなっていたが門扉は破られていないようだ。
周りからやんややんやの歓声が上がる。
さて、最後はこの襲撃を計った奴を捕まえてくるか。
さてさて、魔がでるか邪がでるか?




