ドロテア上級医術師と魔法
ドロテア上級医術師との対談?
ジャロンもセラも一緒
承章4 学術都市ディービアの陰謀④上
僕は転生者にして、飛空挺クレイモアを所持するババロンの空中庭園の主人、あと2ヶ月で15歳になる八神直哉です。
学術都市ディービアの都市長ディビアス・ジャロンは敵ではなかった。
僕に興味を持ち、知りたがって、アプローチを誤って僕を怒らせただけだった。
都市長ジャロンの意向は確認できたので共闘する事を了承した。
それには彼がここディービアで何をしようと画策しているのかを暴く必要がある。前例から言えば禄な事では無いと思う。
手順や方法については僕に任せて貰い、都度連絡する事で決まった。
これは僕という冒険者に対する指名依頼でも無いので褒賞はギルドから出ないが、ジャロン個人の依頼と言うことでなにがしらかの対価は得られる筈だ。
ジャロン的には僕が漏らしてしまった飛空挺クレイモアを見たくて仕方ないらしい。昼間の活動が完了した後に特別に招待してやることにした。もちろん、セラも一緒だ。
で、当初どうり、ウプシロ医術施設、医術の第一人者のドロテア上級医術師との面談が実現した。
ドロテアは女性ながら手術で病気を直すことの出来る医術師なのだ。
外見は冷たい眼をしたボブショートで少し痩せた長身の女医だった。黒縁のフレームから覗く眼は少し暗い。疲れているのかも知れない。
入って来るなりこちらを見もせずにジャロンに文句を言い始めた。
「先月から申請している内視用の魔導具はまだですか!今のものは既に映像が歪んでいて誰が使っても何が映っているのか判別つきません。
映像記録にぼやけたところばかりでまともな診断に使えないんです。
もちろん、予算オーバーになるのは分かっていますが、当院の基幹設備なんですから早くお願いします!」
ドロテアを抑えるように両手で制し、慌てて言った。
「分かっておるとも、オミクロ科学技術機構のバージェに急がせておる。イオタラ魔術研究所のウォーカーは魔法陣魔法石を来週にも納められるといっておったぞ。だから、慌てるな。」
焦れったそうに睨むドロテアにジャロンは言う。
「それより今日、来て貰ったのはこちらのラサメア辺境伯爵の配下のナオヤ殿の質問に答えて貰うためだ。」あ~あ、とうとう辺境伯爵の配下になっちゃったよ。
「ん?」
ドロテアは僕やセラを見た。ジヤロンが紹介する。
「そちらの女性は聖都バフォメの南の聖女セラ様だ。」まだだけどね。
ドロテアは姿勢を正すと「ウプシロ医術施設、医術のドロテア上級医術師と言います。よろしくお願いします。」と言った。
よろしくと2人で頷く。
「で、何が聞きたいのです?」怪訝な顔をしている。
「ズバリ、医術とは何をする事なのでしょう。」
「・・・直球ですね。」
少し思案した後、ドロテアは話始めた。
「医術とは人の身体を治すために謎の魔素消失現象の時代に発達した技術です。人の構造、機能、性能を明らかにして病気や怪我と呼ばれる不全を治療する事を医術と呼んでいます。病気とは身体の一部が生来の機能、性能を発揮せず異常状態になることと定義されています。その原因は様々ですが殆ど分かっていません。
私達が使う霊法も霊素を消費して霊性に応じた力を振るう事があると分かっているだけで、何故そのような事が可能なのか判明していません。
かつて、魔導を研究したババロンの賢者でもなければその答えを説明出来ないでしょう。
500年という年月で研鑽された知識を今の私達は理由も知らずに利用しているだけなのです。
ああ、すみません。愚痴のようになりました。
具体的には病気と思われる人より、症状を聞き出し、それに合わせた薬草を調合して与えます。また、症例が類似して患部摘徐する必要があれば霊的手術をします。
聖女セラ様たちのように霊性に優れていれば神秘治療でヒーリングやキュアーなどを行使出来るのですが。
科学技術と霊法の中途半端で衰滅の過程にあるのが医術と言うものです。」
おとなしく聞いていたが重要な言葉があったな。
霊法
霊素
霊的手術
神秘治療
「セラ様、確認しますが霊法ってなんだと思います?
」とセラに向かって問いかけた。様使いで呼ぶとくすぐったいな。他人がいるときは仕方ないよね。
右手の人差し指を頬に当ててちょっと考え込み
「女神ガライヤ様の恩寵ですね。ガライヤ様の光の霊力の一部を使わさせて頂いていると言ったところでしょうか。」その仕草が可愛い。
「霊法は人の光属性で行う魔法のようなものと言う理解で宜しいでしょうか。」
そうですねとセラは頷く。
「そして、属性とは火水土木風光闇の7つ。属性からマーメイド族・エルフ族・ドワーフ族・人族・魔族が生まれ、火と風から龍神が生まれたと伝承にあります。
共通して魔法を使いますが、得意なのは属性の合った魔法ですね。でも、他の魔法が使えない訳では無いんです。魔族でもヒールは使える。
光属性のヒールを魔族が使う。つまり、霊法を使っているのと同じなのです。
魔族が霊法を使う。おかしいですか?」
セラに動揺が走る。ドロテアもジャロンも混乱している。
「魔族が使うヒールは別の魔法では?」苦し紛れにジャロンが言う。
「おかしいですねえ、どんな回復魔法ですか?」反論は僕が潰す。
「だから、前提がどこかおかしいんです。
伝承だから、どこかで誰かが意図的に治世的に都合が良いように変えたのでしょう。
種族の違いがあっても、魔法の適性があっても全ての生き物は魔法が使えると言うのが前提でしょう。
そして、ヒールなどの回復魔法が使えると言うことから霊法も同じであるといえるでしょう。
霊法が霊体と言う目に見えない身体をベースとしているなら女神ガライヤとの繋がりで霊法が使えるのでは無いかと言う仮定が成り立ちます。
魔法には7つの属性があるけど、霊法には属性がないと言う仮定も現象から推定出来ます。
更に詰めた仮定として“魔体“と言う見えない魔法発動のための身体があるのかも知れません。」
ここまで言い切って少し間を置く。
みんなからため息が漏れる。少しは理解して貰えたかな?
「突飛すぎて受け入れられません。お話は理解は出来るのですけれど。」代表するようにセラが僕に言う。
「生き物の身体はどの様なもので出来ているか知識はありますか?」と僕はドロテアに聞いた。
「古の知識ではセルと呼ばれる小さな生き物が集まって内蔵や皮膚が出来ていると理解しています。魔導具で実際に見ることもあります。でも、セルが集まって何故人間や生物に成るのかは伝承されて居ませんし、解明されていません。」
なるほど、遺伝子の事は残っていないんだな。
と言うことは進化論と言う考えも無いわけだ。
「こう仮定したらどうでしょう。
霊体もしくは魔体があるから生物の身体はセルが集まって内蔵や身体が作られる。霊体もしくは魔体に従って肉体が作られる。
子供は親の霊体や魔体を合成されて生まれてくる。」
3人が呆けて僕を見ている。難し過ぎたかな?
ジャロンが慌てるように言う。「そ、そんな大胆な考えは初めてですよ。」
セラが少し怒って言う。「そんな考えは女神ガライヤ様に不敬です。」
ドロテアが喜色満面で言う。「なるほど、推定は多いけど仮定と検証。科学的な上に合理的な内容だ。しかも、全ての説明が付く。」
「もちろん、仮定であってまだ未解明な部分があります。魔法もしくは霊法がどうやって発生するのかとか、現象化の構造とかはわかりません。
僕としては解明する積もりですけどね。」
「ドロテアとセラ様の話からここまで魔法と霊法と身体の関係を解明して見せるとは凄いものですな。」ジャロンが感心する。
「今の仮定の話を仲間と検証したいのですがよろしいですか?」とドロテアは浮き足立って目をキョロキョロさせる。
ジャロンが僕の方をみるので僕は言った。
「ありがとうございました、ドロテア上級医術師。概ね話が聞けました。もっと突っ込んで専門家の方に検証して頂けるなら願っても無いですよ。」
僕の許可が得られたと分かったドロテアは慌てるように部屋を出て行った。
「うーん、凄い話が聞けて納得ですよ。ナオヤ殿。」ジャロンの僕への評価は上がったようだ。
「さすがは飛空挺クレイモアに認められるだけのことはある。」
そこへ持って行くか普通。
「では、私は仕事に戻ります。セラ様は予定どうり慰問をお願いしたい。」とジャロンがセラに言う。
セラは頷くと
「話がしたいけど公務優先なのはごめんなさいね。」
と申し訳無さそうに言った。そうだ、そうだ。
「ちょっとだけ時間良いかな?」僕はポケットからババロンの指輪を取り出した。
「左手の中指出して」と言って僕はセラの左手の中指にババロンの指輪をはめる。少し大きかった指輪が自動で小さくなり、ぴったりになった。
手を持ったまま僕は
「これはババロンの指輪。ババロンのクレイモアと中央施設のソリオに繋がり、場所の検知が出来る。慰問が終わった頃、後で迎えに来るよ。」
僕は照れを隠すため少し足早にセラから離れた。
イプシロン魔法大学校の講師サロモン教授の研究室に向かう。
もうすぐ4時半を回る。話を聞くには丁度良いだろう。
次はセラ視点です。




